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廃校でダンジョン  作者: 空気鍋
9/17

1ー9

1年ぶりに投稿します。

そしてまた暫く投稿出来そうにありません。

読んでくださる皆さま方にはご迷惑をおかけします。

大変申し訳ありません。

俺は目を擦《こす》り、歩いて来る二《ふた》つの人影《ひとかげ》を見直して、疲れてるのかと目もとをマッサージした。

チラリと見ると、近づいて来るビヤ樽《たる》と……。俺は、ついに天を仰《あお》いで両手を上に掲《かか》げて叫んだ。


「うおぉぉぉーっ!」


まるで、ベトナム戦争を題材《だいざい》にした映画のワンシーンのように膝《ひざ》を着《つ》いて魂《たましい》からの絶叫《ぜっきょう》だった。

天よ。艱難辛苦(かんなんしんく)を与《あた》えたまえ。なんて何時《いつ》、願ったと言うんだ。俺は……俺はっ! 平凡《へいぼん》だけど奥《おく》さんを貰《もら》い、普通《ふつう》に子供を二人《ふたり》か三人《さんにん》、授《さず》かり老後《ろうご》を孫達《まごたち》に囲《かこ》まれ暮《く》らしたいだけなのに。

それなのに、あんまりではないか。親の死目《しにめ》にも会わせず、長年《ながねん》勤《つと》めた会社から追い出し、小学生の思い出が詰まるこの場所で訳の分からない騒《さわ》ぎに巻き込まれ。

天よ! お前は俺がそんなに嫌いか!?

俺があげた慟哭《どうこく》をどう受け取ったのか、紅眼《「あかめ」》の美女と二人の長い耳が特徴《とくちょう》の白い肌の美少女、黒い肌の美少女は口喧嘩《くちげんか》を止めて走り寄ってきた。

見るとビヤ樽のように包容感《ほうようかん》のある人影も隣の人影と共に慌《あわ》てて近づいて来《き》ている。

ビヤ樽の女の子はまだいい。ずんぐりむっくりではあっても、見かけない姿じゃない。しかし、その隣を走る……走れるんだ……石像、お前はダメだ。お前は肌も岩肌《いわはだ》だし肌色も悪い(「灰色」)し肌も荒《あ》れていそうだし触《さわ》られると痛そうだし重量感(じゅうりょうかん)タップリの足音だから潰《つぶ》されそうだし! だから近づくなあっ!

案《あん》の定《じょう》、走ってきた石像は足を滑《すべ》らせて前転2回で俺の前に転《ころ》がり込む。


「ハラホロヒレハレ~。」


クランクランと頭を揺らす石像は、幸《さいわ》いにも足を前に投げ出した状態《じょうたい》で止まったから、動きの鈍い俺が逃げなくても良かったが、そんな情けない声をあげて……ってか石像がしゃべったぁ? しかも意外に可愛い声だ。いや、石像が動くんだから声ぐらいあげるもんなのか?

ハラホロヒレハレーってのは俺が言いたいわっ!


「ちゃらららら~ら、ちゃらちゃらら。」


もう、どう言えば良いのか分からなくて混乱《こんらん》する俺に気の抜けるメロディーが届《とど》いた。

音源《おんげん》は……紙が束《たば》になっているだけのはずの”DESU“ノート。ノートのページの1枚が光《ひか》り、多分《たぶん》、そこから明《あき》らかに電子音なちゃらららら~ら……が出ている。

だから、ノートである理由を教えてくれ……。

ツッコミ疲《つか》れたよ、パトラッシュ……。我《われ》ながら意味不明(いみふめい)な事を考えながら周《まわ》りにいるナ(・)ニ(・)か(・)を無視《むし》して、ていうか現実《げんじつ》を見たくなくてノートを開いた。

そこには


”侵入者《しんにゅうしゃ》が死亡《しぼう》しました。“


簡潔《かんけつ》な言葉がノートの真《ま》ん中《なか》辺《あた》りに書かれていた。

侵入者……? 侵入者ってなんだっけ。言葉の意味《いみ》が考えつかずボウッと思った。思って直《す》ぐに、その侵入者を助けに来たのを思い出す。そして、侵入者、とは。

俺の周りにいる美少女や美女の事ではないのは確《たし》かだ。生きているかどうかは分からないが、見た目は元気《げんき》に動いているから。自然《しぜん》、目は少し離《はな》れた所《ところ》で地面に寝かせられている女子高生に向けられる。

制服は汚れ破れていて一部とは言わずかなりの部分がはだけていた。虚《うつ》ろに空を見上げた瞳《ひとみ》は開ききって瞬《まばた》き一《ひと》つしない。ダラッと投げ出された四肢《しし》は力無く広げられたままピクッともしていなかった。


「女子高生が小学校《しょうがっこう》跡地《あとち》で亡《な》くなりました。女子高生の傍《そば》には40代の男が立っており、よく分からないが気がついたら死んでいた、等と供述《きょうじゅつ》しており、警察《けいさつ》は援交《えんこう》目的《もくてき》からの暴行《ぼうこう》により死亡した可能性《かのうせい》があると起訴《きそ》する構《かま》えです。」


ローカルテレビ局の唇《くちびる》の色が悪い眼鏡のキャストが淡々(たんたん)と読み上げる俺の罪状《ざいじょう》が見えた気がした。

……嘘《うそ》だろ。俺、まだ落ちるのかよ。

不幸は底無しでやってくる。

ガクッと肩を落とす俺に、ノートは救いの言葉を写した。


今なら生き返ります。

YES/NO

その文字の下には数字の10が。

9になり。

8に減り

7、6、5。


「てか、格ゲーかよっ!」


ノートには、今《いま》倒《たお》れている女子高生に似《に》た4頭身の女の子が頭の上に黄色いヒヨコを飛ばしてフラフラしている姿が書かれていた。


「だから、ノートである理由が無いだろ! なんでタッチパネルなんだよっなんで書かれた事が自動更新になるんだよっなんでタップしてドラッグできんだよっノートが光るか? 音が鳴るか? なんなんだよっ! 責任者出てこいっ!」

「主様《あるじさま》よ。良いのかや? 時間が無さそうじゃが。」


俺が許容範囲(きょようはんい)を越《こ》えた理不尽《りふじん》に叫ぶと紅眼の美女は俺の肩に滑《なめ》らかな手を落としノートを指さした。ノートにはTHREEの文字が赤く書かれていて


「さっきまで数字だったろうが! なんで英語になってんだよっ! ああ、YESだよっこれしかないだろがっ!」


なんか、見るものすべてが敵に見えてきた俺はバシバシとノートのYESの所を叩《たた》き


「コンティニューしました。」


ノートから、まるでコインが入れられたような音がして文字が浮き出る。


「言っちゃったよっ! コンティニュー言っちゃったよっ! てか今の金入れたみたいな音ってなんだ?」


ウガアーと叫んだが急に力が抜けた。またもガクリと肩を落とす俺は


「頼む……頼むから、俺に何が起こっているのか説明してくれ。」


泣きながら呟《つぶや》いた。正直《しょうじき》何が起こっているのか分からないまま、よく分からない何がが進むっていうのがかなりのストレスなんだ……。


「僭越《せんえつ》ながら妾《わらわ》が説明しようぞ?」


微笑《ほほえ》んだ美女が突然《とつぜん》消えた。代わりに出たのは白い肌の美少女。銀髪の少女が青い瞳を俺に向けて


「ここは私が説明するわ!」


人《ひと》さし指を立てて説明しかけ。


「ずるいっ。私がするっ。」


今度は黒い肌の美少女が金髪を翻《ひるがえ》して割って入ってきた。澄んだアンバーの瞳は、まっすぐ俺を見て……いたが不意《ふい》に喉元《のどもと》を腕で覆《おお》われ苦《くる》しげに呻《うめ》いた。


「お主《ぬし》たち。ち、と騒《さわ》ぎすぎじゃな? 年長者《ねんちょうしゃ》としてお灸《きゅう》を据《す》えんとなあ?」


片腕は黒い肌の少女の首を締め上げ、片手は白い肌の少女の顔をアイアンクローで締め上げる美女に先程《さきほど》までの余裕《よゆう》は感じられない。暴れる二人をギリギリと締め上げていたが


ゴウンッ!


地震かと思う凄《すさ》まじい揺《ゆ》れに動きを停めた。


「いい加減にしなっ! 親方に失礼だと思わないのかいっ!」


ビヤ樽さんが巨大な鉄鎚を地面に叩きつけた姿で俺達を睨《にら》む。


「いいかい? これから説明が終わるまで動くんじゃないよ? 動いたら……分かるね?」


その迫力《はくりょく》に俺達全員が頷いたのは言うまでもない。

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