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異世界から召喚された聖女は眼鏡のおっさんでした。  作者: 流花@ルカ


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平和な館の日常

なんだかんだで戻ってきた前庭で、スカーは恐ろしい表情をしたエドワードが、木につるした簀巻きアーベルを見ながらお説教をしているのを、見なかったことにして鍛錬を始めようとした。

そこへアドルファスがやってきて


「今日は趣向を変えてゲストに参戦してもらう」


などと言い出した。


「ゲスト?」


「あぁ、とりあえずアーベルぼくちゃんは放置で、お前は斧の使い方からだな」


「斧……というともしや?」


「あぁ、キントキを呼ぶぞ」


「おう! 来てやったぞ!」


地面に水で書かれた召喚陣から、するっと出てきたキントキ。



「やっぱり……」


「あぁん?なんか文句あんのか?」


と、キントキがジト目でスカーを見る。


「いえ、別に……」


「まぁいい、それより始めるぞ」


「はい!」


「まずは斧を構えてみろ」


「はい」


こうしてスカーの斧の訓練は始まった。


◆◇◆


……エドワードにこってり絞られてゲッソリしたアーベルは、鍛錬を始めるべくトボトボと歩き始めていた。


「おう! アーベルぼくちゃんはこっちだ」


そういいながらニヤつくアドルファスをみてアーベルはため息をつく。


「はぁ……(またかよ)」


「お? さすがに脊髄反射で噛みつくのは辞めたみてぇだなぁ?」


「……」


アーベルはアドルファスに話しかけられながら、ともに森の奥へと歩いていた。


「よし、じゃあ鍛錬はじめるとすっか……あそこに何か見えるか?」


「あぁ?どれだよ?」


「ほらあれだぜ、あの黒い影だ、ありゃあ魔物の類いだ」


「は?」


「この森にはあんなもんが出るんだよ」


「まじかよ!?」


「そうだ、しかもかなりやばいやつだぜ?」


と、しれっと嘘を吐くアドルファス。

そもそもここは勇者の訓練場(笑)なのでそんな危険な魔物などいない。


「こ、この森そんな危険な場所だったのかよ……」


「だから俺らが退治するんだ、行くぞ!」


「えっちょっと待てって……おい!」


そう言いながらアーベルはアドルファスのあとを追いかけるのであった。




◆◇◆


食堂の片づけを終えたエドワードが、執務室の方へとむかっていると


「せいじんさまー」


と、たたたっと走ってきたミルフィーが抱き着いた。


「おやミルフィー王子、お勉強はおわったのですか?」


そういいながらエドワードは、ミルフィーの頭を撫でている。


「うん! ごほんよんでもらったの!」


「それは良かったですねぇ」


ニコニコと笑顔をむけていると、マーサが慌ててやってくる。


「ミルフィー様、お一人で急にいなくなってはいけませんよ……マーサはとても心配しました」


マーサもミルフィーの後を追ってやってきた。

マーサは少しだけ険しい表情でミルフィーを見つめる。

しかし、ミルフィーはエドワードの腰に手を回しギュッとつかまり、満面の笑みを浮かべてエドワードを見ている。


「おやおや……ミルフィー王子、マーサに心配を掛けてはいけませんよ」


「ううう……ごめんなさい」


そういいながらも、まだエドワードから離れようとしない。

そんな様子をみて、エドワードはクスっと笑う。


「きちんと『ごめんなさい』が言えたことは大変良くできました、でも謝る相手は私ではないでしょう? ミルフィー王子が悲しくさせてしまったのは、マーサなのですからちゃんとマーサに謝りましょうね?」


エドワードの言葉を聞いた瞬間、バッと顔を上げたミルフィーが

涙目でマーサの顔を見る。


「マーサごめんなさい」


「はいよくできました、ちゃんと言えたミルフィー王子はえらいですね」


エドワードに言われたとおりに、マーサに素直に謝罪できたミルフィーを見て微笑むエドワード。

そしてそんな2人の様子を、優しい目で見守るマーサ。

こうして平和な館の日常が過ぎていくのであった。


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