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異世界から召喚された聖女は眼鏡のおっさんでした。  作者: 流花@ルカ


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 またいつか……

 世界を救った聖人と勇者との別れを惜しむかのような、あいにくの雨模様ではあったが召喚の間では厳かに『帰還の儀式』が執り行われていた。


 実のところ、エドワードは自力でウォルセア世界へ戻ることができるのだが『召喚の儀』の力に乗ってやって来たために、『帰還の儀式』で帰らないと色々まずいのだそうだ。(大魔導士談)


その為に「めんどくせぇ」とぶつぶつうるさいアドルファスを先に送り帰し、一人儀式に立ち会っているのである。


「これより、送還魔法を発動します。聖人様、どうかご健勝であらせられますよう……」


「聖人様、この度はまことに……まことに感謝しております」


部屋の両脇で神官、騎士、貴族達が跪き礼を取る中心でバーガ国王と王太子ミーツ、そしてスカーの三人が涙を堪えつつ跪拝しながら代表して言葉を述べている。


「こちらこそ、色々世話を掛けました。皆さんとまたお会いする機会が訪れるかはまさに『神のみぞ知る』事でしょうからさよならは言いません。またいつかお会いできる日を楽しみにしています」


「「「はい!」」」


こうしてエドワードは、輝く魔法陣へと入っていった……。



◆◇◆


「おかえりなさいエドワード!」


「ただいま戻りましたミリア様」


「無事でよかったわ……さぁ、このおばあちゃんに沢山土産話をおしえて頂戴ね!」


そう言いながら、ミリアはエドワードへと微笑むのだった。



◆◇◆


……半年後の夜。


「ミルフィー様、今日は皆さまから沢山お誕生日のお祝いをいただいて良うございましたね」


そうミルフィーへ話しかけながら、やさしく上掛けをかけるマーサ。


「うん!……ねぇマーサ、ぼくちゃんといい子にできてた?」


「えぇもちろんですよ。さ、もうお休みの時間ですよ」


「はい!おやすみなさいマーサ」


「お休みなさいませミルフィー様」


そして、マーサが控えの間へ入ってしばらくたった時、ミルフィーのペンダントが淡く輝いた。


「わぁ!せいじんさまっ!」


バッと寝台から駆け下りて、エドワードへ抱き着くミルフィー。


「こんばんはミルフィー王子。おや少し背が伸びましたか?」


そう言いながらミルフィーを抱えるエドワード。


「うん、あとね!僕ちゃんといい子にしてました!」


「えぇ、もちろん分かってますよ。とてもよく頑張りましたね」


「えへへ」


「ですから約束通り、お誕生日の夜に会いに来ましたよ。さぁ風邪をひくといけませんからお布団の中へ戻りましょうね。大丈夫ですどこにも行きませんから、ミルフィー王子のお話を沢山聞かせてください」


「はい! あのね!今日おたんじょうびだったの!それでぇ……」


ミルフィーはエドワードと沢山話をした。

……だがいつの間にか眠ってしまったようで、マーサが朝でございますよと声をかける。


「え……あさだ……」


ミルフィーは真っ青になり辺りを見回すが、そこにはマーサ以外誰もいない。


「ふぇ……」


突然泣き出したミルフィーにマーサが驚く。


「ミルフィー様!どうなされたのです?どこか具合でも……」


「せいじんさま……かえっちゃった……」


「あぁ……聖人様の夢を見ていらしたのですね……」


マーサも悲しそうにミルフィーを見る。


「あら?これはなんでしょう」


ミルフィーの枕元になにか包みが置いてある。


「ミルフィー様、お誕生日のプレゼントだと書いてありますよ」


「ほんとう?」


「えぇ、これは……聖人様からですよ!」


「あける!」


子供らしくビリビリと包みを開けていくミルフィー、そこには子供でもわかるように


『おたんじょうびおめでとう、またつぎのおたんじょうびに』


と書かれたカードと、一冊の本が入っていた。


その本のタイトルには


『ちいさなおうじとせいじんさま』(ミリア著)


と書かれていたのであった。

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