20話 WGA入学試験 Ⅱ
@20話 WGA入学試験 Ⅱ
視点:天霧夜
「一々スケールが段違いだな……」
「ふふん! 凄いでしょう!」
「なんで月夜さんが自慢気なの……」
咲と月夜に合流した俺は、最後の試験が行われる舞台──闘技場に繋がる道を歩く。
因みに闘技場も三つあり、どれも同じ様な造りになっている。
咲と月夜も、たまたま同じ闘技場だったらしい。
座学の試験会場だった本校舎から歩いて四、五分程の場所にある闘技場は、人間界の東京ドームと殆ど大きさだそうだ。
近年珍しい石造りで天井が付けられていない所が、かの有名なコロッセオを彷彿とさせる。
空中都市は雨が振らないからな。天井が空いている事によるデメリットはほぼ無いし、この方が見栄えも良い。
戦闘の試験に関してだが、この巨大な闘技場内で、五組の戦闘が同時に行われる。
にしても広いな……十組くらいは同時に対戦しても余裕ありそうだ。
因みに試験開始時間は12:00。
一試合は五分で、それが五組、つまり十人。他の闘技場も含めると、一時間で戦える人数は──5×10×12×3で1800人。
入学試験に応募したのは3000人らしい。それが三回戦うから9000として──全員が三回戦うのにかかる時間は9000÷1800で5時間か。結構長いな……
対戦相手はランダムで、受験番号の書かれた紙の入った箱を、リアルタイムで試験官が引き続ける。
その引かれた順番で誰と戦うか決まる──といっても、引かれるのは受験番号だから、試験の直前までは相手の学年しか分からない。
一応、受検番号の一桁目が学年になっている。対戦相手には学年も、性別も、種族も関係ないようだ。
竜族と当たらないと良いけどな……
さて、闘技場の客席に着いた。
自分の受験番号を呼ばれたら会場内に入り、そこで対戦相手と対面してそのまま戦闘に入る。各試合毎にも一人の試験官が付いている。審判の役割も兼ねてだろうな。
『試験を開始して下さい』
そうこうしているうちに試験が始まる。
『あー、あー。この第一闘技場の試験監督の皇輝夜だ。とっとと家帰りたいから早く試験終わらすぞー』
闘技場の高い所──VIP席? にすわる試験監督。『とっとと家帰りたい』とか……これで良いのか名門校。にしても皇……確か月夜の苗字って──
「……私のお母さんです」
「そ、そうか」
「雑な人ですが、意外と優しいんですよ? しかもあれでいて、代表と戦える実力者でもあるんです!」
えっへんと胸を反らす月夜。なんで月夜が自慢気なの……
だが、あの【炎帝】と同格に戦える者なんてそうそういないだろうし、知らない筈無いと思うんだけどな……
狐の獣人……獣人? もしかして──
「【インビジブル】?」
「お、知ってますか!?」
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【インビジブル】
獣人最強の兵士【インビジブル】。彼女の逸話には、一人でエルフ軍、魔族軍を複数壊滅させ無傷で生還。
相対した者は総じて──
『そこに気配があるのに攻撃が当たらない』
と語るそうだ。
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という噂なのだが、人間界では【インビジブル】は実在しないただの噂とされている。
だが、その噂の娘が隣にいる事を考えると、それは紛れもない事実なのだろう。
ホントにいたんだな……
そして──
『2642と……2337! 初戦はテメェらだ、とっとと出て来い! 次は──』
2642番──俺じゃないか。
「うわわ、お兄ちゃんいきなりだね……」
「ファイトです。ここで見てますよ!」
「ああ、行ってくる」
そうして、俺は闘技場の舞台へと向かった。
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《第一試合》
「只今より、2642番対2337番の試合を行う!」
相手は──狼の獣人だ。それも獣型か……
獣人はいくつかの種族と別に、人型と獣型の二種類に別れている。
人型の獣人は、人間の身体に種族特有の耳や尻尾等があるタイプだ。
月夜や【インビジブル】はこっちのタイプだな。
それに対して獣型の獣人は、全身体毛で、より獣らしさが色濃く出ているタイプだ。
無論個体差はあるが、人型の獣人の方が魔法が得意で、獣型の獣人の方が身体能力が高い事が多い。
俺は遠距離への攻撃手段が無いからな。獣人を相手にするなら獣型の方がやりやすい。
「……あんた本当に人間か? 相当修羅場を潜ってるだろ。名前を聞いてもいいか?」
「天霧夜、対戦よろしく」
「天霧……なるほど、俺はガイア。人間だからって手を抜いたら痛い目に合いそうだな。こちらこそ、全力で相手をさせてもらう」
どうやら、ガイアの得物は槍らしい。素材は──銀か? 獣人は実力で得物に使う金属が変わる文化があり、十二の階級があった筈だ。確か銀は上から三番目。それを考えると、彼が相当な実力者だというのが伺える。
それに加え、俺が無能力の人間だからと油断せずに、実力の判断をする辺りスキが無い。
始めから悪いくじを引いたな……いや、入学者全員がこのレベルなのか?
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「始め!」
考えてるうちに試合が始まる。
が──ガイアその場から動かずに、脚を引く。同時に、槍を持った手を肩の後ろに下げる。
その構えに俺は嫌な予感を覚え、すぐさまバックステップで距離を取る。
突っ込んで来たところに居合斬りでカウンターを狙う予定だったが、その予定は変更だ。
鞘に収めていた天之叢雲を抜き、飛び道具を撃ち墜とす技【流墜】の構えをとる。
そして──
「【追跡の、投槍】!!」
とんでもないスピードで飛んでくる槍を──
「【流墜】!!」
正面から叩き伏せ、槍に流れる力の方向を下へと変換する。
結果、槍は地面へと突き刺さる。
……チャンスだ。
俺は得物を失ったガイアに突撃する。まあそう見えるだけで、他の武器が無いとは限らない。ガイア自身が格闘術を極めているかもしれないしな。
念の為【感覚拡張】を使って突撃。
そんな俺を見て、ガイアは
──ニヤリと笑っていた。
──もし、この時に【感覚拡張】を使っていなかったら、俺は負けていただろう。
「っっっっ!!!!」
突撃中に身体を捻り、後ろから猛スピードで迫る槍をスレスレで回避する。
危ねえ……
「……流石天霧、よく避けれたな」
「生憎、死角からの攻撃には慣れてるんだよ」
驚きの表情を見せるガイア。だが、その表情には余裕がある。
……流石なのはどっちだよ。
俺が槍の対処に追われている際に距離をとっていたらしい。
一旦仕切り直しだな。





