リア充
「ぼ、ぼ、僕と付き合ってくだはい!」
放課後、好きな女子をに教室に呼び止め思い切って告った。
そして噛んだ。思いっきり噛んだ。
死にたいと内心絶望しているなか微かに笑い声が聞こえた。
多分廊下まで聞こえていたのだろう。
心の中で楽に死ねる方法を模索しているとき、
「いいよ、付き合っても」
と聞こえた。廊下の笑い声が止まった。
何のことだ、本気で考えているなかその女子が
「これからお願いね、藤木」
と。
静かな教室に廊下の走る音が響いた。
ここまでは良かったのだ。ここまでは。
次の日、昨日の奇跡のシーンを頭で反芻し学校へ向かう。
ついに昨日憧れのリア充になったのだ。
未だに夢なのではないかと考えるが、多分違うであろう。
その女子の名前は榊瀬南。瀬南と書いてせなと読む。
ラブコメあるあるの学年1の美女子などではなくボーイッシュな性格で短髪、女子で固って駄弁るような人ではなくどちらかといったら男子と気安く喋り教室内で人気芸人の真似して皆で爆笑するような人種だ。
なので男子には異性として好きという人はいないが、友達として一緒にいたいという評価である。
しかし彼女は自分が高校に入り友達ができずに教室の片隅で本をスマホをいじっていたときに最初に話しかけてくれたのだ。
まぁ
「君、死んだ魚より酷い目ぇしてんなぁ。名前なんていうの?」
という言葉だったが。
それがきっかけで瀬南と話せるようになり、男子とも話しかけれるようになったのだ。それで瀬南を好きになった。
教室に入ると待ってたかのように自分の周りにいつも一緒にいる3人が現れた。
左から順に佐々木、西村、清水。
佐々木は成績優秀で運動もでき、面白いという完璧人間。
特技がまたすごく、口で卓球のラケットで打つ音とテーブルでボールがはねる音を完全に再現できる、歌手を指名したら大抵物まねできるなどである。とにかく自分の尊敬する人だ。
西村はバスケ部部長で爽やかイケメン、昨日までは4人の中で唯一のリア充だった。
その相手がまた凄くこの学校1の美少女で、2人でいる所を傍から見ると羨ましいどころかもはやこの世の物とは思えないので学年中の信仰対象となっている。
最後は清水。生粋のオタク。
そんな清水が口を開き指を指す。
「あいつ、なんかテンション低くね?」
指された指の行方を探すと瀬南がいた。
机に突っ伏して寝ている。
「お前なんかした?」
と西村。何故俺を疑うのか分からないが、とりあえず
「知らねーけど風邪でも引いたんじゃね?」
と誤魔化しておく。
多分昨日のことだろう。落ち込んでいるということは返事を後悔しているのか...
そんな中やけに鋭い佐々木が口を開く。
「お前、昨日あいつに告っただろ」