07
「リル、手をだせ。」
リルはすぐに理解してくれたのか、短剣を手にもち、刃を握った。
「ごめんな。」
「ありがとう。」
ほぼ同時に二人は呟いた。
オレはリルの手の傷口を自分の口に近づける。そして噛みついた。『血よ、オレに戻れ』と、思いながら。
途端に、白い霧のようなものが現れ、リルを包み込んだ。
「あぁ、折角の実験体が。まあ、主であるヤツがいれば実験はつづけられるでしょう。捕まえなさい!」
ジェイファが指示をだしたが、人形は動かなかった。
「む、これは面倒ですね。私はあまり体術は得意ではないのですが。」
そう言って腰にさげていた杖を引き抜いた。
「魔法では、手加減が難しいかもしれませんねぇ。まあ、仕方がありません。どうせ、不死なのですから少しくらい体が欠けても問題はないでしょう。」
ジェイファは呪文を唱えだした。
オレは、逃げ隠れることしかしてこなかった。対抗手段などない。ただ、やられるわけにはいかない。
リルに背負わしてしまった罪を少しでも、晴らしたかった。
「うぉぉぉぉ!」
オレはすごい力があるわけでもない。オレはたぶんきっと吹っ飛ばされて捕らえられ終わりのない世界に閉じ込められるだろう。
だが、それでも!
勢いをつけて、ジェイファへと突っ込む。
「炎爆発」
ジェイファの詠唱が完了し、目の前で爆発が起きた。
すごい衝撃にオレは吹き飛ばされた。
近くの木にぶつかり、背中を強くうった。
「ぐぅ・・・。」
痛みでその場から動けなくなった。
「首輪がないあなたは逃げられると面倒ですね。足くらいはなくなった方がいいかもですね。」
まるで氷を感じさる冷酷な笑みを浮かべ、ジェイファが次なる詠唱をはじめた。
ごめんな。リル、オレの血が招いたことに巻き込んでしまって。
捕まったら、またリルのような人間を作ってしまうんだろうか。
「火炎球」
ジェイファの杖の先に炎の球が現れ、オレにむかって飛んできた。
ぎゅっと目を閉じ、被弾するのを待っていたその時。オレの目の前に誰かが立った。同時にジワュッと何かが消失するような音がした。
「遅いわ、まったく。我を百年もねむらせおって!!」
落ち着いた大人の女の声が頭上からかけられる。炎の球が飛んでくる気配はない。
「・・・誰だ?」
オレは目を開けて目の前にに立つ女を確認する。さらりと長い金髪と見覚えのある顔立ち。だが、身長は知っている高さではない。そう、リルを大人にしたらこんな感じなのだろう。
「リ・・・ル?」
「我が名はリレィン。リレィン・エンシェントブラッド。エンシェントブラッドの王だ!」
仁王立ちでリレィンと名乗った女はニヤリと笑った。
オレはそれを呆然と見ていた。




