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推しの衣装を手がけてます!  作者: 葵 紀柚実
三章 秘密の恋人
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47 恋敵の糸口を

俺が食いたい。って言ったら、

「いいよ」

って。


なんだよそれ。

カマかけた俺もどうかと思うが、受け入れるりんりんちゃんもおかしいだろ。

彼氏いるんじゃないの?

意味理解してる?

この後ラブホ連れ込んでもいいわけ?

そりゃ、させてもらえるならしたいし、イかせたい。

恋愛感情に気がついてから、ずっとものにしたいと思ってた。

けど、兄って立場もオイシイから、ちょっかい出しつつも見守る立場がいいのかもって考えてたけど。

「りんりんちゃん、マジで?寸止めくらうとか嫌なんだけど」

「していいって言ってるじゃん。それでもう、相手のこと探らないなら」

「は?それって俺に乗り換えるんじゃなくて、口止め料?」

ありえん。え、りんりんちゃんそんな子だったっけ。

「りんりんちゃんそれ浮気だよ」

それじゃ、いくらりんりんちゃんを抱いても気持ちは手に入れられないってことか。

どんだけ彼氏が好きなんだよ。

こんなに近い距離に俺がいるのに。


うわ、やばい。

していいなら、体だけの関係でもいいか、って思ってる俺がいる。

脱がせたら、結構胸ありそう。デカイわけじゃないけど。そこそこ。

背が高めだからスラッとした印象だけど、揉みごたえのあるぐらいには…いやいや。

待て。

ふー。一旦落ち着け。

ここは、軽く誘い受けるな。って叱って、なんで秘密なのか相談に乗ってあげて、兄として信頼される方向のが、いいんじゃないか?

う…。どうする?


迷ってる時点で俺、抱く資格ないかも。

やるだけやって、二度と口聞いてもらえなくなるのと、兄ポジション確立するのと。

ちくしょう、本当は兄で恋人ってのを狙ってたのに。

うまくいかないな。


りんりんちゃんを追い詰めたはずが、悶々と悩んでいる間に酒やツマミが目の前に並ぶ。

俺、オーダーしてないぞ。

「なんか、すぐにはどっか連れ込まれそうにないから追加してみた」

って。

おいおい、俺のこと試したな?

確かにまだ食べたりないけど。

なら、俺のビールも頼んでくれよ。自分の食べたい物ばかりじゃなく。

と、りんりんちゃんのスマホが動いた。バイブだ。

いつもは鞄から出さないのに、真美さんの連絡先登録してたから、俺との間、テーブルにある。

電話?メッセージ?

チラリとみると、表記は『Kくん』。バイブ続いてるから電話か。

誰?彼?Kって?

バッっとスマホを掴んだりんりんちゃんは、そのままロックを開けることなく鞄に突っ込んだ。

「え、出なくていいの?彼なんじゃ」

「いいの!無視してたらこれ以上来ないから」

「でも、俺、彼いるって知ってんだし今出れないってメッセージぐらい返しても」

「誰もいないところでしか操作しない」

はぁ。

見合いしたり、抱かれてもいいとか、全部ソイツの存在を守るためか。

愛されてるなぁ、彼氏さん。

ま、結果、見合い話が進んで結婚とか?俺がものにして食っちゃったりってことになっても。

それでもりんりんちゃんは相手の名前を出さないんだろうな。


あー。なんか、ヤる気失せた。


「負けた。降参」

なら、兄としての立場にガッツリ、シフトチェンジさせてもらおう。

「もう、迫ったりしないから、お兄ちゃんに恋愛相談してごらん?」

「は?従兄弟だし。でも、良かった。郁ちゃんの雰囲気が少し良くなった」

あ、りんりんちゃんも。

そっか、どう足掻いても俺たちは従妹でしかないのか。

「りんりんちゃんさ、一度俺を『お兄ちゃん』って呼んでみない?」

「は?郁ちゃんってチャライって思ってたけど、なんか、キモイね」

うわ。

このバッサリ加減、いいな。

この店入ってから、変な雰囲気になったし、きわどい会話だったけど。

怒って帰らずに隣りにいてくれる。

これが彼女なら嫌われて別れたりしても、りんりんちゃんは親戚だから今後も正月や法事で会う。

だから、喧嘩はしてもずっと会える間柄だ。

そっか、従妹っていいポジションなんだな。

正直、まだ女として向き合いたい気持ちも残ってるけど。

って、俺、さっきっから意見があちこち飛びすぎ。落ち着け。

これ以上ちょっかい出したたら、りんりんちゃん親戚の集まりにも来なくなる。婆ちゃんの所で偶然会えたり、親からりんりんちゃん情報回ってきたりもなくなる。

「ま、あれだ。酒の席ってことで。俺が迫ったのも、りんりんちゃんが受けたのも。俺、流すから。仲直り、しよ?」

「伯母さんやうちのお母さんに私に彼がいるの言わない?」

「なに、そこ気にしてんの?言わないよ、りんりんちゃんに嫌われることしないし」

母親。そうだ、なんか今日聞きたいことが。

「そういや、着付けどうだった?楽しめた?」

「もちろん。体験にしては長時間でね、浴衣だけじゃなくて振り袖も着ちゃったの。帯って結ぶの体力いるんだなぁーって」

よし、いつも通りのりんりんちゃん復活だな。

「写真とかないの?」

「あるけどスマホはもう出しません。後で写真送るよ。初江伯母さんに回してあげて。自分じゃ選ばない赤っていうか朱色?に、金糸が刺繍してあってね、地の紋様と刺繍が…あ、ごめん話わかんないか」

「いや、楽しそうだから続けてもいいけど、青じゃないんだなって思った」

りんりんちゃんは俺の中じゃ青のイメージだから。

そう、青。


「彼氏さんはさぁ、光稀のこと、知ってるの?」

「?…どうゆうこと?」

「いや、もちろんテレビとかレギュラーあるし、超有名アイドルだから知られてはいると思うけど、その。りんりんちゃんがガチ恋なのを。彼氏できてもまだ、ファン続いてんだろ?」

「うん、ドン引きされた。けど、今はそれも受け入れられてる」

そっか、じゃぁ俺、完敗だ。

そんだけお互いに好きで秘密って、なんか、なんか。ん?

「りんりんちゃん、それ、結婚詐欺とかじゃないよな?」

「え?なんでそうなるの?違うし。もしそうでも構わないけどね。私は、好きだって言ってもらえただけで幸せなんだ。それ以上は、望めないの」

りんりんちゃん、いい顔してんな。

照れた横顔はまるで恋に恋する乙女のような。

さっきまでヤるとか抱くとか言ってたとは思えない。

…彼氏マジ殺す。りんりんちゃんにこんな可愛い表情させて、テレとかデレを、独り占めしてんのむかつくわ。

「人に言えるようになったら、即紹介しろ。殴るから」

「えぇー、なんで?絶対教えない。ねぇ、今日郁ちゃんの奢り?もうちょっと頼んでもいい?」

「いいよ。俺にもメニュー見せて」

すっかり警戒心解かれたな。

年明けから変だったのは、俺がモヤモヤしてたせいなんだけど。

こーゆーのも、失恋っていうのかな。

ネガティブは俺らしくないから、妹が出来た記念にでもしておくか。

正直、暫くはこの不安定な気持ちが続きそうだ。

嫌われた方が次へのシフトチェンジは楽なんだろうけど。

好きなまま、気持ちを押さえ込むのはつらい。


…そうだな、当分恋はしたくない。


早い時間から飲み始めたので、結果、帰宅も早かった。

無理やり直帰にしたから、明日の会議資料、今から目を通しておかないと。

そんなことをしていたら、りんりんちゃんから振り袖の写真が送られてきた。

へぇ、いいね。

この色合いも似合うな。

彼氏にも写真見せてるんだろうな。

『Kくん』か。


K?

か、カイト、カズマ?

き、キミト、キョウヘイ?

く…。

あーこんなんじゃ当たるわけないし。名字かも。名字?

あ、小泉さん。

とこかで聞いた覚えが。スタッフ?

それかりんりんちゃんから聞いたか。

いや、TIMEの会議で?

小泉さんか。

名刺入れの中、整頓しないと駄目だな、すぐ見つからない。と、あった。F2のマネージャーか。

今はTIMEに正式なマネージャーが付いて、小泉さんとは会っていない。

りんりんちゃんは小泉さんを『くん』で呼ぶだろうか?ないな。

くん。

年下か?

K・くん・年下。

あ。

光稀。

ふと、SSRの会議室でりんりんちゃんを『りこさん』と呼ぶ藤枝光稀の顔が浮かんだ。

まさか、ね。

必死で隠す理由も、F2のファンを受け入れられていることも、無理なく当てはまる相手だけど。

まさか?

ありえない。

いや、でも。


そこで俺の脳は思考を停止した。

何故って、これ以上考えれば確信になるから。

俺、紹介されたら彼氏を殴るとか言ったし。光稀なわけないよな。

結局、従兄弟と晩ご飯食べただけ。っていう。

次回は光稀くんとお姉さん。

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