初心者だけど始めていいですか?2
2.1年生の夏しあわせ?
6限の授業とホームルームが終わりテクテクと部室までの道を歩いていた。
部室に着くと少し世間話をしてから野球着に着替えてまた世間話をして練習が始まる。新入部員は俺を合わせて4人、初心者は俺だけだ。まぁ高校入ってから新しいスポーツ始めるほうが珍しいくらいだ。
体操・ランニング・アップから始まりキャッチボール。俺はしっかりボールを取ることも遠くに速く投げることもままならない。次にペッパーなのだがこれも大変。何回も空振りが続く。その後はノックやバッティングなどをやる。そんな練習が数日間続いた。動きが少しずつ形になってきた頃ある投球ホームに憧れを持った。アンダースローとサイドスローだ。普通ではない投げ方は気になって仕方がない。練習でのキャッチボールでサイドスローを繰り返していくうちに変な癖がついてしまった。
ワンバウンド送球が全く跳ねない。遠投ができない。オーバースローで投げているつもりがサイドスローになっている。これはまずいとは思ったがついてしまった癖は仕方がないと放置しておいた。
日々は過ぎて行き7月の後半夏の大会が近づいていた、というより大会初戦当日だった。雨が降っているのに熱い、ジメジメしている。グラウンドコンディションは特別悪いわけではない。むしろ丁度良いぐらいだった。
(まぁ初心者の俺が試合に出るわけないからグラウンドコンディション気にしても意味ないんだけどね。)そう思いながら試合の準備を進める。
相手は志木高揚高校。普段の練習通りに動ければ勝てる相手だ。
整列し礼をして守備位置につき球審の『プレイ!』の一言で試合が始まり投手のワインドアップと同時にサイレンが球場に鳴り響いた。
試合は思っていたよりもスムーズに進んだ。
うちがヒットでつなぎ長打で3点が入る。それに対して相手は三振、内野ゴロ、外野フライが続く。
ヒットは出ない。先輩の投球は雨の中『シュルシュルーバシン!』とミットに収まるまで恐ろしい音を立てていた。ベンチにいても聞こえてくる。
(いや〜怖いなこれ)そんなことを思いながらも試合は進み結果は4対0のノーヒットノーラン!
『すご!先輩すご!』試合後先輩にはそれしか言えなかった。そんなこんなで勝ち上がって行き決勝戦まで来てしまった。
相手は伊那商業高校。うちの高校とずっと上位争いをしている高校だ。整列と礼が終わり試合が始まる。
試合は嫌な展開が続いた。先取点は埼玉第一の1年生の野面がタイムリーヒット、次の回3年生の能村先輩が三塁打その後ワイルドピッチで追加点が入る。だが後の回はヒットが出ても四球が出ても追加点にならない。残塁が続く。進んで7回、四球で出たランナーをタイムリーヒットで返され1点差さらにそのランナーも返され同点にされた。
試合は続き9回裏、同点、さよならで決めたい。1番2番打者が打ち取られていく、3番は3打数2安打の能村先輩だ。『カキンッ!』鋭い金属音が響く。打球は高く舞い上がり右中間に落ちた。一塁コーチの俺はおもいっきり腕を回し走塁指示を出す。三塁打、サヨナラのチャンス。次はエースで4番の塩見先輩だ。今日はヒットも打っている。
1球目外角に外れボール、2球目インコース内よりのスライダー。ストライクゾーンに入ってきた瞬間バットの金属音が響く。打球はライナーでショートの頭の上に向かって飛んで行った。ショートはおもいっきりジャンプする。『超えろー!』全員が叫ぶ。打球はショートのグラブをかすめフェアグランドに落ちる。サヨナラタイムリーヒットだ。塩見先輩は高々と腕を上げベースを回る。能村先輩がホームイン。と同時にメンバーがベンチから飛び出し歓声をあげた。優勝だ!それは素直に嬉しい。だが試合に出ていない俺はあの歓喜の輪に入ることは出来ず少し離れたところからその様子を見ていた。
次は一年生の秋、冬です。