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推しの衣装を手がけてます!  作者: 葵 紀柚実
二章 揺れる想い
24/65

24 動揺と困惑

「俺の、彼女にならない?」

郁ちゃんの真剣な眼差しが私をみつめる。

…。

えっと?

彼女?

「あれ?聞き間違い…」

「はははっ。告白してその返しは初めてだよ、俺。さすがりんりんちゃん、やっぱ良いなぁ」

告白?

「えぇ!郁ちゃん、私のこと好きだなんて言ったことないじゃん!」

「ないけど、彼女にしたいって思ったんだから付き合おうって言ってもいいだろ?ダメ?」

「だ、だめでしょ、普通。なんで?って、そっか、結婚は親戚が絡むから…元カノはダメで私はそこがクリアで…」

クリア?

結婚?

なんか、頭がクラクラする。

「言ってほしいなら、これからいくらでも言ってあげるし。好きだって。どお?」

「どお?とか聞かれても!郁ちゃんは従兄弟でお兄ちゃんだもん、付き合うとかはないよ!」

「あれ?りんりんちゃんは知らない?従妹は結婚できるんだよ?」

それは知ってる。知ってるけど!

「そうゆう問題じゃないでしょ。急すぎる。おかしいよ!」

ここが個室でよかった。私、さっきから声が大きい。

「急かな?りんりんちゃんが俺を兄のように思ってくれてるように、俺も妹だって思ってた。でも、たぶん、ずっと前から気になってたんじゃないかって、今ならわかるよ」

「いやいや、郁ちゃん。きっと彼女と別れて、それで、適当に?近場で?勘違い?そんなんじゃない?」

「…なら、それでもいいよ。適当に近場で勘違いでも。そんな女の子がりんりんちゃんで良かったよ」

なに言ってんの、よくないよ。

郁ちゃんは一度大きく息を吐くと、ゆっくり話し始めた。

「可愛いって思ってるのに、妹だから手を出しちゃいけない。とか。気になってるのに無意識に好きになるのを諦めたり。そんな妹に『彼女になって』って言うのは、凄く勇気がいることだって、りんりんちゃん、わかってる?」

う。

わかってなかった。

勇気のいる告白か…。

正直、ありがた迷惑…なんだけど。

もしかして、郁ちゃん、酔ってる?

いや、少し酔ってるぐらいじゃなきゃ言えないこと、か。

「返事もしてくれないんだ」

だって、なんて言えばいいの?付き合う想像がつかないって、私さっき言ったよね?

それ以上何を言えば…。

嫌いならこの場を去ることもできるけど、従兄弟という立場は年に何回か会う付き合いだ。こんな煮えきらない思いで中途半端に帰るのは後味が悪い。

「……そんなに光稀が好き?」

「へ?光稀くん?」

「あ、やっとこっち見た」

なんで急に光稀くんの名を?

そういえば、大晦日に光稀くんに告白された時も突然だったなぁ。

「俺の周りにも、芸能人とかキャラとかにガチ恋のヤツ、いるし。りんりんちゃんの趣味は尊重するからさ、これからは俺のこと、少しは意識してくれない?」

あ、光稀くんは私の趣味についてのことか。

告られたことを思いだしてドキドキしちゃったよ。

「そうだなぁ、どっか二人で出かけたり。例えば…あ、飲み会。俺の知り合いにりんりんちゃんを彼女と紹介しつつ、二人で幹事する。とかどう?」

「どうかと聞かれても。幹事なんて面倒。彼女じゃないし」

「そっか。女子ウケしそうな店、いくつか知ってるんだけど残念。ま、話したいことは話せたし、そろそろ出る?」

あぁ、はい。

終わったの?

彼女になるのは諦めてくれた?

私、了承してないからね。


鞄とコートを引きよせてから立ち上がろうとしたら、郁ちゃんが手を差し伸べてくれる。

まるでエスコートするように。

この間は車の扉も開けてくれたし、従兄弟ではこんなやりとりなかったのに、彼氏だと甘えさせてくれたりするのかな?

出された手を無視するのも申し訳ないので、しょうがなく郁ちゃんの手を取る。

と、ぐいっと引かれた。

強引に。

ちょっ、思ってたより強い、よろめいちゃうよ。

「捕まえた」

捕まえられた。

正しくは抱きしめられた。

「い、郁ちゃん?」

何この体制。逃げるべき?

でも、無理に動いたら転びそう。

痛いほど強くはないけど、背中と腰を抱かれてる。

私は鞄を持ったままだから、郁ちゃんには手を回していないし、弾みでコートは落としてしまった。 

なんか、棒立ちって感じの私に耳元で囁くような郁ちゃんの声。

「りんりんちゃ…凛々子。髪が長いのは光稀の為?」

この体制で光稀くんの名前出す?

何が言いたいの?

「青い色を身に着けてるのも光稀の為?そんなに光稀が好き?」

う、うん。

「好き…」

「そっか。俺にはくれないのに、光稀のことだとはっきり言うんだ」

「だっ、だって郁ちゃんは…」

うわ、転ぶ。

押さないで。危ないよ。

郁ちゃんは強引に私を抱きしめたまま、壁際へ一歩寄った。

これ…ほぼ、壁ドン?

抱いていた片方の手を私の顔へ近づける。そっと前髪を上げた。

「俺、凛々子のウイークポイントがおでこだって、知ってるよ。可愛いから、前髪上げればいいのに」

「顔、近いよ」

うぅ、なんなんだよ、もお。

絶対郁ちゃん酔ってる。

酔ってなくても、酔ってる!

「睨まないで。…ここまでしても落ちないか。おかしいな。でも、意識はしてるみたい…?」

「し、してないよ!」

「残念…ごめん、もう開放するよ」

ちゅっ。

キス…された。

おでこに。

開放はされたけど、手を緩める瞬間にキスは卑怯じゃない?

「光稀が一番でもいいよ。俺が二番目でいいから、早く、俺のものになんない?」

「なりませんっ!」


その後、駅まで一緒だったけど、態度がすっかり従兄弟の郁ちゃんに戻ってたから、ギクシャクはしたけど、どうにか大丈夫だった。

「俺、諦めないんで。おやすみ」

別れ際の一言がよけいだ。

家まで送るとか言い出すかと思ってたけど、あっさり駅前で帰ったのは、私が警戒心丸出しだったからかな。

引き際が見事というか…

無理矢理にでもキスを唇にされてたら、絶対嫌いになってたのに、おでこって…

子供扱い…妹扱いされたみたいだし。

優しくされたようにもとれる。

困ったな。

お酒も入っていたし、告白はふざけただけなんだよと、誤魔化すこともできるのに。

郁ちゃんはなかったことにしてくれなかった。

諦めないとか、本当に困る。

「なんだよ、おでこって」

ヤだけど嫌じゃない、微妙なライン攻めてくるなぁ、もぉ。

あくまでアレは、従兄弟のお兄ちゃんの愛情表現。

私はそう思い込むからね!

郁ちゃんは、なかったことにしてくれない。

次回は翌日の出社。そういえば、雪乃ちゃんに郁ちゃんを見られてましたね。

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