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道具しか召喚できないスキルの俺が、スキル進化で確定ガチャになったとたん世界最強になりました  作者: 紫 和春


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第46話 戦間

 休息を取った次の日、クリスはホーネット中隊の補給や整備を行った。

 今回の戦いでは弾薬の消耗が激しく、M4カービンとM2重機関銃の弾薬が底を尽きかけており、30mm重機関砲に至っては弾薬が欠乏する事態に陥っている。

 考えてみれば、先の戦闘では常に射撃を行っていた。

 そのため予備に取っておいた弾薬も使う羽目になったと考えられる。

 そしてそれ以上に損傷が激しかったのが、SUS-8小隊の損害だ。

 今回の戦闘で、SUS-8小隊の使用しているSUS-8はすべてが何かしらの損傷を受けている。

 しかも損傷は、軽いものでも修復不可能なほどのフレームの歪み、重いものでは四肢断裂といった具合に、どの機体も動くことすら困難な状態にある。

 クリスは一度は破棄することも考えたが、放棄するのもまた面倒だ。

 そこでクリスは、これを直すために専用の大型自動修復コンテナを召喚した。

 見た目はガレージのようなもので、そこにSUS-8を寝かせた状態で搬入する。

 あとは材料を補充すれば、自動で修復が始まるという寸法だ。

 これを数時間も放置しておけば、完全に修復した状態で出てくる。

 そんな中、クリスの元に一通の手紙が来た。

 差出人はパットン調査団の生物学者だ。

 クリスは中身を確認する。

 その内容は疑似進化生体群に関する新たな情報であった。


『疑似進化生体群はテレパシーのようなものを使って下位の世代に命令していることが分かった。これによって疑似進化生体群は迅速に命令を遂行することが可能らしい。現状、このテレパシーを防ぐ方法はないが、何かしらの手段があると睨んでいる。あとは第三世代型以上の魔物を確保して詳しく解析するだけだ』


 クリスは第四世代型の魔人を確保できなかったことを後悔する。

 その代わり、クリスは手紙を送り返すことにした。

 内容は第四世代型である通称魔人のこと、その知性とコミュニケーションが可能なこと、高い身体機能を持ち合わせていることである。

 その手紙をフェンネルに送り返した。

 クリスは、この情報によって少しでも疑似進化生体群について分かればよいと祈る。

 それから数日。

 シェイン要塞にオードー帝国総軍司令部から命令が届く。


『魔王軍の前線からの撤退、および本拠点を確認した。これに乗じて前線の一部を魔王軍占領内地まで押し込み、一気に魔王軍の本拠地を叩く電撃作戦を決行する。なお、この作戦にはホーネット中隊の中隊長の戦力が必要不可欠である。また、本作戦も戦力増強のため冒険者を同行させることを要請する』


 クリスは総軍司令部から指名されてしまう。

 仕方のないこととはいえ、期待されているのは間違いない。

 早速クリスは冒険者に招集をかける。

 またホーネット中隊のSUS-8の修理を急がせ、出発前には準備を整えた。

 こうして再び連合国軍が前線に向かうことになる。

 一方。

 魔王軍占領地南方部に、魔王軍の本拠地であり魔王のいる魔王城がそびえたっていた。

 いかにも急増品であり不格好ながらも、しっかりと城の役割を果たすべく強固な外壁を備えている。

 そんな魔王城の塔の一角、小さめの会議室のような場所にある円卓に、魔人たちが座っていた。

 そこに魔王が入ってくる。

 魔王が円卓の一席に座った。


「さて、話があるというのは何か?」


 魔王が魔人に問う。


「はい。先のシェイン要塞への侵攻でしたが、失敗に終わりました」

「その話は聞いている」

「その際、我々は敵のことを見誤っていたのではないかという問題が浮上してきます」

「どういうことだ?」


 魔王は発言した魔人に尋ねる。


「まず、人間そのものの攻撃力、対抗力はこれまで考えられてきたものより大幅に上方修正するべきと考えます」

「実際に、先の侵攻では魔物の消耗が激しく、想像以上に人間が魔物と張り合っていることを示しています」

「それは侵攻を指揮していたモノが誤って行動したものではないのか?」

「確かにその可能性は否定できません」

「しかし純粋に戦闘能力を見比べたとしても、人間は我々の持つ魔物と近いことは留意すべき点です」


 魔王はわずかだが、眉間にしわを寄せる。


「ですが、問題はこれだけではありません」

「まだ何かあるのか」

「これが重要かもしれません」

「先の侵攻において、正体不明の飛行物体の話はお聞きになったでしょう」

「あぁ、ドラゴンを超える飛行能力を持っているとのことだったな」

「それが懸念材料になりうるかもしれないのです」

「事実、あの飛行物体により我々のドラゴンは殲滅されました」

「その攻撃はまるで異国の魔法のようでもありましたわ」

「これはある種の脅威です」


 魔王は次第に機嫌が悪くなる。


「そのため、早急に対策を講じる必要があると考えます」

「……それは必要なことか?」

「はい?」


 魔王の言葉に、魔人は思わず聞き返す。


「それは我が出る必要のあるものか?」

「魔王様、これは私たちが現場で感じたことです」

「いや、我の創った魔物はそんな軟弱にはできていない」

「ですが魔王様……」

「黙れ!」


 魔王は激怒した。


「我の創ったものがそんなに信用できないか!貴様らも我に創られた分際で口答えをするな!」


 そういって魔王は部屋から出て行ってしまう。

 そして魔王が向かったのは、地下にある魔物培養場であった。

 ここではあらゆる魔物が一括に培養されている。

 魔王は培養水槽の一つに手を添えた。

 ここで育っている魔物は皆、魔王の子供のようなものである。

 そんな魔物を、魔王は愛おしそうに眺めた。

 そこにテレパシーで報告が飛んでくる。


『魔王様!人間の軍勢が攻めてきています!』

「ふん。人間の力、我が直に見定めてやろう」


 そうして魔王が外に出ると、そこにあったのは見たことない何かが魔王城に向けて飛んできている光景だった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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