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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

『深夜のお茶会』

作者: Zimmer Volkovsky

自身の創作のスラム育ちでお兄さん気質のジャッカルとそれとは真反対な弟気質の坊ちゃんであるオスカーとのある夜のお話について書きました。


[The Strange Menシリーズ]

https://www.uchinokomato.me/episodes/5126


[ジャッカルのプロフィール]

https://www.uchinokomato.me/chara/show/205276


[オスカーのプロフィール]

https://www.uchinokomato.me/chara/show/204115


※TSMストーリー内容やキャラクター説明を読まなくてもこの小説は読めます。


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感想やコメント等は気軽にお願いします✨


[作者のTwitter]

@Lazyboy_vol22


[創作アカウント]

@Volkovsky_22

_____ナバイア・ロペス。人を殺しておいてよく楽しそうに生きていられるのね?貴方が少年兵として英雄気取りをしていた時、殺された兵士達は何を思ったと思う?スラムにいた時とは違って随分と幸せそうな生活をしているのね。


『違うよ母さん!生きるためには仕方なかったんだ…。俺には戦うしかなかったんだ!!』


目を細めてジャックを睨みつける母親。冷たい視線は小さい頃に頭を撫でてくれた優しい母の面影を感じさせなかった。


_____自分が生きるために人を殺しても許されるの?それってとてもエゴじゃない?自分の為に他人を振り回して人生をめちゃくちゃにする。貴方は殺人鬼と一緒。


『でも』


_____でも、じゃない。貴方がこれからの人生をどれだけ人に優しくしたって殺した事実に変わりはしないのよ。


『放って置いてよ!!!!!』


ジャックは体を思いっきり起こす。酷い夢だった。いや、夢でよかったのだろうか。

夏の終わりの涼しくなった季節にパンツ1枚という少し寒い格好をしているのにも関わらず全身に汗をかいていた。


隣でスースーと小さく寝息を立てながら幸せそうに眠る恋人を起こさぬようにベッドから降り、床に乱暴に脱ぎ捨てられたパジャマを羽織ってキッチンへ向かう。

給湯器に冷蔵庫から取り出した水を注ぎスイッチをONにした。コーヒーを飲めば落ち着くはずだとジャックは考えていた。


_____貴方は殺人鬼と一緒。


母親の声が頭の中で木霊する。


『母さんはそんな事を言う人じゃないっ…。』


ジャックはキッチンの隅に座り込み声を殺して涙が零れるのを我慢する。

殺人鬼と同じ。戦争の中だとしても自分が人を殺したことは紛れも無い真実だ。否定などできない。


当時ジャックはスラム街に住んでいた。父親は彼の小さい頃に軍人として戦いに行き、母親は病で働きにいくことが出来ずとても貧しかった。父親が帰ってくることを祈っていたが戦争が終わっても彼が帰ってくることはなかった。同い年の子達が学校へ通う中、ジャックは商人から物を盗み病気の母の世話をしながら今日を生きるのに必死だった。

必死だったもの病院で治療することが出来なかった母は亡くなり、ジャックの悪い噂も段々と広まっていった。自分が食べることすら難しくなっていた彼は安い金で自分の身体を売るしか無いと考え始めた。


その時に死にかけていた自分を救ってくれたのが今では彼の継父であるジャクソンだった。高い身体能力を買われたジャックは少年兵として軍に入隊し、新しい家では子供のできなかった継母が実の子の用にジャックを可愛がった。


そして戦場で活躍した彼はその名誉を称えられ最年少ながら胸には沢山の勲章が与えられた。ジャックは複雑な気持ちだった。沢山の人を殺して手に入れた称号は果たして人に誇れるものなのだろうか、と。


『ダーリン大丈夫?お湯湧いとるよ。』


給湯器がけたたましく部屋に鳴り響いていたことにジャックは気が付かなかった。どうやらオスカーはその音で起きてしまったらしい。


『お…おう、坊ちゃん。すまねぇ起こしちまったか。大丈夫だ、ちょっと何か飲みたくてな。』


給湯器のスイッチを切りながら笑って見せるがオスカーはため息をついた。


『お湯が湧いても気が付かん、俺のパジャマを羽織っとる、それも作り笑いやろ?俺はお前が大丈夫には見えへんけど…。』


お揃いのパジャマだが一回り小さいサイズのパジャマを着ていたことにジャックは気が付かなかった。オスカーは少し腕にゆとりのある自分のパジャマを羽織っていた。


『ちょっと寝れなかっただけ。』


コーヒーにお湯を注ごうとするとオスカーはジャックの手を止めた。


『寝れへんならコーヒーはだめや。紅茶の方がカフェイン少ないやろ。俺がやるから座っといてええよ。』


嫌々ダイニングの椅子に座らせられると、オスカーはマグカップにティーパックとお湯を注ぎ入れ、正面に座った。


『何があったん?嫌な夢でも見たんか?』


澄んだ瞳だった。

まるで自分の事のように心を痛め、真っ直ぐな視線を向ける恋人に我慢ができなくなりジャックは思わず泣きそうになる。


『人を殺しておいて俺に幸せに生きる権利はあんのだろうか、と思うことがある。罪を償う必要が俺にもあんじゃねぇかなって。』


『罪を償う?どうやって?』


『わかんない…。』


ジャックを見つめていたオスカーは段々と赤茶に染まっていくマグカップの中に目を落とし「最悪な事は考えたらあかんよ。ジャックが居らんと俺が寂しくなるからな。」と弱々しく呟いた。


「大丈夫、俺はオスカーから離れたりはしない。」と頬を優しく撫でると青みがかった灰色の瞳をこちらに向け、少し微笑んだ。


『いつも俺に言ってくれるやろ、「過去にとらわれるな」って。…それはお前自身にも言えることやな。貧富の差が激しいのも国が戦争しとんのも全部世の中のせいや。自分だけの問題やと勘違いして1人で抱え込む必要も無い。お前がすべきことは死んだ人の分まで楽しく生きる事やないかな、…ナバイア。』


いつもはジャックとしか呼ばないのにナバイアと呼ばれると亡くなった優しい母を思い出して涙が零れそうになる。顔を隠すためにマグカップに手を伸ばすが思いっきり紅茶を口に含んだので舌を火傷してしまった。


『あっつ!』


『動揺しすぎや。そうやって誰にだって強がるからしんどくなるんやで。…俺やってお前の恋人なんやからしんどい時は頼ってくれればええのに…。』


段々と声量が小さくなり恥ずかしそうに目を逸らすオスカーに恋人から頼られたいという思いを初めて聞いたジャックはとても嬉しくなりオスカーのおでこにキスをした。



夜中の3時がまわった頃彼らは大きなベッドで小さく抱き合うように眠っていた。

オスカーに心音を聞かれるようにぴったりとくっつかれたジャックは昨日の夜よりもずっと安心して眠っているように見えた。

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