表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃校でダンジョン  作者: 空気鍋
9/14

1ー9

1年ぶりに投稿します。

そしてまた暫く投稿出来そうにありません。

読んでくださる皆さま方にはご迷惑をおかけします。

大変申し訳ありません。

俺は目をこすり、歩いて来るふたつの人影ひとかげを見直して、疲れてるのかと目もとをマッサージした。

チラリと見ると、近づいて来るビヤたると……。俺は、ついに天をあおいで両手を上にかかげて叫んだ。


「うおぉぉぉーっ!」


まるで、ベトナム戦争を題材だいざいにした映画のワンシーンのようにひざいてたましいからの絶叫ぜっきょうだった。

天よ。艱難辛苦(かんなんしんく)あたえたまえ。なんて何時いつ、願ったと言うんだ。俺は……俺はっ! 平凡へいぼんだけどおくさんをもらい、普通ふつうに子供を二人ふたり三人さんにんさずかり老後ろうご孫達まごたちかこまれらしたいだけなのに。

それなのに、あんまりではないか。親の死目しにめにも会わせず、長年ながねんつとめた会社から追い出し、小学生の思い出が詰まるこの場所で訳の分からないさわぎに巻き込まれ。

天よ! お前は俺がそんなに嫌いか!?

俺があげた慟哭どうこくをどう受け取ったのか、紅眼《「あかめ」》の美女と二人の長い耳が特徴とくちょうの白い肌の美少女、黒い肌の美少女は口喧嘩くちげんかを止めて走り寄ってきた。

見るとビヤ樽のように包容感ほうようかんのある人影も隣の人影と共にあわてて近づいてている。

ビヤ樽の女の子はまだいい。ずんぐりむっくりではあっても、見かけない姿じゃない。しかし、その隣を走る……走れるんだ……石像、お前はダメだ。お前は肌も岩肌いわはだだし肌色も悪い(「灰色」)し肌もれていそうだしさわられると痛そうだし重量感(じゅうりょうかん)タップリの足音だからつぶされそうだし! だから近づくなあっ!

あんじょう、走ってきた石像は足をすべらせて前転2回で俺の前にころがり込む。


「ハラホロヒレハレ~。」


クランクランと頭を揺らす石像は、さいわいにも足を前に投げ出した状態じょうたいで止まったから、動きの鈍い俺が逃げなくても良かったが、そんな情けない声をあげて……ってか石像がしゃべったぁ? しかも意外に可愛い声だ。いや、石像が動くんだから声ぐらいあげるもんなのか?

ハラホロヒレハレーってのは俺が言いたいわっ!


「ちゃらららら~ら、ちゃらちゃらら。」


もう、どう言えば良いのか分からなくて混乱こんらんする俺に気の抜けるメロディーがとどいた。

音源おんげんは……紙がたばになっているだけのはずの”DESU“ノート。ノートのページの1枚がひかり、多分たぶん、そこからあきらかに電子音なちゃらららら~ら……が出ている。

だから、ノートである理由を教えてくれ……。

ツッコミつかれたよ、パトラッシュ……。われながら意味不明(いみふめい)な事を考えながらまわりにいる()()()無視むしして、ていうか現実げんじつを見たくなくてノートを開いた。

そこには


侵入者しんにゅうしゃ死亡しぼうしました。“


簡潔かんけつな言葉がノートのなかあたりに書かれていた。

侵入者……? 侵入者ってなんだっけ。言葉の意味いみが考えつかずボウッと思った。思ってぐに、その侵入者を助けに来たのを思い出す。そして、侵入者、とは。

俺の周りにいる美少女や美女の事ではないのはたしかだ。生きているかどうかは分からないが、見た目は元気げんきに動いているから。自然しぜん、目は少しはなれたところで地面に寝かせられている女子高生に向けられる。

制服は汚れ破れていて一部とは言わずかなりの部分がはだけていた。うつろに空を見上げたひとみは開ききってまばたひとつしない。ダラッと投げ出された四肢ししは力無く広げられたままピクッともしていなかった。


「女子高生が小学校しょうがっこう跡地あとちくなりました。女子高生のそばには40代の男が立っており、よく分からないが気がついたら死んでいた、等と供述きょうじゅつしており、警察けいさつ援交えんこう目的もくてきからの暴行ぼうこうにより死亡した可能性かのうせいがあると起訴きそするかまえです。」


ローカルテレビ局のくちびるの色が悪い眼鏡のキャストが淡々(たんたん)と読み上げる俺の罪状ざいじょうが見えた気がした。

……うそだろ。俺、まだ落ちるのかよ。

不幸は底無しでやってくる。

ガクッと肩を落とす俺に、ノートは救いの言葉を写した。


今なら生き返ります。

YES/NO

その文字の下には数字の10が。

9になり。

8に減り

7、6、5。


「てか、格ゲーかよっ!」


ノートには、いまたおれている女子高生にた4頭身の女の子が頭の上に黄色いヒヨコを飛ばしてフラフラしている姿が書かれていた。


「だから、ノートである理由が無いだろ! なんでタッチパネルなんだよっなんで書かれた事が自動更新になるんだよっなんでタップしてドラッグできんだよっノートが光るか? 音が鳴るか? なんなんだよっ! 責任者出てこいっ!」

主様あるじさまよ。良いのかや? 時間が無さそうじゃが。」


俺が許容範囲(きょようはんい)えた理不尽りふじんに叫ぶと紅眼の美女は俺の肩になめらかな手を落としノートを指さした。ノートにはTHREEの文字が赤く書かれていて


「さっきまで数字だったろうが! なんで英語になってんだよっ! ああ、YESだよっこれしかないだろがっ!」


なんか、見るものすべてが敵に見えてきた俺はバシバシとノートのYESの所をたた


「コンティニューしました。」


ノートから、まるでコインが入れられたような音がして文字が浮き出る。


「言っちゃったよっ! コンティニュー言っちゃったよっ! てか今の金入れたみたいな音ってなんだ?」


ウガアーと叫んだが急に力が抜けた。またもガクリと肩を落とす俺は


「頼む……頼むから、俺に何が起こっているのか説明してくれ。」


泣きながらつぶやいた。正直しょうじき何が起こっているのか分からないまま、よく分からない何がが進むっていうのがかなりのストレスなんだ……。


僭越せんえつながらわらわが説明しようぞ?」


微笑ほほえんだ美女が突然とつぜん消えた。代わりに出たのは白い肌の美少女。銀髪の少女が青い瞳を俺に向けて


「ここは私が説明するわ!」


ひとさし指を立てて説明しかけ。


「ずるいっ。私がするっ。」


今度は黒い肌の美少女が金髪をひるがえして割って入ってきた。澄んだアンバーの瞳は、まっすぐ俺を見て……いたが不意ふい喉元のどもとを腕でおおわれくるしげにうめいた。


「おぬしたち。ち、とさわぎすぎじゃな? 年長者ねんちょうしゃとしておきゅうえんとなあ?」


片腕は黒い肌の少女の首を締め上げ、片手は白い肌の少女の顔をアイアンクローで締め上げる美女に先程さきほどまでの余裕よゆうは感じられない。暴れる二人をギリギリと締め上げていたが


ゴウンッ!


地震かと思うすさまじいれに動きを停めた。


「いい加減にしなっ! 親方に失礼だと思わないのかいっ!」


ビヤ樽さんが巨大な鉄鎚を地面に叩きつけた姿で俺達をにらむ。


「いいかい? これから説明が終わるまで動くんじゃないよ? 動いたら……分かるね?」


その迫力はくりょくに俺達全員が頷いたのは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ