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異世界から召喚された聖女は眼鏡のおっさんでした。  作者: 流花@ルカ


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中庭での騒動

※ 今話は、子供の虐待描写がございます。

微細な描写はしておりませんが、ご注意くださいませ。

「……さて、ここでの用はすみましたね。 バーガ国王へ報告しに行きましょうか」


エドワードは一人呟くと部屋を後にした。

そのまま王宮の中庭へとつづく廊下を通り抜け、中庭に面した渡り廊下に出た時だった。


「……た……い……痛い……よ……やめ……」


と悲鳴交じりの嗚咽が聞こえてくる。

その声に顔をしかめながらエドワードはすぐさま駆け出す。


そこにはぼろぼろの服の背中から血を流し(うずくま)る5、6歳ほどの子供と騎馬ムチなどと呼ばれる短鞭を持ったメイドの女がいた。


 エドワードは目を見開くと、一瞬にして間合いを詰めてメイドの女を蹴り飛ばした。

そして子供の体をそっと抱き上げる。


「大丈夫ですか?」


「うぅ……ぐす……だれ? ぼく…… 痛いよぉ …… 怖い……たすけて……」


子供が泣きじゃくりながらもエドワードにしがみついてきた。


「もう大丈夫ですよ。私があなたを助けます。 今、治してあげますから、少しだけ待っていてくださいね」


エドワードが優しく語りかけると子供をそっと下ろし、怪我をしている部分に手を当てて回復魔法をかけていく。

みるみると傷口は塞がっていった。


「凄い……魔法はじめてみた……背中なおしてくれてありがとう」


そういいながらも、子供は不安なのかエドワードの首にしがみついたままである。


「どういたしまして。他にどこか痛みのあるところはないですか?」


エドワードがそう聞くと、子供は元気よく首を横に振る。


「そうですか、それは良かったです」


エドワードは子供に安心させるように微笑みながら子供に語り掛けていた。

その時だった。


「あんた……女性を蹴り飛ばすなんてどういうつもりなのよ!」


と、蹴られた痛みが治まってきたのかメイドが怒鳴り散らしてきた。


「あぁ、まだ居たんですか。というか、貴女こそ子供に暴力を振るうなどとどういうつもりなんです?」


と冷たく言い放つ。

そんなエドワードの言葉に、怒り心頭のメイドはさらにまくし立てようと息を吸い込んだ時だった。


「貴様らここでなにをしている!」


と、遠くから叫び声が聞こえてきた。


「げっ! まずい……」


メイドはその言葉と共に逃げ出そうとするが、


「逃しませんよ」


とエドワードの魔法によって、地面に転ばされる。

そこに騒ぎを聞きつけた警備の騎士達が駆けつけてきたようだ。


「こ……これは聖人様ではございませんか!そこのメイドは後宮の制服を着ておるようですが……なにか聖人様に無礼を働いたのでございますか……?」


騎士の一人がひざまずきながらエドワードに向かって叫ぶ。


「せ……せいじんさまぁ!? そ、そんな偉い人がなんでこんな中庭なんかに……」


メイドは慌てて立ち上がろうとするが、それをエドワードは許さず踏みつけて押さえた。


「この女は後宮のメイドですか……じつは私がここを通りかかった時に、ちょうど子供の泣き声が聞こえたものでしてね……みると子供を短鞭で叩いて傷つけているこの女を発見したので保護したのですよ」


エドワードは淡々と答える。


「なるほど……そういうことでしたか……しかし、その子供は一体……?」


騎士達は子供を見て首を傾げる。

そこには先程まで泣いていたであろう、涙の跡が残ったまま、きょとんとした顔の子供がエドワードの首ったまにしがみついている。


「……恐らく後宮に住まう王子では?」


その言葉に騎士たちは驚く


「お、王子殿下がそのようなみすぼらしい恰好で……しかも虐待を受けていたとおっしゃるのですか!」


「今はまだ推測でしかありませんが、この女が色々話してくれるかもしれませんよ」


「なんともはや……分かりました。 おい!拘束して連れて行け!」


騎士達によりメイドは捕らえられて連れて行かれた。


「聖人様、ありがとうございました。直ちに調査を開始いたしますが、その王子殿下はいかがいたしましょう……誰かメイドにでも引き取りに来させましょうか?」


騎士のその言葉をきいた子供は、恐怖に体を硬直させ必死でエドワードにしがみつく。

そんな様子にエドワードは、子供の背中をポンポンと軽く叩きながら騎士へ


「このままで結構ですよ。かなり精神的に追い込まれているようですので落ち着くまでは私が見ていましょう、それにちょうどバーガ国王へ報告するために謁見する予定でしたので一緒に行きます」


「さ、左様でございますか。ではこれで失礼致します。」


そう言うと騎士たちも去って行った。


「さて、あなたのお父上に会いに行きましょうね」


そういいながら子供を抱えなおし、エドワードは国王の元へと歩き出した。

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