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異世界から召喚された聖女は眼鏡のおっさんでした。  作者: 流花@ルカ


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早朝の前庭での出会い

早朝の前庭で、スカーは無心に木刀を振っている。

その様子を、近くの木にもたれかかりダルそうに見ているアドルファスがいた。


「おー……、あと20で終わりでいいぞー」


「はいっ!」


元気よく返事をして素振りを続ける。

アドルファスは一足先に館へと戻っていった。


しばらくして、スカーは息を整え汗を拭きつつタオルを首にかけ、一休みしていると背後に気配を感じた。


振り返るとそこにはいつの間にか見知らぬ青年が立っていた。

歳は自分と同じぐらいであろうか、青年はニヤついた顔でスカーを見つめている、その目つきにスカーは不快感を覚えつつも


「誰だ?」


と尋ねると


「ダメですよ、休憩中でも気を抜いては。こうして背後に回られてしまいます」


と言い放った、ちょっとイラっとはしたが確かにその通りだなと思い直し


「忠告感謝する」


と礼を言うと、青年はつまらなそうに


「いえ、別に貴方のためではなく、あくまで私の今後のためですので」


と言い、そのまま立ち去ろうとする。


「待て、お前の名は何というのだ?」


と聞くと、面倒くさそうに


「人に名前を聞くときはまず自分から名乗るのが礼儀ではないですか?」


と返してきた。


「俺はスカー・アーダー・バーガだ」


「これはこれは、王太子殿下であられられましたか。私はアーベル・ヴァーニアと申します」


そういいながら慇懃無礼に頭を下げる。


「ヴァーニア……お前もしやマーサの……」


「えぇ、王族の方が寄ってたかって城から追い出したマーサは私の母です」


挑戦的な口調でスカーへと言葉を返すアーベル。


「そうか……マーサは元気か……?」


「ご自分の目でお確かめになったらどうですか? 今頃ミルフィー王子のお世話をしているはずですから」


と不機嫌そうにアーベルが言う。


「なんだと!? ……失礼する!」


そういって館へと走り出したスカー、それを黙って見送っていたアーベルの後ろから不意にゴチン!と拳骨がつむじ目掛けて降ってきた。


「イッッッツテェェェェェ」


悶絶するアーベルの後ろで仁王立ちしているのは父のパースである。


「アーベル……今王太子殿下に向かって、なんという口をきいていたのだ……?」


ただよう冷気に驚いて振り返り


「ちっ、父上もいらっしゃっていたのですかっ!」


と驚きの声を上げる。


「まったくお前と言う奴は……」


呆れたように言いながらため息をつくパース。


「うぐぅ……」


何も言えずにうつむくしかない。


「ここに来る前に、お前にはちゃんと説明したはずだねアーベル」


「ですが父上!」


「黙りなさい、母親を貶められたというお前の気持ちはわかるし私だって同じ気持ちだよ。だがそれをスカー殿下に八つ当たりするのは違いと思わないかい?」


「……」


「当時子供だった殿下方にマーサを守るすべなんてなかったし、きっとなんの事情も知らされずに引き離されたはずだよ? そんな殿下方がマーサのことを嫌ったりましてや貶めようとおもうはずがないだろう?」


「それは……」


「だから、変な固定観念や色眼鏡で見るのではなく、ちゃんとスカー殿下個人を見て判断しなさい、わかったね?」


「……はい……」


未だ不満そうではあるが、渋々返事を返すアーベルであった。


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