第2話:身丈八尺
真っ暗闇の中でこちらを呼ぶ声が聞こえる。ゆらゆらと体が揺れる感覚がして光が目に差し込んできた。目の前には賽師匠が立っており、朝早くに出なければならない私を起こしてくれたらしかった。
「おはよう菖蒲ちゃん。そろそろ起きなきゃだよ?」
「おはよーございます賽師匠……」
寝ぼけ眼を擦りながらソファーから起き上がると向かい側の椅子では縁師匠が新聞を読んでいた。小学生の様に小柄であるため、上半身のほとんどが新聞で隠れてしまっている。私が起きた事に気が付いたのか机の上に新聞を置く。
「おはよう」
「あ~縁師匠ぉ……おはよーございます……」
「……早く顔洗ったら?」
「はぁい……」
言われた通り顔を洗うために給湯室へと向かうと、冷水を出して顔を洗う。給湯室に置かれていたデジタル時計を見てみると深夜三時であり、かなり早めに起こしてもらった事が分かった。元々あまり朝が得意ではない私からすれば、のんびり朝食を食べられるくらいの余裕がある方が有り難いため、それを察してくれた師匠には感謝だった。
事務所の方へと戻ってみるといつの間にか机の上に朝食が置かれており、鮭や味噌汁という随分豪華な品揃えだった。私が寝惚けて見落としていたのでなければ、先程までそこには無かった筈である。
「あれ、賽師匠どうしたんですかこれ?」
「今日は菖蒲ちゃんの初めてのお仕事でしょ? だからちょっと豪華にしちゃった」
「相手が厄介なコトサマの可能性もあるから。しっかり食べて」
賽師匠はニコニコと笑いながら私を座らせると、私が食べている間に髪を櫛で梳かし始めた。別に自分で出来ないという訳ではないのだが、賽師匠は何故かいつも私の髪を梳いてくれる。賽師匠本人から聞いた話によれば、縁師匠の髪を梳かしているのも彼女らしいのだが真偽は定かではない。縁師匠にはこの話をした事を黙っていて欲しいと頼まれたからである。理由は何となく察せる。縁師匠は少し見栄っ張りなところがあるのだ。私の前では立派に振舞おうとしている様に自分でも感じる。
「ねぇ菖蒲」
「はい?」
「食べながらでいい。昨日あなたが言ってた『八尺様』の事を色々調べてみたんだけど」
「調べてくれたんですか!? ありがとうございます縁師匠!」
「ん……。それで、ちょっと変に感じたところがあって……」
縁師匠が感じた違和感というのは、ズバリ何故私が今回の調査に派遣される事になったのかという点だった。縁師匠の調べによると『八尺様』というのは男性だけをつけ狙う性質があるらしいのだ。あくまでネット上に書かれた真偽不明の体験談からの情報であるため実際は違うかもしれないが、もしそれが事実であるのなら女性である私を派遣するのはおかしいとの事だ。
「逆に女の人には何も出来ないからじゃないかな?」
「どうかな。男を標的にしてるコトサマならそれこそ男のメンバーを送った方が誘き寄せやすいと思うけど」
「えっとえっと、縁師匠ちょっとその書き込み読んでみてもらえますか?」
「ん……」
賽師匠が用意してくれた朝食を摂りながら書き込みの内容を聞いていく。するとある記述が私の中で引っ掛かり、それが縁師匠の疑問を解決する鍵となった。
「そこですよ」
「何が?」
「その書き込みを聞くに『魅入られたらターゲットにされる』って事ですよね」
「ん、まあそうだね」
「という事は逆に言えば、『魅入られてない人間には見えてない』って事なんじゃないですかね? だってだって誰にでも見えてるなら、とっくの昔に日奉一族が封印してますよ。それが出来てないって事は魅入られない限りはこっちからも認識出来ないって事ですもん」
「……それで?」
「ほら、私なら体に亡くなった人の魂を下ろせるじゃないですか。つまり、女性でありながら同時に男性でもいられるって事です」
縁師匠は少しの間考え込んでいたが、やがて私の理論に納得してくれたのか「ん」と小さく頷いた。
「合ってるかどうかは置いといて、菖蒲の考えは分かった。『八尺様』とやらが肉体的な面を見てるのか霊体的な面を見てるのかは分からないけどね」
「凄いね菖蒲ちゃん~! 賢いね~!」
「へへへ……」
正直、先輩である縁師匠がこういった答えを自分で出せなかったのには少し驚きだったが、褒められるのは別に悪くないので素直に喜んでおく。とはいえ油断する訳にはいかない。今まで日奉一族の監視の目を掻い潜っていたコトサマが相手なのだ。ネットの情報と自分の理論だけを妄信するのは危険である。とにかく現場で確認して判断しなければならない。
食事を終えた私は賽師匠が用意してくれていたリュックにちょっとした着替えと弁当を入れると、まだ薄暗い外へと出て行った。私と同じ様に朝早い人々が疎らに歩いている程度で、日が昇っている時間と比べるとかなり静かだった。しかし、昼間と比べて大きく違うのはやはりコトサマの姿が多いという事だろう。今もネズミを追いかける小さな鬼の様なコトサマが走っていった。
「お仕事~?」
「ネズミ、オイダセッテ言われタ!」
「そっかそっか。頑張ってね~」
私に返事を返した彼らはかつて『家鳴り』と呼ばれていたコトサマだ。主に家の天井裏などに住みつき、時折軋む様な音を立てたりするのが彼らの役目である。小柄ですばしっこい彼らからすれば、ネズミを脅かして追い出すというのは朝飯前だろう。
約束の時間10分前に宵野駅に着くと、既にそこには殺月さんの姿があった。昨日と変わらないステッキを背負った妙な格好をしており、いくらコトサマがそこら中を歩いているのが当たり前の世界と言えど少し浮いている印象を受けた。
「おはよう殺月さん!」
「うん」
「早いんだね。もしかして待たせちゃった……?」
「大体20分は待った。別にいいよ時間以内に来たし」
そう言うと殺月さんはつかつかと駅へと入っていく。とにかく関係無い話題で時間を浪費したくないといった様子であり、ホームで待っている間もスマートフォンを使って何やら調べものをしていた。そんな彼女をじっと見ていた事に気が付いたのかこちらを一瞥すると自身のイヤホンをトントンとつついた。
「あっ!」
肝心な物を付け忘れていた事に気が付き急いでリュックから出すとすぐに耳に付けた。幸いまだ無線は繋がってはおらず、蒐子さんからの指示は何も来ていない様子だった。
「ありがとう殺月さん」
「君も今日からJSCCOの調査員なんだからしっかりして」
「ご、ごめんごめん。殺月さんは結構長いの?」
「……プライベートな事を話しても無意味でしょ」
そこまでプライベートな事ではないと思ったが、こういったタイプの人は言わないという態度を一度取ると滅多な事が無い限り話そうとしないため、大人しくそれ以上の詮索はしない事にした。
数分の沈黙の後、駅へと電車が入って来た。早朝のサラリーマンか私達くらいしか乗客は居なかったせいかいつも以上に静かな印象を受けた。そのまま十数分ほど電車に乗っていた私達は、まだ東京都内である『日本時空間管理局前』で下車した。
そこはオカルト技術の発展によって発見された『ポータル』と呼ばれる時空間異常を研究管理している施設である。数は少ないが日本中の様々な場所で発見されており、一般人の利用はまだ許可されておらず私達の様に急を要するコトサマ関連の人間だけが利用を認められている。
「JSCCOの者です。利用の許可を」
「わ、私も同じくです!」
「お話は伺っております。どうぞ中へ」
職員の人に連れられて施設の中へと入ると、普段はあまり見かけない様な機械が置かれた研究室の様な場所へと案内された。そこには人間ドックの際に使われる機械を思わせるドーナツ状の機械があった。そしてそのドーナツ状の空洞部分には奇妙な七色の光を放つ空間が存在していた。
「こ、これが時空間異常ですかぁ……」
「はい。当局で開発されました『重力場固定装置』によってここに安定化させています」
「えっとえっと、ここを通っていくんですよね? これってその……大丈夫なんですか?」
「固定化に成功して以降は問題は特に発生していません」
「そ、それ以前はあったって事ですか!?」
「ごちゃごちゃうるさい。後から新幹線で来るつもり?」
「い、いやそんな事はないけど……」
「じゃあお願いします」
「はい、お気をつけて」
殺月さんは私の手を掴むと無理矢理その『ポータル』の中へと足を踏み入れた。中は外から見えていた通り、どこを見渡しても七色の奇妙な光が蠢いている不思議な空間だった。見ているだけで酔ってしまいそうなドギツイ色であり、そんな場所で私達はふよふよと漂っていた。
数十秒漂っていたその時、突然その空間の中にどこか別の施設のものと思われる景色が映った。すると私達は引力の様なものに引っ張られてその景色へと吸い寄せられた。一瞬目の前が眩しく光ったかと思うと一緒になって別の『ポータル』前に放り出される。
「あ痛ぁ!?」
機械を操作していた初対面の職員がこちらに駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか?」
「いたたた……何とか大丈夫そうです……あはは、初めてだったんで恥ずかしいところ見せちゃいましたね……」
「…………ねぇ」
私の腹の下から不機嫌そうな声が聞こえる。殺月さんは私の下敷きになっていた。
「あっ! ご、ごめん! 大丈夫!?」
「…………これが大丈夫に見えるなら人生幸せそうだね、悩みごととか無さそう……」
殺月さんは服の汚れを落とす様に叩きながら立ち上がると、職員へとお辞儀をして施設の出口へと向かい始めた。それに倣う様に頭を下げると急いで後を追う。
「ごめんね殺月さん……別にわざとじゃないんだよ?」
「別に怒ってない」
「え~……怒ってるよ絶対……」
「怒ってない」
「いやいやでも――」
「お・こ・って・な・い 」
彼女が嘘をついているのはすぐに分かった。分かりやすいからというのもあるが、私と殺月さんには似た所があるからだ。恐らく他の人では気付けないだろう。これは当事者である私だから分かる。この人と私は根本の部分が凄く似ているのだ。
二人で施設の外へと出てみるとそこはどこかの山奥と思しき場所だった。バス停に座りながらスマートフォンを見てみると時間の表示が一気に変わった。普通は順番に変わっていく筈の数字が一気に変化したのだ。
「あれ……」
「故障じゃない。『ポータル』は時空間異常……固定するためにはさっき見た重力場固定装置が必要になる。磁場が少し乱れてただけだよ」
殺月さん曰く、ここ数年の研究によって重力というのは別の次元でも同じ様に作用しているのではないかという予測がされたらしい。しかし『ポータル』は時空間の歪みによって発生しているらしいので重力の影響から外れやすいそうだ。だからこそ、ああいった機械を使って固定化しなければならない。そうしなければ何が起こるか予測出来ないらしい。
少し待っているとバスが到着し、それに乗り込むと事件が起きたという現場へと向かった。思っていた以上に山奥だったせいか到着するまでに一時間も掛かり、降りた時には臀部が少し痛くなっていた。
「はぁ~やっと着いたね殺月さん~……お尻痛くなかった?」
「気の抜けた声出さない。ここからは現場なんだから気を引き締めて」
「そ、そうだねそうだね。ごめんごめん……!」
少しだけ雰囲気を和らげようと放った質問が簡単に切り落とされてしまい、相変わらず緊張した雰囲気を放つ殺月さんと共に歩き始めた。
現場となったこの小岳村は人口三桁というそこまで大きくない村であり、今までコトサマと遭遇したという事例は確認されていなかった。つまり今回の『八尺様』が初めてという事になる。しかし、その部分が個人的に少し引っ掛かっていた。今まで日奉一族の監視にも引っ掛からなかった『八尺様』が突然コトサマ関連の事例が無かったこの村に現れたのは奇妙である。まるで突然この場所から湧いて出て来たかの様な違和感だった。
途中何度か村人達と遭遇したが、離れた所からこちらを見ている者ばかりであり、普段見かけない人間である私達を訝しんでいる様に見えた。そしてそんな中、無線が入る。
「あーあー聞こえますかー?」
「聞こえますよ蒐子さん。おはようございます」
「日奉さんおはようございます。殺月さんも居られます?」
「居るよ。随分重役出勤なんだね」
「いやー一応お二人が着くであろう時間を計算してですねー……」
「別にいい。仕事始めるよ」
「あ、はい」
遺体が発見されたという交番へと到着すると早速殺月さんは現場の調査を開始した。現場は既に鑑識を終えて綺麗にされていたが、それはあくまで科学的な調査であり自分達に期待されているのはオカルト的な調査である。
殺月さんはスマートフォンを開くと遺体があった場所をマーキングしてある写真を見ながら、同じ角度から交番内部を見始めた。
「被害者はそこの床に横向きに倒れてた。鑑識は椅子から落ちるみたいに倒れたんじゃないかと推測してる」
「それじゃあそれじゃあ、即死じゃないね」
「……どうして言い切れるの?」
「だって即死ならもっとこう……パタンって前に倒れたり椅子にもたれるみたいにならないかな? 苦しくなってもがこうとして倒れたんじゃないかなって」
「……如月さん、どうなの?」
「えーとはい、日奉さんの仰る通りで、確かに被害者がもがいた形跡があったんです」
蒐子さんの手元にある資料によると被害者である鹽田守さんの遺体の側には湯飲みが落ちていたらしい。机上と床にはお茶をこぼした痕跡が残っており、恐らく突発的な苦痛にもがいた鹽田さんが腕をぶつけてしまったのではないかとの事だった。
「それは確かなの? 本当に被害者本人が倒したって言える?」
「えーとえーと……痛っ……はい。物理シミュレーションでもJSCCOの奇跡論技術でも間違いないらしいです。呪殺なのは間違いなくて他の誰かが湯飲みを倒した可能性は、あっても小数点以下だと……」
「確かに呪殺っぽいですね。ちょっとだけど妖気が残ってるし……」
「そこについてはあたしも同意。ただ、呪い殺すのが目的なら何で即死させなかった……?」
殺月さんは結んでいる髪の一つを右手で弄り始めた。彼女一人で憶測で考えても意味が無いと考えた私は、自分がここに呼ばれた本当の理由であろうアレを実行する事にした。
手首の付け根、そして中指の先端同士を引っ付けて少し手首を逸らせる事で花を思わせる形を作った。これはいつも私が降霊を行う時にやるポーズであり、一種のスイッチの役割を持っていた。本来であれば何の予備動作もなく出来るのだが、能力をコントロールしなければならないためこうしてスイッチとなる形を作ったのだ。私はこれを『不死花』と呼んでいる。
「……君、何やってるの?」
「何か起きてるんですか殺月さん?」
「日奉さんが変なポーズしてる」
「静かに…………来そう来そう来そう……」
体にフッと何かが入り込む感覚がある。これは降霊が成功した時特有の感覚である。私の降霊は相手の魂の表面に存在している僅かな凹凸に合致する様に自らの魂の表面を変形させる事で成功する。これは賽師匠と縁師匠の協力によって確立させた方法であり、理論的にこれが出来るのは私だけらしい。魂に触る事で相手の記憶を見たり譲渡したり出来る賽師匠はこれを無意識に行っていたらしい。もっとも今もそうらしく、魂を明確な自分の意思で変形させるのは相当難しいらしい。つまり賽師匠はそれを無意識下で実行出来る本物の天才という事だ。
「日奉さん……?」
「き、来た来た……この人は……昔、昔この村で亡くなった……男の子だね……」
「もしかして君が言ってた……」
「うん。今、男の子の霊を降ろした。この子に協力してもらおう」
自分に小さな少年が引っ付いている状態で交番の外に一歩出る。
「協力って、どうするつもり」
「私の師匠の見解によると『八尺様』は男性だけを狙ってるらしいんだ」
「それはあたしも気になった。……まさか囮にするつもり?」
「言い方はちょっとちょっとアレだけど、分かりやすく言うとそうだね」
こんな言い方は良くないのかもしれないが、死者と生者では扱いの重さが明確に違う。一度死亡している人間が再び何らかの被害に遭おうと基本的に気づかれない。もちろんそんな事にならない様に確保手段は考えているが、必要であれば瞬時に囮として切り離す事は念頭に置いている。相手は謎の多いコトサマなのだ。自分の命を最優先に行動しなければならない。下手に気を遣って動いた結果、却って被害が増えたとあっては目も当てられない。
「如月さん、こんな事許されるの……?」
「オ……ワタクシはオペレーターなのでそういった事を聞かれても……。それしか方法が無いなら……」
「死んだ人間には何してもいいって訳? 君おかしいんじゃないの? 仕事とはいえやっていい事と悪い事がある」
「……意外だよ。私的には殺月さんこそこういう事やるタイプだと思ってたから」
私の中で感じていた彼女への親近感が少し揺らいだ。まだ出会って二日目だが、この人は仕事のためならどんな決断でも下せるクールなリアリストだと思っていた。効率的に行動し必要ならば犠牲も払う、尊厳すらも汚せる。そんな人だと思っていた。
しかし違った。この人は意外と……私の外面と似ているタイプだ。
「……最低だよ君」
「そうかもしれないね……でもでも殺月さん言ってたでしょ。これはお仕事なんだよ……手段は選んじゃいけない。被害を抑えるためには」
「だからって――」
その時だった。殺月さんの言葉を遮る様に奇妙な声が聞こえてきた。いや、声と言って本当にいいのだろうか。機械的とも言える奇妙な音だった。どことなく男性的な声でありながら、僅かに女性らしさも感じさせる。
「ぽ、ぽ、ぽぽぽ、ぽぽ、ぽぽぽぽぽ」
「……蒐子さん。ノイズとかじゃないよね?」
「え、痛っ!? な、何がですかぁ……?」
「日奉さん、構えて。……来たよ」
どうやらこの音が聞こえているのは自分と殺月さんだけらしく、蒐子さんは何の話をしているのかさっぱりといった様子だった。殺月さんと背中合わせになりながら警戒する。
「ぽぽぽぽ、ぽ、ぽ」
「見えた?」
「まだ見えてないよ。でも間違いなく誘き寄せられた」
周囲を見渡しながら交番へと目を向けたその時、私の目についにその姿が飛び込んできた。一体いつの間に入ったのか交番内には身長二メートルを超える女性の姿があった。その身長は交番入り口の高さを超えており、そのせいで顔は見えなかった。
「殺月さん……」
「何?」
「交番の方……」
ついに殺月さんの目にも映ったらしく一瞬驚いた様な顔をしていたが、彼女はすぐに行動に移った。背中に背負っていたステッキを取り出すと、肩に巻いているベルトに貼られていたお札を一枚剥がし、それをステッキの持ち手に貼り付けた。すると持ち手より先の部分が光り始め、その光はまるで鞭の様にしなった。
「日奉さん、君はサポート。いい?」
「危なくなったら助けるね」
「心配無用」
「そ、遭遇したんですか!? えーとえーといったぁ!? うぅ……8時24分、対象と遭遇……」
『八尺様』が身を屈めて外へと出ようとする。
「ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ」
殺月さんの体は弾かれる様に前方へと飛び出した。
「ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ」
まるで警告音の様に不気味な声が響き始めた。




