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異世界から召喚された聖女は眼鏡のおっさんでした。  作者: 流花@ルカ


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下山

到着した応援部隊への指示を出しながら、アーテウはアドルファスへと声をかける。


「アドルファス殿、この後はなにかご予定がおありなのですか?」


「あぁ、ここも魔物の気配が薄くなったしもう大丈夫だろ。 どうやらあの銀竜種がエサ追いかけて、山じゅうの魔物追い散らしてたせいで群れが出来てたみてぇだしな」


そういいながら肩をすくめるアドルファス。


「なるほど……そういうことでしたか」


と、感心した様にアドルファスの推察を聞くアーテウであった。


「とりあえず、先に逆鱗は回収させてもらったが、その他は加工するみてぇだから、あとでこっちで引き取っていいか? 国王には了承得てるって聖人様が言ってたぜ」


「左様ですか! では、死体を回収して砦の方へ運んでおきます!」


そう言うと、騎士達は竜種の死骸を運ぶ作業を始めた。


「じゃあ、俺もそろそろ帰るとするわ。また魔王討伐で会おうぜ」


「はい! 本当にありがとうございました!」


そう言い残してアドルファスは帰っていった。


「……さぁ、我々も急ぐとしようか」


こうして、アーテウ率いる部隊は無事に任務を終え、砦へ帰還したのだった。


◆◇◆


夕暮れが美しく景色を彩る頃、館の前庭でスカーが一人黙々と鍛錬を続けていた。

その姿は真剣そのものでまだまだ粗削りではあるが、無駄がなくなりつつあり時折美しいとさえ思わせるものだった。


しばらくすると、なにかに気付いたのか、ハッと後ろを振り返る。


「よう、精が出るな。ちょっと付き合えよ」


そういって、問答無用で木刀で打ちかかってゆく。


「お、お師匠様!?」


スカーは驚きながらも、なんとか受け止める。


「よしよし、これならどうだ?」


今度は連続で斬りつけてくる。


「ちょっ、待ってください!!」


「待たん。敵は待ってくれねぇだろ?」


そう言って、さらに激しく攻撃を続ける。


「うわぁぁぁぁぁ!!!」


「なんだなんだ、この程度で音を上げるんじゃねぇよ」


アドルファスの攻撃はさらに激しさを増してゆく。


もはや防戦一方になりつつあるスカー、その様子をみても一切容赦なく打ち込んでいき、突然ニヤリと笑うと反転する。


「ほら、隙だらけだぜ?」


そのまま背中を蹴られ、地面へと倒れ込む。


「うぅ……」


悔しげな表情を浮かべながら起き上がろうとするスカーだった

が、それを遮るようにアドルファスは手を差し伸べる。


「まぁ、今日はよく頑張った方じゃねぇか? 最初の頃よりは大分マシになったぜ」


「……はい!」


スカーはその手を掴んで立ち上がると、嬉しそうな顔で答えた。


「よし、そんだけ元気があれば充分だな。飯食ったら続きやるぞ」

「はいっ!お師匠様」


アドルファスは満足気に答えると、館の食堂へと向かっていった。


◆◇◆


「で? 『お使い』はできたようですが、買い出しはどうしたんです?」


食堂の中で仁王立ちしながら、腕を組んでいるエドワードが、冷ややかにアドルファスへ言葉を投げつける。


「あー……それはな……」


そういいながら、ちらりとスカーの方を見るアドルファス。


「……あぁ、そういうことですか。まったくアンタという人は……」


その視線の先を見たエドワードはため息をつく。


「弟子が力をつけてきたことを喜ぶ気持ちはわかりますが、稽古をつけたいからと買い出しをサボるとか、言い訳にもなってませんよ!」


「悪かったって!そんな怒んなくてもいいだろ? ちゃんと山は片づけてきたんだぜ?」


そう言うと、懐から袋を取り出してテーブルの上に置く。


「まぁ確かに……。次はありませんからね?」


「へいへ~い」

「はいは一回でよろしい!」

「へーい」


「全く……アンタに説教しても時間の無駄にしかなりませんし、さぁ、みんな食事にしましょうね」


そう言いながらスカーとミルフィーへ笑顔をむけるエドワード、

二人のやりとりを、兄弟そっくりのポカンとした顔でずっと眺めていたスカーとミルフィーであった。

ミルフィー

お父さんとお母さんかな?


スカー

どっちかっていうと、おかあさんと息子じゃないかなぁ?

(お母さんなのは変わらない)

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