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短編とかその他

暗き深海の真実

作者: リィズ・ブランディシュカ





 私は知ってしまった。

 この世界で生み出された犠牲の事を。

 知ってしまったからには、元の世界に戻る事は出来ないだろう。

 もう、どうしようもない。





 私が住んでいる国は、海の国。

 広大な海の中につくられた、まるい泡の中で生活している。

 海の国には人間もいるけど、人魚族もいる。

 人魚族は歌の上手な種族だから、国の中はいつも音楽にあふれていた。


 人間はそんな人魚族の歌声にあうような楽器をつくったり、弾いたりして共存している。

 だから人魚は人間の楽器の力を借りて、より綺麗な歌声を披露していくのだった。


 二つの種族は、これからも互いに手を取りあって生きていく。

 私もその輪の中にいる。

 その時までは、そう思っていた。


 けれど、私は知ってしまったのだ。

 ごく一部の者達が、人魚を捕まえて食べていたという事実を。


 話はそれるが、この国にはあるおとぎ話がある。


 遙か昔、大地が大海に飲み込まれた頃。

 水に沈みゆく無力な人間達を、人魚たちがその体ですくいあげたという話があった。

 人魚と人間の共存の歴史の始まりとして、伝えられている物語だ。

 だが、一部の者達はそれをねじ曲げて解釈している。


 その話の真実は、人間が人魚の体を食べて、水に強い人魚族に変身したのだと、思っているのだ。

 この泡でできた国から、人間達は外に出る事ができない。

 人間は水の中で長時間泳ぐことができない。

 それを異常に怖がる者達がいるから……。

 そういう解釈にたどり着いたのかもしれない。


 私達は、生まれてから一度もこの国の外に出た事がないから。

 想像の中にある水の脅威が、とても恐ろしい物になってしまうのだろう。


 しかし、大半の人達は国の外の事など考えない。

 人魚を食らって人魚になるなど、眉唾もの。普通なら笑い飛ばす。

 しかし実際は、それを真面目に信じた人達が、大勢いたようだ。


 私は、その決定的な証拠を目撃してしまった。


 隠された場所には、人魚たちの無数の亡骸があった。


 知ってしまったからには、もう元の世界には戻れない。

 人魚たちと平和に生きて、楽しく語らっていた時間には。


 だから私は、決意した。


「あの話を信じた人達が、他にもいたんだ」



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― 新着の感想 ―
[良い点] 人魚の肉を食べると不老不死になるという伝承もありますし、こういうことも起こり得ないわけではなさそうですね。別の種族が共存するのは難しいんだなと思いました。
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