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第1話 スキル習得

 この世界には「スキル」というものが存在する。

 それは、冒険者が必ず身に着けている能力であり、個人の力を飛躍的に向上させることができる代物である。

 そんなスキルは、冒険者を希望する者が誰しも最初から持っているわけではない。王都に鎮座する大神殿にて、「スキル習得の儀」を執り行われなければ、冒険者として認められないのである。

 そんな「スキル習得の儀」に参加しようとする一人の男の物語である……。




 その男の名はクリス・ホーネット。16歳だ。

 叔父が冒険者をやっていることに憧れて、自身も冒険者に身を投じようと考えていた。

 冒険者学校も無事卒業し、王都にある大神殿へと足を運んでいる。


「ここが王都かぁ……。俺の故郷とは全く別だ」


 片道3日程の所にある彼の故郷からすれば、王都の賑わいは非常に大きいものと言えるだろう。

 だが、今は観光などしている暇はない。すぐにでも大神殿に向かい、スキルの習得を行わないといけないのだ。


「えぇと……。大神殿に向かうには、この通りを東に行くのか」


 片手に持った地図を参考に、クリスは少し道に迷ったものの、無事に大神殿へと到着することが出来た。

 大神殿は、通常の祈りはもちろんのこと、冒険者の憩いの場ともなっている。併設されている酒場では、冒険者への依頼の張り紙がされていたり、簡易宿泊所なども設置されているのだ。

 そんな大神殿の奥、冒険者になりたての人々が集う、神聖なる場所がある。

 それが、スキル習得の儀の場所となる「神の御前」だ。

 ここで、神に自分が勇敢なる冒険者となり、その身を人々のために使うことを宣言することで、スキルを習得することができる。

 その様子は一般に公開されており、時々とんでもないスキルを習得するものが現れるのを見届けようとする物好きがいたりするのだ。

 クリスは、自分の順番を待ちつつ、そのスキルの習得の様子を眺めていた。


「……唯一神ベゼルよ、この者は自身の身を人々のために使おうとする者。そのための力を今授けんとす……」


 神官が口上を唱えると、天井のステンドグラスから一筋の光が零れ、これが祈りを捧げている冒険者の卵に降りかかる。

 こうしてスキルの習得がなされるのだ。

 そんな中、列の後方からざわめきが走る。


「おい、ステファン・ドラゴニクだ」


 その聞き覚えのある名前を聞いて、クリスは振り向く。

 そのには絶世の美男子がいた。

 彼はステファン・ドラゴニク。クリスと同期の冒険者学校を主席で卒業した天才である。しかもその上美形だ。

 そんなステファンが、スキルの習得に来たのだ。慣習は注目しないわけにはいかないだろう。

 ステファンは身をかがめ、神に祈りを捧げる。


「……唯一神ベゼルよ、この者は自身の身を人々のために使おうとする者。そのための力を今授けんとす……」


 神官が口上を述べると、一筋の光がステファンに降り注ぐ。

 そしてその光は一瞬まばゆく光輝いた。

 その瞬間、彼を見守っていた観衆は大いに湧きあがる。


「い、今のは……!」


 それは初めて見るクリスでも知っているものだ。

 冒険者にとって、使い勝手が良く、強いスキルというものが求められている。その中でも、スキル習得の儀の際に一瞬光輝く現象を得たものは、先のようなスキルを得られたという証拠でもあるのだ。

 早速ステファンは自分のスキルを確認する。


「……私は『万物の創造』のスキルを手に入れた!私とともに歩みたいものは名乗りでよ!」


 ステファンはそう高らかに宣言した。

 万物の創造。スキルの名前から、それはこの世に存在するどんな物でも創り出す事が可能になるであろう能力だ。


「いいなぁ、俺もあんなスキルが欲しいなぁ」


 クリスはそう呟く。

 だが、実際にどんなものが手に入るか分からない。

 そしてクリスの出番がやってきた。


「……唯一神ベゼルよ、この者は自身の身を人々のために使おうとする者。そのための力を今授けんとする……」


 神官の口上のあと、一筋の光がクリスに降り注ぐ。

 すると、ほんの一瞬だけ光輝いたように見えた。だが、ステファンのように、誰もが確認できる程の間輝いていたわけではなかったため、観衆はザワザワとしている。

 そんな観衆の騒音とは別に、クリスは自分のスキルを確認した。

 そこにはただ、「召喚」とだけあった。


「『召喚』?一体どんなスキルなんだろう?」


 早速、クリスはスキルの確認を行うため、王都の南にある草原へと出向いた。


「よし、やるか……。『召喚』!」


 空中に魔法陣が描かれ、それが激しく回転する。数秒ののち、激しく光輝いたと思うと、何か鈍い音を立てて魔法陣は消え去った。

 クリスが魔法陣のあった場所を確認すると、そこには、若干錆びついた鋼の剣が落ちているだけであった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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