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異世界から召喚された聖女は眼鏡のおっさんでした。  作者: 流花@ルカ


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深夜の話し合いと乳母マーサ

 深夜の子供たちが寝静まった館の談話室では、オッサン二人が酒を飲んでいる。


「そういえば、加工するって言った逆鱗どうすんだ? それで勇者の剣(笑)つくる予定だったんだろ?」


「そうですねぇ……予定通り作っても良いのですが、キントキさんのくれた斧のほうが数倍性能がいいんですよね……」


「あぁ、そりゃそうだわな」


「うーん……盾でも作ってもらいましょうかね」


「剣と斧の二刀流って手もないわけじゃねぇがなぁ……アイツに向いてるともおもえねぇんだよな……斧だけじゃダメなのかよ?」


「いえ、あの斧なら十分すぎるほどですよ。ただ、やはり勇者には聖剣が必要でしょう?」


「まぁ、イメージとしてはそうかもしれねぇけどよ……別に斧の勇者でもいいだろ」


「それはそうなんですが……やはり魔王を倒すためには、伝説の武器がほしいじゃないですか」


「そんなロマンチストみたいなこと言ってねぇで、さっさと今後の計画たてろや!」


「まったく……わかってますよ。とりあえず城の掃除はある程度目途が立ちましたので

問題ありません、後はミーツ王子と接触を図りつつ……といったところでしょうか」


エドワードの言葉を聞き、グラスを置いて考え込むように腕を組むアドルファス。


「その王子使いもんになるのかよ? スカーの矯正したほうが早いんじゃねぇのか?」


そう言うと、再び酒を飲み始める。

それをみて、苦笑いしながら答えようとするエドワードだったが、扉をノックする音に遮られる、入ってきたのはスカーだった。


「ご歓談中申し訳ありません、ミルフィーが……」


そう言いながら、腕に抱えていたミルフィーを困ったように見る。

ミルフィーはグスグスと泣きながらも眠っているようだ。


「おやおや、これはいけませんね」


そういいながらエドワードは、ミルフィーを受け取り抱きかかえる。

ブランケットをかけ、トントンと背中を軽く叩きながらあやしていく。


その様子をみている二人に視線を向けると、 少し思案して口を開く。

その顔からは笑みが消えており、真剣な表情になっている。


「やはり、まだまだ不安定ですね。この子は私が見ますから、スカー殿下は心配せずに、ゆっくりおやすみなさい」


エドワードはスカーを安心させるように、そう言い残すと部屋から出ていった。

そのあとを追うように、スカーはアドルファスへ頭を下げて退出していった。



◆◇◆


次の日の朝、日の光に誘われるように目を開けたミルフィーは部屋に誰かいるのに気付いた。

寝ぼけ眼で窓を見ると、そこには白髪の女性がカーテンを開けている。


「おや、ミルフィー様、お目覚めでございますか?」


女性は優しく微笑むとミルフィーの方へやってくる。


「おはよう……だれ?」


「はい、おはようございます。 わたくしは今日からミルフィー様のお世話をさせていただくことになりました、マーサと申します」


「……えっと……よろしく……お願いします」


「はい、こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」


そう言ってほほ笑んだ。


「では、まずは身支度を整えましょうか」


「……うん」


「では、失礼致します」


そう言うと、ミルフィーを着替えさせ始める。


「あのね……せいじんさまどこ?」


「聖人様は、食堂の方でお待ちになっていますよ」


微笑みながらマーサは答える。

その言葉に、ぱぁぁっと笑顔になったミルフィーは


「マーサ!はやく食堂いこ!」


と急かす。


「はい、ミルフィー様、すぐに終わりますので、少々おまちくださいませ」


そう言うと、手早くミルフィーの身だしなみを整える。


「さあ、これで大丈夫ですよ」


「じゃあいこ!」


そう言うと、ミルフィーは部屋を出て走り出す。

その様子に慌てて


「廊下を走るとあぶのうございますよー!」


とマーサが後ろから声をかけるのであった。

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