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推しの衣装を手がけてます!  作者: 葵 紀柚実
三章 秘密の恋人
54/65

52 極秘会合の議題は

TIME、二枚目のシングルと、F2のアルバム発売が同日だった週の金曜日。

二組が同じ音楽番組に出演するとあって、ゲスト発表されてから両アイドルのファンは盛り上がっている。


私もF2ファンの友達と、デビューをプロジュースした先輩の前で、TIMEがなんて言うか、光稀くんがどんな態度で対応するか楽しみだね。って話をしていた。

『F・F』の番組内では、宣伝も兼ねてTIMEがデビューするまでのレッスン風景やインタビューを公開していたけど、他局の音楽番組で共演するなんて、ぜひ、目に焼き付けねば。


が、リアタイはできなかった。

はいはい。残業ですよ。

シャワーあと、髪を乾かしてから、やっと落ち着いてBlu-rayを起動させる。

せっかくの生放送なのに、数時間遅れで見るのってなんか、損してる気分。

でも、今は仕事が一番忙しい時期。

秋から冬にかけては音楽特番があるし、年末のカウコンの話も出てきてる。

衣装は新規の作成ではないが、油断してるとミスがでる。

今年はTIMEの担当分もあるし。

CMを飛ばしたり、興味ないアーティストを早送りして時短だ。

おっと、飛ばしすぎた。CM開けの画面では丁度、TIMEとF2が歌の順番前での軽いトークを始めた。

「やっぱり、F2としては自分達の提供したデビュー曲より、売れてほしくないと思ってるんでしょう?」

そんな司会者の鋭い突っ込みにTIMEは一瞬声を詰まらせる。

オープニングでは、寒くなってきたら焼き芋が美味しいとか、わーきゃー喋っていた四人が。

異例の速さで二枚目のシングルを出すことに対して、アイドルが作ったデビュー曲が気に入らなかったからだろう。と、SNSでは根も葉もない言いがかりがつけられていたからだ。

その点F2は慣れたもの。

「いや、話題作りも実力のうちですから、気にしませんよ」

「せや。俺らプロの作詞作曲家やないし。数字とか気にしとったら萎縮してまうやんか。気楽にしとき」

「さすが、先輩としての余裕。では、TIMEのみなさんはスタンバイお願いします。F2はこのアルバムを引っ提げてのツアーが始まりますね。今回の見所などは?」

「そんなんは秘密や。来てくれたファンへの特別はここで話されへん」

「そうですね。アルバム聞き込んで、あとはサプライズを楽しむ余裕を持ってきてくれたら」

智史くんはぺろりと舌を出して茶目っ気に、光稀くんはアイドルスマイルでカメラ目線を決めた。


アルバムを聞き込んで、か。

やばい。全然聞けてないんですけど。

出勤のお供に頑張って聞いてるし、ラジオで今月から解禁になっている曲を少しづつ聞かれてくれてたから、曲は把握してるんだけど。

歌詞をちゃんと見ながらガッツリ集中して聞く時間がない。


ふぅ。ため息。

今日は光稀くんから電話はないな。

そりゃそうだよね、さっきまでテレビ局にいて、歌番組に出てたんだもの。

あんまり、光稀くんと話せてないな。

私が多忙ということは、光稀くんだって時間の余裕がない。

ゆずゆずちゃんの報道で焦ったり、不安になって、私から連絡を入れにくくなった。


あきらかにアクセス数を稼ぐための匂わせ記事ですら、精神的に不安定になったのだ。

安易に電話したらダメでしょ?って思うと連絡が取りにくい。

光稀くんには全然平気だよ。

って強がってみたけど。

でも、それ以上に思ったことは。

私も、見合いした事であのときは光稀くんを不安にさせてたんだな、って。気がついてしまったこと。

何やってんだろう私。

郁ちゃんとも着付け体験の日には変な感じになったし。

ほら、あれは?勢いっていうか?

ホントにするかは不確定だったし。

どっか連れ込まれそうなら逃げたし?

実際、未遂で結局ずっと居酒屋にいたからそーゆーとこに行ってもいないし?

はぁ。

もちろん、光稀くんには郁ちゃんと酔った勢いで変な会話をしたことは言えてない、これからも言うつもりはない。


私達、何してんだろうね?

こんなんで、本当に恋人同士とか言えるんだろうか。

やっぱり、自然消滅?

忙しいまま連絡も取らなくなって、気がついたら一年ぐらい経っちゃうんじゃないかな。


週明け。

いつもの通り、班の後輩たちより遅めに出社すると、確認するべき指示書をドンと積まれ、雪乃ちゃんからは本日のタスクがメールに飛ばされる。

自分でも衣装班のタスクツール開けられるんだけど、雪乃ちゃんがうちの班だけの見やすい一覧を提示してくれるから、それに頼ってしまう。

有り難い。

「早めに手を付けてたから、この指示は間に合いそうね。あと、COUNTRYの付属は?」

「上がってきてます。と、この納品伝票を…」

うん、大丈夫そう。

「私、午後は会議で付いてあげられないから雪乃ちゃんが古谷さんを見てあげて」

「はい。EGGのクリスマスは聖歌隊ですよね」

そう、去年はサンタだったな。一年経つの早い。

「少し、古谷さんに仕事任せてみて」

今年は何年か前の衣装を使い回せるので、足りない分だけ作ればいい。

後は、手直ししたり、付け足したり。

それなら一年目でも十分こなせる。

「そーそー。りこさん、午後の会議は社長室ですって。厳重過ぎません?」

「社長室?」

「並木チーフから先程連絡きてましたよ」

仕事のスマホにメールくれれば見たのに、わざわざ内線電話って。

後輩たちに社長室を使うことを周知させて近寄らないようにしたいのかな。

「ありがとう。社長室か…せっかくのトップとはなせる機会だし、そうだ。みんなから話を通しておきたいことがあったら遠慮なく言って」

ま、急にはないと思うけどね。


極秘の打ち合わせ。

F2のツアーで話題になるだろう演出は、TIMEに提供した楽曲『Tick-Tock Step』をF2アレンジで披露すること。

それも伴奏は智史くんのアコースティックギターのみ。

すごくない?見たい、早く見たい。

レーベルを超えての使用になるが、サヅへの許可は簡単に取れた。

そして、光稀くんがテレビで言っていたサプライズはこのことだけではない。

ツアー最終日のドーム公演にはゲストとしてTIMEの四人をステージに招き入れる。

F2と一緒に六人でのパフォーマンスだ。

たった一曲の為に、デビューしたてで休みなく忙しいTIMEをステージに上げるのはどうかと思うが、ぜひ、見たい光景でもある。


ゲスト出演をあとから知らされるTIMEのファンには申し訳ないけれど、どうしても見たければ、映像化されるだろうBlu-rayかDVDでも購入して映像を確認すればいい。

私達、F2ファンだってTIMEのデビューCDを買ってるんだからお互い様だ。

お互いのファンがそれぞれ購入する。

売上はウハウハだろうな。


て、まだツアーも始まってないんだけどね。


指定された時間までCOUNTRYのデザイン画と出来上がってきた衣装、付属の確認をして待つ。

そして、並木センパイと一緒に社長室へ行くと、隣の応接室にて話し合いがあるという。

集まったのは、社長、F2の二人、小泉さんと演出の久保田さん。並木センパイと私。TIMEのマネージャーもいるかと思っていたのに予想と違う顔ぶれに嫌な緊張感が走る。


どうやら、光稀くんからの提案があるようだ。

仕事の話?それとも?

デビュー曲って何年たってもテレビやコンサートで歌うし、グループの名前がテーマになってたりするので、適度にダサくて、光稀くんが作詞しそうで、ありそうな題名を考えるのに時間かかった。

次回光稀くんはなにを言い出すやら。

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