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異世界から召喚された聖女は眼鏡のおっさんでした。  作者: 流花@ルカ


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ささやかな兄弟の日常

早朝の【館】の廊下をグスグスと泣きながらミルフィーが歩いている。


「せいじんさまぁ……どこぉ~」


どうやらエドワードを探しているようだ。

しかし、いくら探しても見つからない。

そのうちに空腹を感じ始めてしまった。


「うぅ……おなかすいたよぉ……」


とうとう座り込んでしまい、本格的に泣いてしまう、そこへ


「どうしたのだ?こんなところで?」


そう声をかけながら近づいてくる人物がいた。


「ふぇ……?だれ?」


顔を上げるとそこには金髪碧眼の青年が立っていた。


「私はスカー、お前の兄だ。お前の名前を教えてくれるか?」


「みるふぃ……」


「ではミルフィーよ、なぜ泣いていたのかこの兄に教えてくれないか?」


「おなかすいた……」


「そうか……ではこの兄と食堂へ行こう、さ、おいで」


膝をつき両手を広げスカーはそう言った。

その言葉にパッと笑顔になるミルフィーだったがすぐにシュンとなる。


「で、でもぼく、せいじんさまさがす……」


「あぁ大丈夫だよ、私も探してあげるからおいで」


そういうと、スカーはミルフィーを抱き上げそのまま食堂へと向かうのだった。


「おはようございます。二人ともそろそろ起きる頃合いだと、食事の用意をしておきましたよ」


エドワードは食堂のテーブルへ朝食を用意して待っていた。

エドワードを見たミルフィーは、ぴょいとスカーの腕から飛び降りてエドワードの方へ駆けて行く。


「せいじんさま! おなかすいた!」


と嬉しそうに抱き着いている。


「おやおや、ずいぶん懐かれてしまったようですね」


と苦笑しながら、自分の席の横へと準備したお子様用の椅子へと座らせる。


「スカー殿下も冷めないうちに召しあがってください」


そう言いながらエドワードは、ミルフィーの食事の世話を焼いている。

ミルフィーはうれしそうにスプーンを受け取り、スープを口へと運んで行く。


「おいしいっ!!」


満面の笑みを浮かべる。


「それはよかった」


「おなかいっぱいたべたらね、おにいちゃとおはなしするの」


とニコニコしている。


「そうですか、たくさん遊んでもらってくださいね」


まったりパンを口に運んでいたその言葉を聞いたスカーは、その言葉に慌ててむせた。


「う……ゲホっ……げほっ」


「慌てて食べてはいけませんよ……ほらこれを」


エドワードはちょっと呆れながらスカーに新しいナフキンを渡し

てやる。


「う……げほっ……すみません……しかし聖人様、私は修行中の身です、遊んでなど……」


「あぁ、そのことですが、本日からは午前はミルフィーの世話をお願いします、修行は午後のみでいいとアドルファスからの伝言です」


「そうですか……そういえばお師匠様はどちらへ……?」


「あの男には、本日は買い出しを命じてありますのでお気になさらず」


「買い出し……」


勇者が買い出しを命じられるなど……いや相手は聖人様だしいいのか……?

などと頭の中がグルグルしているスカー。


「そういうわけですので、食事を終えたらよろしくお願いしますね」


「はい……」


スカーはうわのそらで返事を返していたのであった。


◆◇◆


「おにいちゃ、あそぼー!」


と、満腹ですっかりご機嫌のミルフィー。


「おにいちゃではない、兄上と呼びなさい」


とスカー。


「あにうえー?」


そんな2人をみて、クスっと笑うと


「では、よろしくお願いいたしますね」


と微笑みながら、朝食を食べ終えた食器を宙に浮かせて厨房へと向かって行った。


「うわーすごーい! あにうえもあれやってー」


「むりだ……」


「えー」


などという二人の話声が廊下まで響いていたのであった。

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