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日陰者の独白  作者: ととろ
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昼ごはん

戦国時代、かの有名な織田信長が合戦に向かうため軍勢を率いて領内中を通過中の話

畑のわきを行軍していると、農夫がそれに気づ気もせず、のんびりと居眠りをしていた。

家臣のひとりが「殿が出陣というのにのんきに居眠りをしているとは、無礼なやつ!叩き斬りましょう!」といきりたてた。

そんな家臣に信長はこう言った。

「よいよい。わしはこうして皆が平穏に暮らせるように日々戦っておるのじゃ」

信長は自分に歯向かうものに対しては容赦がなかった。逆に自分に忠誠を示していれば特に何もしなかった、という。


時は経て現代。

大学の授業で居眠りをする奴がいた。それは僕だ。大した授業でもなく、ただ出席して、出された課題を期限内に提出していれば特に授業中に居眠りをしていてもお咎めはない。僕は出席はしてるし、課題もちゃんと提出はしている。現代の織田信長、とはだいぶイメージが違うこの教授の授業は、聞いているだけでまるで子守唄のように聞こえてしまう。この教授も年配のご老人で、生徒が寝ていてもいちいち咎めるような労力も持たないのだろう。温和な雰囲気から一部では、お爺ちゃん、と生徒から親しまれている。

そのお爺ちゃんが今の僕のゼミの先生だったりする。


チャイムと共に教室から人がどっと出ていく。

「ん~、よく寝た…!」

授業中寝ていても親切に黒板にほとんど書いてくれている。おまけに課題の内容と期日も書いてあったりする。

「昼休みか…。」

僕は黒板の内容をノートに書きつつ昼ごはんを食べることにした。

僕が通う大学のキャンパスはまあまあ広い。今僕がいる教室は中教室で他に大教室、小教室と別れている。中庭とグラウンドと、他に陸上競技場が備わっていて運動部やサークルなんかが活動してたりする。

もともとそんなに知名度がなかった大学だったが、なんかの遺跡の発掘調査で新発見があったみたいで、それが大々的にメディアに取り上げられたことで一気に知名度が上がってしまった。

おかげでキャンパス内にはどこかの国の外人が歩いていたり、日本語じゃない言葉が聞こえたりもする。

僕はキャンパス内をうろうろするタイプではなく、だいたい決まった行動範囲がある。今もその範囲内。

昼ごはんは最初の内は学食で食べてはいたがどうも性にあわず、その次に中庭のベンチや芝生で食べようともした、がこれも断念。周りの目が気になってしまい、実際はそんなことはないだろうが、リア充の笑い声が聞こえてきそうで好奇の目線やそれらに耐えられなくなって去った。それに今の季節寒いし。

昼休みはみんな(リア充してる大部分の生徒)は学食で食べるかしてるので、教室は誰もいなくて空いてるんじゃないか、そう思って空き教室を実際使ってみたら凄い心地が良いことに気がついた。静かだし人もいないし、広い空間に一人っていうのも案外悪くないなと思ったりした。

昼ごはんを食べながらスマートフォンで音楽を聴く。最近はもっぱらヒーリング系の音楽だ。落ち着く。

ついでにLINEを開いてみる。個人LINEは通知があるわけなく(友達いないしな)、広告の通知ばかり。その中で一つだけ今も息をしているのが、ゼミのグループLINEだ。僕はROM専ってやつでグループの会話には参加しない。

それでも続けているのは、たまにゼミの情報が流れてくるので、あまりゼミのみんなと話したりしない僕にとっては重宝している存在である。

『今日のお爺ちゃんの授業も眠たかった』

『それわかる』

『テラねむす』

『わたし好きだけどなー』

『そういやお爺ちゃんには家族がいないってほんと?』

『それほんと?』

『やべーな、家族割つかえないじゃん!』

『そういう問題か??』

『今日の放課後お爺ちゃんの研究室行かない?』

『お爺ちゃんの研究室しゅーごー!!』

『おれ用事が……』

『あんたは急病っていって用事を休むんでしょ?確定だから』

『まじリスペクトだ…だれも逆らえない……』

……

とまぁグループLINEを見ていたら爺さんの研究室に放課後行かなくちゃならなくなった!

僕がいなくてもバレやしないと思うが、ゼミみんなが行っていて一人欠けてるとなぁ…しかもアカネさんにはこないだ会ってるし。

「どうしても行かなきゃ行けないかぁ…」

爺さんに会っとくか…一応ゼミでお世話になってるしな…。


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