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異世界から召喚された聖女は眼鏡のおっさんでした。  作者: 流花@ルカ


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お別れの夜

次回最終話!

本日19時公開予定でございます。

 あれから瞬く間に時が過ぎて行き、半年ほどもたったであろうか。


 エドワード達は、大掛かりな祝勝会や晩餐会などをすべて固辞したため最後の夜は国王、王太后、スカー、ミーツ、ミルフィーとのささやかなお別れ会とでも言えばいいのだろうか、


【館】の方へエドワードが招待し夕食を共にしていた。

尚、西妃達も来たがっていたのだが、隣国から又遠方の国へ行かなくてはならず泣く泣く旅立っていった。


「おぉ!これが、話に聞いた飛び回る食器!」

「本当に飛んでいますわねぇ」


国王は大変喜び、王太后はビックリしながらサーブされる皿を見つめている。


「さぁ、冷めないうちにどうぞ」

「では遠慮なく」


「これはおいしいですわねぇ」

「美味しいですね!」

「うむ、城の食事と比べても遜色なくうまいな!」

「お口にあったようで良かった、おかわりもあるのでどんどん食べてくださいね」


こうして楽しい時間は過ぎて行き、食後の飲み物を口にしながらぽつぽつと、皆で語り合う。


「聖人様……今までこの世界に対して本当に良くしていただきました。しかしこのままでは、我々は貴方様に何の対価もお渡しせずにお帰しする事になってしまいます」


「その話はもう済んだはずでは?」


「いえ……貴方さまは聖人の名にふさわしい無欲なお方なのは十分承知いたしておりますので、聖人様を使わして下さったという異世界の大聖女様へ贈り物をいたしたいと考えました」


「大聖女様にですか?」


「えぇ、御高齢にもかかわらずこの世界の為にお力を貸して下さろうとした、そのお心使いに対するお礼でございます」


「そうですか……」


「色々な物を検討したのですが、よろしければこちらをお渡し願えませんか?」


そう言って王太后は、美しい色のふんわりとした布を見せてきた。


「お話を聞いた所、大聖女様はとても活動的なお方であるとか、わたくしも年を取ってきましたら寒さが大分堪えることが多くなってまいりましたので、こちらの布でひざ掛けとケープを作りましたの」


「これはとても美しい布ですねぇ」


エドワードは感心した様に布を見ている。


「とても丈夫で色合いも美しい布でございますが、この布地は合わせる服の色によって様々に色を変えますので、慰問やお忍びにも重宝いたしますのよ?」


そう言いながらニコリと王太后が笑う。


「それはそれは……あの方もきっとお喜びになるでしょう。ありがたく頂戴いたします」


そういいながら、ケープの入った包みを受け取った。


「それと、大変恐縮なのですがこちらもお持ちいただきたいのです」


となにやら入り口に置いてあった、大きな箱を指さす国王。


「こちらは?」


「聖人様と勇者殿あての、国民からのお礼の言葉でございます。小さいメッセージカードに一人一枚でと城の前で受け付けたら大変な事になりましたぞ!」


わはは! と嬉しそうに笑うバーガ国王。


「何の思惑も絡まない、民の率直なお礼なら受け取っていただけるかと思いましてな! 字の書けない者は代筆もさせました」


「何もそこまでしていただかなくても……分かりました。ありがたく受け取らせていただきますね」


エドワードは苦笑を浮かべながらも、どこか嬉しそうに箱を眺めた。


「本来であれば『褒章は望みのままに』、と申したい所なのですが聖人様のお好みではないのは分かっておりました故に、大分頭を悩ませましたわい!」


ニコニコと笑いながら国王がエドワードを見る。


「聖人様、私達からはこちらを……」


そう言いながらスカー達が小さなしおりを何枚か取り出した。


「この前、私とミーツとミルフィー3人で森を散歩していた時にキントキさんに会いまして……そこで相談したらとてもきれいな花を貰ったので押し花のしおりを作りました」


「ミルフィーも一緒に作れる物を考えていたのでとても助かったのですが……」


そう言いながらミーツが口ごもる。


「……もしや又、熊を押し付けられたのですか……?」


「わ、私は止めたのです! ですが王太子宮なら広いから飼えるとミーツが……」


しょんぼり言うスカーに、ちょっと引きつった笑顔で


「まぁ、責任を持って飼えるなら良いのでは? ただ、あの熊はただの熊じゃないのは、お分かりですね?」


「そうなのですか?」


キョトンとミーツが首をかしげる。


「ほぼ最上位の水精霊の眷属ですから、食事の必要はありませんが寿命がないので、子々孫々にいたるまでずっと飼わないといけないんですよ?」


「えぇ!そ、そうなんですかっ!……父上どうしましょう……」


半泣きでミーツが国王を見る、国王も困ったようにうーむ。と腕も組んでいたが


「よし、我が王家に賜った聖獣様という事で、代々大事にお世話するように法でも作ろう!」


「なるほど……それなら大丈夫かもしれませんね、まぁ勝手に増えたりなどはしないと思いますし、大きさも自在ですから定期的に水場に連れて行ってあげるくらいで問題はないかと」


「その辺もしかと法にしておきます」


「大きさも変えられるのですね! 早速今日から一緒に寝ます!」


「おい、ぬいぐるみではないのだぞミーツ……」


そういいながらどこか羨ましそうなスカー。


「おほん! と言う訳でこちらが私達で作ったしおりです。あまり上手くできなくて恥ずかしいんですが受け取ってください!」


ちょっと恥ずかしそうにミーツがしおりを差し出す。


「ふふふ……ありがとうございます。大事に使いますね」



「……せいじんさまいなくなっちゃうの……?」



ずっと静かに皆のやり取りを聞いていたミルフィーがぽつりとつぶやく。


「お仕事が沢山あるので、帰らなきゃいけないのですよミルフィー王子」


「ぼくもいく!」


「ミルフィー!何を言い出すんだ!」


「せいじんさまいなくなるのやだぁ……」


そう言いながらぐすぐすと泣き出したミルフィー。

そんなミルフィーをそっと抱き上げてあやすエドワードにひしっとしがみつくミルフィーに、こそりとエドワードが耳打ちする。


「ホント?」


「えぇ、約束しますよ」


「わかった……ぼくちゃんといい子にする」


「ふふ……ミルフィー王子はいつもいい子ですよ」


そういいながら、ミルフィーの首に小さな青い石のついたペンダントをかけた。


「これが約束の印です、なくさないように気を付けてくださいね」


「はい!」


こうして楽しい夜も更けてゆき、帰還の朝が訪れたのであった。

アドルファスはマーサ達と別室で仲良く食事中です。

ア「王族と食事なんて堅苦しくてめんどくせぇ」

エ「アンタも王族だったでしょうが」

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