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聖人様の婚約

エドワード達は国王が大臣達と共に待っていた会議室へと案内された。


「ゆっくりとお休みの所呼び出してもうしわけない」


王は謝罪しながらエドワード達を迎え入れた。


「バーガ国王、顔色が優れないようですがどうかなさいましたか?」


もしや魔王の軍勢に動きがみられたのかと少し顔をこわばらせながらエドワードは尋ねる。



「いや違うのだ、実はだな・・・聖人様へお尋ねしたいことが少々……」


そういいながら国王は冷や汗が止まらないようでハンカチを持ちながら挙動不審に話している。


「なんでしょうか? 私で答えられるものならば」


首をひねりながらエドワードは国王からの質問を待つ。


「あぁ~……えっとだな、聖人様は結婚なさっているのだろうか?」


冷や汗を流しながら国王は聞いてくる。


「いえ、私は独身ですよ。それが何か?」


少し怪しみながらもエドワードは答える。

すると国王は苦渋の表情を浮かべると


「おお!そうであったか!!それならまだなんとか……」


はっきりしない国王の態度を訝しみながらも、周囲の大臣達は国王の言葉を黙ってきいている。


「それで、バーガ国王は何がおっしゃりたいのです?」


話が進まないことに業を煮やしたエドワードが尋ねる。


「あ……そっ、それがだな……そのぅ……」


歯切れの悪い返事をしながら国王は目を泳がせていたが、意を決したようにエドワードを射貫くようにみた。


次の瞬間


「大変もうしわけありませんーーーーーー!」


と、バーガ国王がいつかエドワード達の師であった、下町の老爺が教えてくれたジャンピング土下座のように床へ頭をこすりつけているではないか!


何が起きたのかまったく状況がつかめずに、彼にしては珍しく素でポカーンとした表情を浮かべてしまうエドワードを、指さしながら爆笑しているアドルファス。


「ブッハハッハハハーッ!お前のそのマヌケづら傑作だなぁ!」


そんな2人を尻目に国王は必死になってエドワードへ懇願していた。


「聖人様!どうか我が国の王太子の婚約者となっていただきたいのです!!!」


国王の発言を聞いた大臣達は驚き慌てふためき始めた。


「なんですと!?」

「まさか先ほどの王太子のお話を本気になされたというのか?」

「しかし、もし本当になってしまえばこの国はどうなるのだ?」

「そもそも我が国は男性同士の結婚は認められておらぬはずでは……」


大臣達は口々に疑問を投げかける、ざわめき始めた大臣達に国王は


「ええいうるさいぞ貴様等!私が聖人様とお話しておるのだ!少し黙っておれ!」


そういって国王は大臣達を一喝すると再びエドワードへと向きなおった。

「聖人様、突然このようなことを言われても困るのは重々承知しておる!だが、どうか順に訳をお話させてくだされ!」


と必死で訴える国王にやっと我に返ったエドワードは、未だ笑い死にする勢いでテーブルをバンバン叩きながら笑いこけているアドルファスを睨みつけながら


「国王ときちんと話をしますからアンタは少し静かにしていなさい!」


と一喝した。


「お見苦しい所を見せてしまい申し訳ありませんでした。とりあえず座って話をしませんか?」


とエドワードは苦笑しながら国王に告げる。


「いえ、こちらこそ取り乱してしまい申し訳ない」


国王も気がすんだのか、落ち着きを取り戻して座りなおした。


「それで、国王陛下。一体どういうことなのか説明をしていただけますね?」


とエドワードは穏やかに微笑んで問いかけるが、目が全然笑ってはいない。


「もちろんですとも!まずはどこから話せばよいのやら……」


冷や汗を流しながらバーガ国王は話し出した。

それによると……


・王太子には聖女召喚の儀式の日程などは一切知らせていなかった事。


・なのになぜか今日聖女が降臨すると思っていた。(実際儀式は成功した)


・聖女は自分の運命の恋人なので、だれかにとられる前に婚約してしまえば聖女は自分のものになると思っていた。


・先んじて、召喚成功の知らせと同時に、この世界の婚姻をつかさどる大神殿に王太子が独断で勝手に婚約証明書を出してしまった事。


・聖女が男性なはずはないと、未だに暴れているので部屋に軟禁している。


・聖女関係の書類は最優先で受理されてしまうため、いますぐ婚約は白紙にも破棄もできない。


「……と、いうわけなのだ……」


と憔悴した様子でバーガ国王は言い終えた。


「なるほど、そういうことだったんですねぇ……少し疑問なのですが本来であれば、王家の醜聞でしかないでしょうに、なぜこの話を隠さずに皆の前で公表されたのです?」


エドワードはバーガ国王へ尋ねた。

すると国王は真剣な顔で答え始める。


「それは、私の代でこの国が滅ぶわけにはいかぬからだ……私の父である先代の王が亡くなった時、すでに国内にも魔王の影響で魔物が増え始めていたのだ。 このままではいずれ国民の多くが死んでしまうであろう、そうなればもうこの国は……いや世界は終わりだ……だからこそお呼びした聖人様には嘘偽りなく対応させていただきたいと思っておる。……特に貴方様は嘘偽りなどきかぬお方なのは最初からわかっておりましたのでな」


「なるほど……」


エドワードは腕を組みながら思案していたがやがて


「わかりました、その件はひとまず置いておきましょう。無効にするにも時間がかかるようですし今は最優先で事に当たらなければいけない事が沢山ございますからね」


そう言ってほほ笑んだ。


その瞬間国王の顔はパッと輝いたが、すぐにハッとした表情になり、再び深々と頭を下げて


「感謝いたしますぞ聖人様!」


と心から感謝の言葉を口にしたのであった。

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