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魔王 2

 亀裂の脇で莫大な力を吸収している魔王。

その姿は一見どこにでもいる普通の人間と変わりない様見える。

だが近づくにつれて分かる、圧倒的なプレッシャー、膨大な量の力……これが魔王の姿なのか……。

あまりの存在の大きさに驚きを通り越してあきれてしまう。


これは本気でやらなくてはいけない可能性もありますね……そう考えながらアドルファスに声をかけるエドワード。


「……どうやらここまでのようです」


「あぁ?」


突然立ち止まり話しかけてきたエドワードに怪しげな目を向けるアドルファス、すると


『やぁまっていたよ……あぁそんなに警戒しなくてもいい【ウォルセアの管理者】から連絡はきているからね』


と魔王の方から話しかけてきた。


「そうですか……」


エドワードは幾分緊張を和らげながらも眼光するどく魔王を見ている。


『まぁ……そうだよね普通ならそうなるよねぇ……でもせっかく話せる機会ができたんだちょっと話さないかい?』


そう言って笑う魔王にエドワードは無言で視線を送り、肯定の意を示した。


『ところでもう1人の君からなにやら懐かしい力を感じるのだけど、もしかして【剣】をもってきてくれたのかい?』


「えぇ……やはりあなたは前回のウォルセアの魔王で間違いないのですね?」


『勿論その通りだよ、あぁ……ちゃんと話が分かってくれる者と会話できるのはいいねぇ……』


「それは……【管理者側】としてのお話ですか?」


『うん、ウォルセア世界みたいな特殊な成り立ちでもないかぎり普通は【管理者】なんて存在を知ることはほとんどないからね』


「確かにそうでしょうね、だからこそこういう仕事に呼ばれやすくなっていますのでいいのか悪いのかはなんともいえません」


苦笑してそういうエドワードに対し


『まぁ、お互いいろいろあるって事だね……しかし懐かしいな……その【剣】の持ち主はもう代替わりしたのかい?』


「貴方を討った『勇者マサタカ』はなくなりました。今代はこの男ではなく別の素晴らしい人物ですのでご安心ください」


とにこやかに答えるエドワード。


『そ、そうなのかい? いや、マサタカという勇者も中々いい性格してたから特に気にしてはいないけどね? というか癖が強くない勇者ってあんまりいないよ』


うんうん、と頷きながら語る魔王。

ふと、そういえば……と思いだすような表情をしながら


『確か魔王城に乗り込んできたときに「大事な用事ができたからさっさと死んでくれ!」とかいってすごい勢いで切りかかってきたんだよねぇ……魔王討伐より大事な用事ってなんだったのかなぁ?』


その言葉を聞いたエドワードとアドルファスは全く同じ苦い表情になる。


「「あぁ……あの話は本当だったのか……」」


二人の脳裏には勇者マサタカが語ってくれたあの話が鮮明に浮かび上がる。


「大変申し訳ありません……勇者マサタカはあの日、のちの伴侶たる【名を秘した大魔導士】とその……ささいなことでケンカいたしまして……なにやら大魔導士に『この前欲しかった魔道具買ってくれるまで許さない』と言われ……それを買い求めるために死に物狂いで魔王と戦ったと語っておりました……」


その言葉にしばし沈黙が訪れる。

話を聞いた魔王はちょっと引きつった笑顔で


『ま、まぁケンカはいけないからね……伴侶になったって事は無事仲直りできたみたいだし良かったね』


と言いながら、とりあえず納得してくれたようだ。

そして改めて話をはじめる2人。


「ところで魔王よ、私たちはいつ頃『システムリセット』を行うべきですか?」


『できるだけ早くしてもらえる方がいいかな……開放された力を環境に慣らしていくのに今回は大分時間がかかりそうだからね、なんなら今すぐでもいいよ?』


さらりと魔王は答える。


「そ、そうですか……変な事をお聞きしますが、痛みとかないんですか?」


『おや? 心配してくれるの? ふふ……大丈夫、痛覚は搭載してないからきにしないで』


「そうですか……それと『システムリセット』後はどうなるか聞いておりますか?」


『あぁ、もちろん知っているよ。どうやら【管理者】のほうで新しいシステムに作り直すみたいだよ、不確定要素の強い舞台装置ではなく最近流行りの新しい方法を考えたとかいってたかなぁ』


「そうですか……ならばこちらの世界への召喚は行われなくなるのでしょうか」


『詳しくは管轄が違うからわからないけど【ウォルセア世界】から召喚することはまずなくなると思うよ、あぁあと一つ。今回は力の吸収量がかなり多かったから魔王消滅後すぐに影響がでてしまうと色々まずいんだ、だからゆっくり還元していくように魔王軍の中に【魔王の影】を置いて調整したんで2,3か月は世界に変化をかんじることができないかもしれない』


「そうですか……色々答えて下さりありがとうございます」


『ううん、久しぶりに人と話ができて楽しかったよ……じゃあ早速その【()】』を【心臓(システムコア)】へ撃ち込んでくれるかい?』


「あぁ……分かった」


黙って話を聞いていたアドルファスは、一撃で決めるために剣を構えた。



……こうして密かに世界は救われたのであった。

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