表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/28

12話 【共鳴】 Ⅶ

咲ちゃんはただの可愛い妹じゃなかった!?






 ──天霧家長女 天霧咲

 彼女は天霧邸の隠し部屋、地下のモニタールームにいた。




 ──天霧家

 古来から続く戦の名家である天霧は、その独自の技術を受け継ぎ、そして進化させてきた。

 先代天霧家当主──天霧蓮(あまぎりれん)もその例に漏れず、自身の子である夜と咲に技術を伝えていった。

 いずれは全ての技術を継承させるつもりでいた蓮だが、まずは二人の才能のある分野からの方が良いと判断した。

 蓮は一見子育てに従事している様に振る舞いつつも、二人の行動の節に垣間見える才能を見逃しまいと、観察を続けてきた。

 才能の片鱗(へんりん)は、注意深く見ていれば日常生活からも見て取れる。


 そうした観察を一年続けた結果──蓮は二人の才能をある程度見切る事ができた。


 蓮は夜の持つ才能(武器)を、丈夫な身体と冷静な判断力、そして何にでも恐れない胆力だと判断した。

 軒並み運動能力と反射神経が異常なまでに高いのは目に見えてわかるし、遊び一つ一つにまで第三者視点で自分見る事が出来ている。

 最終的に、ボードゲームに関しては蓮すら勝てなくなるまでに成長した。蓮自身もボードゲームは強く、その道のプロと互角のレベルだ。

 だが夜はそれすら超越している。才能が凄まじいからとしか説明しようもない。

 そんな夜に蓮が最初に教えたのは、【戦闘】と【政治的な駆け引き】の技術。


 【戦闘】の技術を引き継いだ夜は、10歳にして身体能力で圧倒的に(ひい)でる他種族を相手取ることすら可能だ。

 その上剣術だけでなく、槍術、弓術等、彼の使える武器は多岐(たき)に渡る。

 どれも一流と呼べるレベルではないが、相手によって獲物を変えて、自身に有利な環境で立ち回れる事を考えると十分と言っていい。

 金目当ての大人が押し寄せてくる天霧家を子供一人で守り通しているのも、【政治的な駆け引き】の技術があってこそだ。


 ──では、咲は何の才能に秀でて、何の技術を受け継いだのか。


 蓮は咲の持つ才能(武器)を、純粋さと切り替えの速さ、そして圧倒的な応用力だと判断した。

 咲は教えた事を教えられたもの以上に成長させてしまう。

 例えば料理を教えた時、次の日にはその料理を勝手に作ってしまっていた。しかもより美味しくなって。その料理も決して簡単なものではなかったのだが、咲にとっては模倣は当たり前どころか、寧ろ進化させて当然なのだろう。

 そんな咲に蓮が最初に教えたのは、【機械制御】と【暗殺】の技術だ。


 ──何故【暗殺】なのか。

 それは、彼女の性格でもあり武器でもあり、そして弱点にもなりうる純粋さと切り替えの速さにある。

 心の迷いは人を弱くする。

 当たり前のようで、これは暗殺者にはよくある症状だ。

 必要な殺生かを考え込み、悩んでる最中にに対象を逃す。要は心がまともでは暗殺は出来ないのだ。

 その点、咲の心はある種まともではない。

 本来ならば9歳で人を殺してまともでいられるはずがない。

 が、咲は『これも必要な事』と即座に割り切れる。

 だからこそ、蓮は咲に【暗殺】の技術を継承させた。だが咲はこの技を使って暗殺した事は()()無い。

 いくら割り切れると言っても、本人の心根が優すぎるが為に、自分から殺すような事はない。あくまで必要に迫られた時にのみ使っている。

 ちなみに歌も暗殺技術習得の一貫で練習した事だったが、その過程で本人は歌う事が好きになってしまったらしく、今では暇な時によく自室で歌っている。

 【機械制御】に関しては情報収集の手段としての要素が強い。

 だがこれも、咲の異常な応用力があってこその技術だ。

 暗殺するなら事前の情報は何よりも大事。

 それだけでなく、天霧邸に複数存在する警備用の機械も全て彼女が修復、開発している。


 天霧家の表の顔が夜ならば、天霧家の裏の顔は咲。

 その二人は互いを信頼し、咲が得た情報を夜が交渉材料(エサ)に使い、天霧側に有利になるような交渉をする等、協力し合って生活している。

 先代天霧家当主の蓮が死んで二人だけが残されたが、天霧兄妹は与えられた技術で家を保たせていた。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 地点変更:人間界 天霧邸 モニタールーム

 視点変更:天霧咲




 立体軌道小型カメラ──通称【立体眼(サードアイ)

 リアルタイムでえいぞう(映像)を映して空を()ぶ小さいカメラって言えば分かりやすいかな?

 このカメラは三年前にわたしが作って、その後もかいりょう(改良)を続けて使いやすいようにしたものだよ。

 そのかいりょう(改良)のかてーで同時使用をできるようにした。今では三つまでなら同時使用ができる。

 とうしきのう(透視機能)も付けてみた。

 ある程度の厚さのかべ()なら何もないように見れる。

 ふく()や人の身体は、いくら改造しても、何故かとうし(透視)出来なかった。なんで?

 制限があるとはいえ、どこにでも移動できる目が三つあるみたいなもの。

 すごく使いやすいのでよく使ってる。

 ……このモニタールームじゃないと、そのえいぞう(映像)を見る事はできないけどね。

 この辺りもがんばってかいりょう(改良)しないと!

 ふふん! わたしはすごいんだぞ!


 ……とにかく、おにいちゃんが倒されるしゅんかん(瞬間)かくにん(確認)したわたしは、おにいちゃんを倒したジルさんを、立体眼(サードアイ)を使ってついせき(追跡)していた。

 ちなみにかべごし(壁越し)とうし(透視)ついせき(追跡)している。

集眼(ゾーン・アイ)】を使ったおにいちゃんを片手間でたおす(倒す)ような人だし、ちょっとはな()れてるくらいじゃ気付きかねない。


「……とうちょうき(盗聴器)をしかけてるね」


 これを見て、わたしはジルさんが何を考えてるかをりかい(理解)した。

 わたしの()()()()()()()()()、おにいちゃんが連れて行かれる可能性はなさそう。

 それに今この部屋を出ていったらジルさんに見つかるかもしれない。

 おにいちゃんにはわるいけど、もう少しジルさんを遠くからかんさつ(観察)していよう。

 おにいちゃん、ごめん……

 わたしもあの時しんでん(神殿)から出てきたし、わたしの存在がかくにん(確認)されていればまずいかもしれないけど、世間では()()()()()()()()()()()()()()ってことになってるし多分大丈夫。

 それにあのしんでん(神殿)から出る時、わたしはおにいちゃんの先を気配を消しながら先行していた。

 気付かれてない……と思う。

 そんな事を考えていた時──


「えっ!?」


 シャルさんがねていた部屋にとうちょうき(盗聴器)をしかけたジルさんが、かべごし(壁越し)に見ている立体眼(サードアイ)の方を向く。


「気付かれたの!?」


 ……でも、ジルさんは首をかしげて、部屋から出ていってしまった。

 あぶなかった……かべごし(壁越し)じゃなかったらまちがい(間違い)なく見つかってたよ。


 その後、ジルさんがこの家のしきち(敷地)から出たのをかくにんして、きかい(子供)達にとうちょうき(盗聴器)を外して、わたしの所に持ってくるように指示する。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「ありがとう! えっと…………うーん、やっぱりだめかぁ……」


 きかい(子供)達が回収したとうちょうき(盗聴器)かいせき(解析)してみたけど、こちらから逆算して、音声を送っている位置を割り出すことができなくなっていた。

 いわゆるハッキング防止きのう(機能)が付いてる。

 とはいえ、このとうちょうき(盗聴器)をこわしたらまたジルさんが来るかもしれないし、こわすのは安易すぎるよね。

 とりあえず、まとめて部屋のすみ()にでも置いておこう。

 急いでやることは終わったし、早くおにいちゃんのようす(様子)を見に行かないと!




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 視点変更:天霧夜




 見慣れた天井を見上げている俺は、自分が何故こんな事になっているかをゆっくりと思い出す。

 えーと、確かジルに向かって剣を振った瞬間に背中に衝撃が走って──そこからの記憶は無い。

 俺は痛む身体を起こして、周囲の状況を確認する。入り口の扉が倒壊しているが、それ以外は見慣れたいつもの天霧邸だ。

 ──だからこそ違和感を覚える。


「なんでジルは俺を連れて行かなかったんだ?」

「おにいちゃん!」


 奥から咲が顔を出した。

 咲には避難しつつ、立体眼(サードアイ)による情報収集を指示していた。

 咲ならその理由を知っているかもしれない。


 本来なら俺が負けて連れていかれた時に位置を割り出して、何らかの方法で脱出を補助してもらう為だったが……まあいいか。


「咲、俺が連れて行かれなかった理由に心当たりはあるか?」

「うん、多分……」


 そうして、ジルが各部屋に盗聴器を仕掛けていた事を聞いた。

 それを聞いて、連れて行かれなかった理由を察した。

 なるほどな……尋問して俺から情報を引き出すより、俺がボロを出して情報を漏らした方が確実性のある情報を得られると思ったからだろうな。

 だがこうしてその盗聴器を全て発見した今、盗聴器の意味は無くなった。

 いや、それどころか寧ろ……


「これ、利用出来ないか?」

「え……?」




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 視点変更:シャル・アストリア

 地点変更:人間界 とある山




「ここなら……誰もいなさそうね」


 彼の家から飛び続けて数分、私は近くにあった山に降りていた。

摩耶山(まやさん)】というらしい。

 元は観光地だったのか、不思議な形の鉄の塊や人工物が数多く見られる。

 だが……今は違うらしい。この山の入り口は柵で覆われていて、あらゆる所から草も生えている。

 全く整備されていない。当然人もいない。

 ……まあ、だからこそ私が降りられた訳なんだけど。

 空は藍色に染まり日は沈んでいる。

 出来ればもう少し離れたかったけど、あまり遠くに行くと魔界への道が分からなくなりそうで怖かった。

 地に足をついて翼を縮小させる。

 あの部屋で飛んでから、なんとなく翼の動かし方が分かってきた。

 さっき水やり(トイレ)ついでに確認したけど、今の私は角も尻尾も無い。翼さえしまってしまえば普通の人間にしか見えないだろう。

 このまま魔界に帰って、他の魔族に襲われるかもしれない。

 もう、どうして良いのか分からない。


 ……いっそ彼の家に……いや、折角逃してくれたんだ。行ってはダメだ。

 両頬をバチンと叩いて情けない自分に喝を入れる。

 角と尻尾を失っても魔族の誇りまで失くした訳じゃない。


「でも、今は……」


 山の頂上のベンチに座って街を見下ろす。綺麗な夜景だった。藍に染まった世界が、街の光にふんわりと照らされている。

 その夜景を見て、私の中の緊張の線が切れた。


「ぅ、うぅああああ……!」


 味方に裏切られて、角と尻尾を失くして、魔界に帰れなくなって、この白い翼を貰って。

 今日は色んな事があった。

 誰もいない今くらい、弱い自分を解放してもいいわよね。


 誰もいない山の頂上で、私は暫く泣き続けた。

1章はこれで完結です!

次回からは6年後、終戦して数年経った後からのスタートになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ