24話 WGA入学試験 Ⅵ
投稿遅れて申し訳ないです……
再開していきます!
視点:レイ・ノヴァ
私はレイ・ノヴァ。
エルフ族王家の第ニ王子。
私は幼い頃から頭もよく、そして顔も良い。
周りも私を甘やかす。まあ確かにこんな完璧だから『無能な第一王子とは違って、超優秀で間違いなく将来王の座につくレイ様のおこぼれに預かりたい』という思惑がある事は重々承知していますが、まあ害は無いですしどうでも良いですね。
それよりも私ですよ。
神は二物を与えないと言いますが、私の存在がある以上そんな事は無いです、ええ間違いありません。
特に剣の才気! これに関しては神に愛されたとしか説明のしようがないのです。
師の技量を一月で全て模倣し、そのまた一月後には師に勝利。
さらにその一月後、エルフの生息圏──神樹界に生息する危険指定された魔物を単独で討伐。
その魔物は討伐隊が組まれる程のものだったそうです。まあ、私の手に掛かれば瞬殺でしたがな! HAHAHA!
まあ、結果何が言いたいかと言うとですね。
現状はともかくとして『戦闘の才能で私の右に出るものは居ないだろうし、それは頭の良さも同じ事』
──と、思っていました。この獣人の娘と対決するまでは。
「むむぅ……」
確かこの娘の名は──なんでしたかな? 強い強いと噂されていた獣人の王女だったと思いますが、噂で強いと囁かれる程度の娘の名前を記憶して脳の容量を割く必要性も無いと思ったものです。当時は。
悔しいですが、その考えは撤回しましょう。
この娘は少し強いなんて領域にはいない。この試合中、私は一太刀も繰り出せていなません。こんな事は生まれて初めてです。何たる屈辱。
ですが、私が太刀打ち出来ない──それは『この娘から盗めるスキルが沢山ある事』を示しています。
私は私にとって価値の無い技能には総じて興味が持てませんが、私にとって価値のある技能に関しては、例え相手が人間であろうと盗み取るつもりです。
この娘は、周りが退屈で埋め尽くされていた私にとっての最高の師匠になる。そんな予感がします。
そして次の瞬間──私の予感が合っていた事を確信しました。
「【憑依:月下獣】」
強さを魅せながらも穏やかだった娘の雰囲気が、刃物の様な鋭い殺意を持った雰囲気へと変化しています。
全てを飲み込むような、絶対的な王の圧。あの娘からそれを感じます。
なんとなくですが、この圧は私には出せないものだと分かります。
流石に私でも種族の壁を越える事は出来ませんからね。獣人の王族特有とか、そういったものなのでしょう。
「私はエルフの第二王子レイ・ノヴァ。私が名乗ったのです。娘、貴様も名を名乗りかさい」
「そっちが勝手に名乗ったのに……まあいいや、リンカ・ソフィーティア。一応獣界の王女やってる」
「なるほど……リンカ・ソフィーティア。貴様の名、覚えておきます」
「あの……もうやっていい? ……早く寝たいんだけど」
最後の方がよく聞こえませんでしたが、別に大したことではないでしょう。
「戦いの場でこの様な話をするのも無粋ですね。謝罪しましょう。では始めましょ──」
「分かった」
「え?」
戦闘再開の承諾の声が聞こえたのは私の真後ろ。振り向きざまに剣を振りましたが、その剣は空を切り裂いただけに終わります。
「じゃ、終わり」
また真後ろから声が聞こえます。
振り向くのでは遅いと本能が告げています。
何も見えませんが、殺意が濃くなっている事を考えると次の行動は攻撃。
「【物理防御】」
後ろを向いたまま防御魔法を展開。
ハッキリとした殺意でしたので、物理攻撃が来ると予想します。
結果──確かに次の攻撃は物理攻撃ではありました。
ですが、私の思い描いていた形とは異なる別の事象となって結果は現れました。
「……邪魔」
『バリン』という小気味良い音が二回響きます。何が割れた音なのか、それはもう明白です。
二回──一回目は私の唱えた防御魔法でしょうが、二回目は娘の勝利を確信した試験官のものでしょうか?
ハハッ、それで止めきれていないのでは試験官失格ですね。
何とか身体の向きを戻し、もう肉薄しているリンカに目を向けます。
次の攻撃は──膝の伸縮からして、低身長から放たれるアッパーカットでしょうか?
その予想が的中した私は、半歩引いてその攻撃を回避。すかさず剣を振ろうと腕を動かしますが、その腕に下からの蹴り上げが炸裂し私は剣を放り投げてしまいます。
『ボギィ』なんて音が聞こえましたが、私の骨が折れたのでしょうか? 新しい玩具との出会いで興奮しすぎているせいでしょうか? 全く痛くありませんが、もう腕は使い物にならなそうです。
剣は飛ばしてしまいましたが、戦士たるもの第二の刃も用意しているものです。
腰に差していた短刀を左手で抜き、脚を振り上げて空きだらけになったリンカの身体へと刃を挿し込む──
──つもりでしたが、空いていた手で短刀を掴み取られてしまいます。人差し指と中指で挟んでいるだけですが、全く動きそうにありません。
ですがここは至近距離。自爆覚悟、ここで爆発魔法を使えば意表を突けるでしょう。
「灼熱の爆──」
と思っての行動でしたが、リンカの脚が私の頭上にある事を忘れていました。
「ふんっ!」
落とされた踵は私から意識を刈り取る恐怖の一撃となって、前傾姿勢になっていた私の後頭部に振り下ろされました。
私はうつ伏せで倒れます。
「……遠慮はしたから骨は折れてない筈」
リンカがなにか言っていますが、よく聞こえません。
なんとなく空が見たくなり、最後の力で仰向けになります。
沈み行く意識の中で『如何にしてリンカの技術を盗むか』を考えてみます。そうすると──
「すば、らしいぃ!!」
興奮が止まりません。
そんな私を奇異の目で見下ろすリンカを最後に、私は意識を失いました。
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視点:天霧夜
「……」
学園側は試験官が試合を止められなかった時の事も考えているようで、リンカと戦ったエルフは応急処置として回復魔法をかけられた後、WGAの保健室に運ばれた。
WGAの保健室には五界の魔術の結集【キュアボット】が何台も置いてある。
キュアボットはカプセル型の機械で、患者を中に入れて装置を起動することですぐにでも治せるらしい。病気も治せるが、一部の病気には全く効果はないようだ。
本来ならとんでもない費用が掛かるが、その費用も国負担だ。
それにしても……リンカの強さは異常だった。
対戦相手のエルフは一流の技術を備えていた。見ている限り、戦闘経験もかなりのものだと思う。
対してリンカの強さは、技術踏まえた上で、相手をねじ伏せる圧倒的なパワー。
ある程度の力量差なら技術次第で何とかなるが、リンカが相手ではそうはいかない。
本人の持つ技術も一流であり、そので相手の技量を上から叩き潰せるパワーもある。
おかげで、エルフは持ち前の技術を発揮する前にパワーで押し切られてしまっていた。
「終わった……ガイア、背中」
「おう。おつかれさん」
いつの間にか戻ってきていたリンカ。
この性格を見ていると、とてもさっきの戦闘の張本人だとは思えない。
三試合目にリンカと当たる可能性も無くはない。勝敗が関係ないとしても、全く力を発揮出来ずに終わってしまうだろうし、出来るなら避けたいところだ。
『次は2642と……1997! 三分後に試合を始めるぞ!』
俺だ。次の相手はどの種族だろうか。
改めて気を引き締め、闘技場の舞台へと降りた。
新作始めました!
『転生なんてクソ喰らえ 〜超絶鬼畜な異世界は殺される度に王の城からやり直し』
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異世界で無双するはずが無双されてしまうファンタジー作品です。
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