第45話:怨みの果て
濃紫は鼻血を垂らしながら足を引き摺り、私達から距離を取ろうとしていた。彼女としては既にこれ以上の攻撃をする意味が無いのだろう。先程自身の力によって私に呪力を流し込み、私自身にも分かる程に体と魂を汚染した。呪力により汚染された私はこのまま放っておけば死亡し、そこから更に呪力が広まるため距離を取ろうとするのも納得である。
命ちゃんは濃紫が逃げようとしている事を察したらしく、ステッキにお札を貼り鞭へと変形させて思い切り振るった。足を負傷しているのか機動力の低い濃紫は簡単に縛られていたが、腕を上手く動かして自身を縛っている鞭状の部分に手を触れた。すると、いつもは白く発光している変形部分が汚染される様にして黒く変色していき、やがて崩壊する様にして元のステッキへと戻ってしまった。
「っ……!」
「無駄ですよ……貴方達の様な不届き者に、勝ち目などありませんとも……。天は……見ていらっしゃるのです! そして今日こそ我ら日奉一族が正しかったのだと証明される! 怪異などと共生するなど不可能だという事を!」
濃紫が受付カウンターにもたれ掛かっている中、縁師匠が一人こちらに歩き出し、私の傍まで来るとその小さな体で肩を支えてくれた。
「菖蒲。菖蒲が動ける様になれば、あいつ倒せる?」
「え? ……で、出来ると、思いますっけど……もう体が……近くに居たら縁師匠も……」
「私の事は気にしなくていい。それより、菖蒲にやって欲しい事がある。そこでいつもの降霊をしてて」
「こ、降霊です、か……? でもでも、今はそんな事してる場合じゃ……」
「いいから」
彼女が何を考えているのかは分からなかったが、最早足を動かす事すら難しくなりつつあったため、今は縁師匠を信じて、手で『不死花』の形を作るしかなかった。
「ゆ、縁ちゃん、まさか……」
「賽。危ないから下がってて。悪いけど今の賽じゃ足手まとい」
そう言うと縁師匠は、騒ぎの中で誰かが落としていったのであろうペンを床から拾うと、それを逆手に持ちすぐさま自身の首筋へと突き立てた。
「縁ちゃんっ!!」
「賽、いいからっ! ……続けて菖蒲。自分の役割を果たしてっ……」
縁師匠は首へと突き刺したペンを抉る様にして動かし、自らの頸動脈がある辺りを掻っ切った。その首からは鮮血が吹き出し、縁師匠はフラフラと数回よろめいたかと思うとその場にバタリと倒れた。濃紫は縁師匠の事を知っている様な反応を見せていたが、何故彼女がこのタイミングで自害を計ったのかは理解出来ていない様子であり、この事から私の能力まではまだ完全には知られていないのだという事が分かる。
「頼んだ、よ……」
その言葉を最後に縁師匠が沈黙した直後、『不死花』のポーズを取り続けていた私は彼女の魂を感知した。よく見知った、訓練のためにと何度も何度もそうしてくれた彼女の魂だった。そんな魂がこちらの体に自分から侵入し私の魂と固着しようとしていたため、それに応えるために私の魂の表面を変形させて縁師匠の魂と固着させる。
「そういう事、ですか……」
彼女がやらんとしている事を理解したところで、私はついに完全に足が動かなくなりその場に倒れ込んだ。賽師匠も命ちゃんもこちらを邪魔しない様にと濃紫には近づかず、私にも近寄ろうとはしなかった。
『菖蒲。これでいい』
『でもでも縁師匠! それだと……』
『私をナメないで。この程度、私の前じゃ意味無い。ほら、私は戻るから後は任せるね』
頭の中で聞こえたその言葉の後、縁師匠は私の魂から離れていった。見てみると彼女は先程の位置で倒れたままであった。死亡後三分経過すれば肉体が霊体化し、それから一分経つと元通りの肉体に戻るという体質を持っている『不老不死』の縁師匠であるが、どうやら三分経過する前であれば魂だけを肉体から切り離せるらしい。そしてそんな縁師匠の助力のおかげで、私を蝕んでいた呪力は全て彼女へと移っていった。どんな方法でも完全に殺害する事は出来ず、更に復活時に自身の肉体に害を及ぼす外傷や魂を汚染する超常能力を全て消し去った状態になるという特異性を持ってすれば、濃紫の強力な呪力も意味を成さなくなる。
完全に元通りの体に戻れた私はゆっくりと立ち上がり、濃紫に向かって歩き始める。私が復活した事もあって命ちゃんも共に濃紫へと向かって動き始めた。既に先程の呪力の影響で鞭へと変形させるお札が使えなくなっているのか、ステッキは白く発光しながら剣の形へと変形していた。
「何をっ……何をしたのです貴方はっ!」
「答える必要あります~? 私的には大人しく投降してくれたら嬉しいんですけどね~」
「諦めなさい日奉濃紫。最早公務執行妨害だけでは済まされません」
「くっ……汚らわしい屑共めっ!!」
濃紫はカウンターに置かれていた電話の受話器を掴むとこちらに向かって放り投げてきた。恐らくそれも呪力に侵されている筈であり、この場所の様に手に取れる小さな人工物が多い場所では彼女の方が有利なのだろう。しかしそれがこちらに届く前に命ちゃんが私を守る様に飛び出し、剣で真っ二つに切り払った。元のステッキの形に戻る事は無かったため、直接触られない限りはステッキの変形が解除される事は無いのだろう。
「後ろに居て」
「うん」
命ちゃんは自らを盾にしながら濃紫へと近寄っていく。
「これが最後の警告です。先程の貴方の攻撃により鞭は使用不能になりました。今手元に残っているのはこの剣だけです。次は加減は出来ません」
「元よりそのつもりですとも……いずれにしても貴方達に勝ち目なんてありません。アタシが上に置いて来た『地獄送り』は今も少しずつ……この建物を祟り続けているのですから……!」
恐らく彼女が言っている『地獄送り』とは、あの正二十面体のオブジェなのだろう。今は呪い専門の蘇芳さんとねぇねが対処してくれている。
「無駄ですよ~。JSCCOには呪い専門の人も居るんですよ?」
「ふっ……ふふ、はははっ……やはり貴方は紛い物ですね……! アタシがそんな事を知らないとでも? だからアレを置いて来たのですよ……一度発動すれば誰にも止められない大呪物をね……」
「止められない……?」
「そうですとも! 解呪しようと手こずっている間にその体はどんどん蝕まれていく! 誰にも……止められません!」
「……菖蒲ちゃん耳を貸さないで。あいつが適当言ってるだけ」
「う、うんうん。分かってるよ。追い詰められて適当言ってるに決まってる」
残り二メートルといった所まで来た辺りで、濃紫はギョッとした顔をして私達の後方へと視線を向けていた。
「何を……したのです……」
「はい?」
「何をしたのかと聞いたのです!」
「いやいや、だから何の話ですか?」
「黄泉川縁……彼女の遺体をどこにやったんです!!」
どうやら作戦は成功したらしい。
「不老不死なら何故遺体が消え――」
「ここに居るよ」
直後、背後からこっそりと近寄っていたらしい縁師匠は濃紫の背中へと飛び掛かり、その首を細い腕で絞め始めた。その様子から察するに、既に死亡してから合計四分が経過しているらしく、完全に健康体の元通りの体へと戻っている様だ。
濃紫は苦しみもがきながら受付カウンター上の物を散らかし、ついには直接背中に引っ付いている縁師匠の頭へと両手を触れた。
「ぐっ……! なっ……!?」
「私をまた呪殺する。確かにいいかもね。でも知らないの? 死体は穢れそのもの。私があんたの背中で死んだ時、あんたは呪われずにいられるの?」
呪殺された死体に直接触る、それはつまり穢れによって強化された呪いに触れる事を意味する。このまま縁師匠が彼女の背中に接触したまま死亡すれば、濃紫は自らの呪いを直接浴びる事になるのである。
「私が居た時点であんたはとっくに負けてたんだよ。ただの成長しない人間だと思った? ただの無力な能力者だと思った? ただ死なないだけだと思った? ……あんまり私をナメないでもらえるかな」
「アタ、シがっ……自分の呪力、で……死ぬとでも……?」
「いえいえ、貴方はきっと自分の呪力に耐性が無いんです」
「……っ」
「だってそうですよね? もし自分には影響が無いなら、貴方にはあの『地獄送り』とかいう呪物を持ったままこの病院に立てこもるっていう方法だってあったんですから。でもでも、貴方はそうしなかった。鷹みたいな形に変形させた後、それをこっちに投げてきたんです。それってつまり~……そういう事ですよね?」
日奉濃紫に『呪力を与える能力』があるのは間違いない。だが、それに対する耐性は恐らく一般人とそう変わらないのだろう。そもそも多少の違いはあれど、呪いをモロに食らって完全に影響が出ない人間など今まで確認されていないのだ。大なり小なり呪いに触れれば、必ず何らかの影響を受ける。人を呪うという事はそれほどまでに周囲も本人さえも蝕むのだ。
濃紫は背中を壁に打ち付けて縁師匠を落とそうとしていたが、その程度の事では離れなかった。元々死に慣れている縁師匠からすれば、その程度は痛みにすらもカウントされないのかもしれない。
「こっ……の……!」
受付カウンターから出てきた濃紫は酸素不足で視界が覚束ないのかフラフラしながら歩くと、突然近くにあったロビーの椅子の背もたれに横から飛び込む様にして倒れ込んだ。直後鈍い音が響き、彼女の背中にしがみついていた縁師匠が床の上に落ちる。どうやら背もたれの部分に縁師匠の頭が当たる様に倒れたらしく、それによって頭部を強打して気を失ってしまったらしい。
濃紫は床を這う様にして起き上がり、エレベーターの前まで着くとボタンを押してエレベーターの扉にもたれ掛かった。
「脳は機能している様ですね……いくら死なないと言っても所詮は人間……頭を打てばそうなりましょうとも……」
「止まりなさい!」
「裏切り者の一族の言葉など誰が聞きますか……。認めてあげますよ、貴方達を」
「……どういう意味ですか?」
「はっきり言って完敗です。アタシの力では貴方達には勝てません、分が悪過ぎます」
「だったら投降してくれません~?」
「いいえ……だから『地獄送り』を最終段階へと移行させます。アレはまだ完全ではない。この身を犠牲に払う事になるでしょうが、どうせこのまま捕まるのであればどちらにせよ同じ事……ならば最期にせめて、まだここに残っている者だけでも始末させてもらいますよ。雌黄とか名乗っているアレの本体はここに居るのでしょう? 邪魔ですからね、アレは……」
チーンとベルが鳴りエレベーターの到着を伝える。このままでは最悪の事態になりかねないと考えた私は、駆け出した。間違いなくこのまま行けば間に合う距離であり、最悪相打ちになるかもしれないがエレベーターの中で捕まえる事は出来ると踏んでいた。
しかし、そんな私の予想はいとも容易く壊された。
「……あっ?」
エレベーターの扉が開くと同時に後ろへと足を動かした濃紫は、素っ頓狂な声を上げてその姿を消した。そしてその直後、ガァーンと激しく何かがぶつかる音が響き渡った。
「え……」
「嘘でしょ……」
エレベーターはベルが鳴ったにも関わらず到着しておらず、開いたままになっている扉から下を覗き込んでみると、濃紫はエレベーターシャフトの一番下で倒れていた。僅かに動いていたため生きてはいる様だったが、背中から落下したため頭でも打ったのか上手く体を動かせなくなっているのが確認出来た。
「何でこんな……」
何故エレベーターが動かなかったのだろうかとエレベーターシャフト内を見上げようとした瞬間、「菖蒲ちゃんっ!!」という命ちゃんの声が響き、私の体は腹部に回された彼女の手によって後ろへと引っ張り戻された。その一秒後、凄まじい破壊音が聞こえ、扉の向こうからは埃が舞い上がっていた。
「え、え……」
「菖蒲ちゃん!」
賽師匠がこちらに駆け寄ってくる。
「大丈夫!?」
「え、は、はい……命ちゃんが助けてくれたんで……」
「まさかとは思ったけど、ね……」
「ど、どうなったの? 今の、何が……」
賽師匠が注意しながらエレベーターシャフトの底を覗き込む。
「……エレベーターが落ちてきたみたいだね……」
「えっ!? じゃ、じゃあじゃあ!」
「……多分だけど、あの人はもうダメかも……。流石にあんなに大きい物が落ちてきたら……」
命ちゃんの手が私から離れる。
「命ちゃん、何で落ちてくるって分かったの?」
「……君が見たって言ってたあの人が、あたしにも見えた」
「え?」
「言ってたでしょ。黒いコートを着た長い髪の女性。あの人が、あたしにも見えた」
「ど、どこに!?」
「外の野次馬の中に居た……何となく視界の端に映って、気になったから少し視線を動かしてみたら、エレベーターの方に向けて腕を上げてたから、もしかしたらと思って……」
やはり私があの街中で見た女性は実在するようだ。そして何故かは分からないが、私は彼女に命を狙われている。まるで偶然の事故に巻き込まれた様に見える形で。
それから少しすると、縁師匠が目を覚まし、蘇芳さんとねぇねが階段を使って降りてきた。蘇芳さんの手には『地獄送り』と呼ばれたオブジェが乗っており、彼女曰く完全に解除する事に成功したとの事だった。詳しくは分からないが、ねぇねがサポートした事によって上手く解呪出来たらしい。
その後、警察や救急隊員が病院内へと突入し他に何か仕掛けられていないか、病室に取り残されていた怪我人は居ないかなどの調査を開始した。そんな中、ねぇねに対して命ちゃんによって事件の簡単な説明が行われ、そしてあの謎の人物についても報告された。
「うん、ありがとう殺月ちゃん。いつも妹がお世話になってるみたいだねぇ」
「いえ、むしろ助けて頂いているくらいです。それより……」
「その黒コートの人、だよね? 菖蒲ちゃんも見たんだよね~?」
「うんうん! ねぇねが非常階段で助けてくれた時も、駐車場にあの人が居るのが見えたんだよ! そしたら急に上から何かでっかい鉄板みたいなのが落ちてきて、それで階段が崩れたと思ったら元通りになってて~……う~ん?」
「まあ元通り云々はいいじゃない今は。それよりその人だけど、お姉ちゃんも一回だけ会った事あるんだぁ」
「え!? どこで!?」
「任務先でねぇ。遠くにある自販機の裏からこっちに向けて腕を上げてきて、何だろうって思って近づこうとしたら凄いスピードで横から車が走って来たの」
「だ、大丈夫だった!?」
「うん、それは全然大丈夫だったんだよねぇ。ただその後に見てみたら居なくなってて……偶然だと思ってたんだけど、どうも話を聞いてると~……」
どうやら私だけでなく、ねぇねまで狙われているらしい。もしかするとあの黒コートの女性は日奉一族本家筋の人間なのではないだろうか。濃紫が起こしたこの混乱に乗じて分家である私を殺そうとしてきたのではないか。
「ねぇ百。そいつの顔は見たの?」
「ごめんねぇ縁ちゃん~。私にもよく見えなくて……」
「菖蒲も見えなかったんだよね?」
「はい。遠すぎて全然……」
「ですが奇妙ですわね? もし菖蒲さんを狙ったのであれば私に呪線が見えていた筈ですわ。呪線は壁もすり抜けますし」
「じゃあじゃあ呪いじゃない?」
「呪いじゃないとすれば、何らかの超能力の可能性があります。例えば、念動力」
「念動力か~。ねぇねぇ命ちゃん、そう言うって事は念動力が使える人に心当たりがあるの?」
「適当に言ってみただけ。そういうのは如月さんに聞いた方が早い」
「そっか。えーと……もしもし蒐子さん?」
「あーっ日奉さん! 良かったぁ……心配しましたよもう~……」
現在JSCCOのデータバンクに記録されている人物の中に念動力を持った人間は居ないかと蒐子さんに聞いてみたところ、居るには居るものの大きな物を落下させたり動かしたり出来る程の力を持っている人は居ないと答えられた。小さな物を浮遊させたり、スプーンを曲げる程度がほとんどだそうだ。そして事件の最中に蒐子さんに緊急連絡が入ったらしく、どうやら話によると丁度この東雲病院上空を飛んでいた飛行機のスライドパネルが突然破損して落下したため、病院内に居る隊員に退避する様に連絡しろと伝えられたそうだ。
「あのあの、それ連絡来てませんよ?」
「そうなんです! 何回も繋げようとしたのにずっと電波障害が起こっててー……」
ゾクリとする。まさかあの黒コートの人物は私を殺すために、電波通信を妨害し、飛行機のスライドパネルを破壊し、そして私があの非常階段の位置に来る事までも想定していたのではないだろうか。ずっと自分の意思で動いていると思っていたが、全て手の平の上だったのではないだろうか。
「あの……蒐子さん。ちょっとお聞きしたい事があるんですけど」
「はい?」
「黒いコートを着てて、髪が腰の辺りまである女性を見たっていう調査員の人って、居ますか?」
「え? いえ~……特にそういった報告はされてないですねー……。超常性が無ければわざわざ気にもしないと思いますしー……」
「そうですか……」
「あのー、どうかしたんですか?」
「はい。実は……」
私はあの謎の人物がJSCCOのメンバーを狙っている可能性があるとして蒐子さんへと報告した。流石にこう何度も見たとあっては偶然では済まされない。目立つ格好ではあるが、自らの姿を隠す事を得意としている様子であるため全員に情報を共有しておいた方が良いだろう。
全て伝え終えた後、私達は仕事を終えたため別れる事になった。とはいえバラバラに帰るのは危険であるため、まずは賽師匠と縁師匠を事務所まで送り、次に蘇芳さんをJSCCO本部へと送り、その次に命ちゃんを白い雛罌粟が咲き誇る彼女の家へと送り、その後にねぇねと二人でアパートまで戻る事になった。濃紫が命ちゃんに言っていた『裏切り者』という発言が気になりはしたが、今はとても聞けるタイミングでは無かったため、今度仕事がある時に聞く事にした。
「……ごめんねぇ菖蒲ちゃん」
「え? 何が?」
「お姉ちゃんがもっと早くお仕事終わらせてたら、あんな危ない目に遭わせなくて済んだのに……」
「いやいやねぇねのせいじゃないよ。ねぇねも大変だったんでしょ? 気にしないでいいよ」
「……ありがと菖蒲ちゃん」
ねぇねが私の手を握る。
「……紫苑ちゃん、どうかな?」
「しーちゃん? うん、元気だと思うよ。いっつも力使わせてくれるし」
「お姉ちゃんの事……どう言ってた?」
「どうって……別に何とも言ってないよ? しーちゃんってねぇねの事嫌いになるタイプじゃないでしょ。ただまあ、私が死んじゃったらねぇねに顔向け出来ないっていうのは言ってたかな」
「そうだねぇ……紫苑ちゃんは昔から、そういう子、だもんね……」
手を握る力が少し強くなり、汗ばんだ私とねぇねの手の平が触れあった。




