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廃校でダンジョン  作者: 空気鍋
6/14

1ー6

先々週は打ち込み途中で投稿してしまい申し訳ありませんでした。

打ち直し投稿し直しましたのでご報告致します。

小学校から逃げて三日みっかがたち、俺が叫びながら走った、あの事が地元ラジオ局のローカルニュースでい犬がいなくなった話、女子高生が行方不明になった話、小学校跡地(あとち)刃物はものを持った不審者(ふしんしゃ)の話と共に取り上げられていた。

テレビ無い、ネット無い、スマホタブレットPCなんにも無い情弱(じょうじゃく)な俺としては動画が流れていない事をいのるのみである。

意外とお昼の三十分から一時間のニュースの話題だけでやっていけるもんですよ?

習慣(しゅうかん)になったお昼のラジオを聞きながら俺は三日前から悩んでいた。

小学校の事じゃない。元小学校の俺の元クラスの学級図書。そう、俺はあの日逃げるさい無意識(むいしき)に持っていた本を持ち逃げ(万引き)していたのだ。その本は今、居間(いま)のちゃぶ台に置かれている訳だが。

ハッキリ言って犯罪(はんざい)である。四十しじゅうなかばの、この俺が会社を解雇(クビ)になった翌日(よくじつ)に、母校の元学校から一冊の本を(ぬす)んだ。

警察屋さん出動(「事件です」)である。

“こういう人だからクビになるんです”

まだ見ぬワイドショーのパーソナリティーの言葉が脳裏(のうり)(ひび)く。


「違う。俺はっ。」


想像そうぞうでしかないのに、あまりにも有り得る話に思わず叫んだ。だが、否定ひていをしようとしても現物がここにあるのだから否定しきれない。

“犯人はそういうつもりじゃなかったって言うんですよね”

これは想像だろうか? 未来に実際(じっさい)起きた事じゃなからろうか。脳裏に俺を引き裂くかのような言葉が浮かんでは消え浮かんでは消え浮かんでは消え。

ジッとちゃぶ台の本を見る。

分かってる。分かってはいるんだ。管理人がいたら事情を話して、いなければそのままクラスに返せばいい。ただ、不気味ぶきみな思いをした俺が彼処あちらに行きたく無いって思っただけだ。

一昨日おとといの俺は昨日きのうの俺にたくし昨日の俺は今日きょうの俺にまかせた。このままだと明日の俺に本を回す事になりそうだ。そしてそれを人は責任を放り投げると書いて放任ほうにんと呼ぶ。


「やっぱり、もう一度行くしかないな。」


今はまだ昼を回ったばかり。

すぐ行けばすぐ帰ってこれるさ。

この間の事は無かった事にしてさっさと行こう。

ちゃぶ台の上の本を持ち上げた。何故か昔、俺が汚したのと同じ汚れ方をした本。その本を持つと本の間から一冊のノートが落ちた。ごく普通の厚さの少し小さめのB5ぐらいのノート。教室で本をめくった時にも、ちゃぶ台の上に置かれていた三日間にもB4程の本にはさまっているのが分からなかったノートは今、本を持ち上げる時に初めからあったかのように本の間から落ちてきた。

俺はこの一冊いっさつの本に何時いつまで振り回されるんだ。だんだん怒りがわいてきたぞ。

落ちたノートは小学校の時に使っていた“学習帳”にそっくりだった。イライラしていた俺はむんずとつかみ……また固まった。この本は何処どこまで俺を追いつめるのだろう。

俺の小学校の知り合いの名前を書かれた本から落ちたノートは俺の名前が書かれていた。




学習帳と書かれたノートには俺の名前が書かれていたが、このノートのお世話になっていたのは三十数年は昔である。いかにも真新しいノートは、とてもそんなに年数がたっているようには見えない。したがって俺のノートでは無い。

不思議な事が続いて面倒めんどうになりつつある俺は、ため息をつきながら新しい悩み事(「ノート」)ひろうと中身を確認した。

表紙ひょうしひらいたいちページ目、そこにきたな筆跡ひっせきで書かれたのは“DESUノート”という文字で……目頭めがしらをもんだ。

俺が小学生の頃は英語という学科は無かった。英語は中学生になってから学ぶもので、アルファベットを筆記体ひっきたいを書けると驚かれた時代である。今ほど英語が生活にとけこんでいなかったから、とあるラジオ番組で『英語でいちの事をONE(ワン)と言います。では英語でじゅうの事をなんと言うでしょうか。……答はONEONE……(十回繰り返す)です。では百はどうでしょうか? はい、百回言えば良いのです。それでは、みなさん、ご一緒に。ONE……(繰り返し)。』といった放送をした。あきらかに冗談(嘘っぱち)なのだが、それを聞いた当時の担任は真面目まじめな顔で


「将来役に立つから覚えなさい。」


と言っていた。流石さすがに百回繰り返すの辺りで気づいたらしく顔を赤くしていたが、俺がいた小学生の頃とは、そんな感じであった。今の小学生が聞いたら(わら)(ところ)か泣くかもしれない。時代の流れは(「今の小学生は良く)残酷である(やっているよ」)。小学校の入学時期を一年下げるとか、小中の区別を無して教える方も教わる方も自由な時間(「余裕」)を持たせた教育現場を創ればいいんじゃ無いのか? いや、むしろ教える事が増えているのだからそうするべきだと思うのだが。

それはさておき、そんな当時の俺がローマ字呼びでアルファベットをつづるなんて事を出来る筈が無い。ましてや、俺みたいに情弱であっても知っているほど有名な漫画のパクりなんて。本家の漫画が連載されたのは、俺が小学生だったそんな昔の事じゃない。

イヤ、ホント、メンドウ。

考えるのが嫌になった俺はページをめくる。

最初に、

十個の約束事。

と書かれ、少し間が

このノートがあった敷地は、このノートの持主の領地デス。

ノートの持主は領主となり領地をいとなはぐくむ事が生業なりわいとなるのデス。

領地から領民が出るのは出来ないデス。

領民は領主にぜいおさめなくてはならないのデス。

領主は領民をゆたかにしなくてはならないのデス。

領主は領地があるかぎり自分が考える最強の自分になるのデス。

領地は領主がいるかぎり成長していくデス。

領主は領民のリーダーを決める事で領地をより効果的に発展させれるのデス。

領地の設定変更及び質問は、このノートを介しておこなわれるのデス。

その他免責事項があるのデス。

読み終えた俺はうん、うん、と頷いて分かったふりをする。

そっかぁ。デスって死を意味するDETHじゃないのかぁ。日本語の助動詞の“です”かぁ。ローマ字だもんなぁ、うん、うん、気づかなかったオイチャンが悪かったよ。イヤ~、ハッハッハ。

って分かるかっ!

ノートを壁に投げつけた。間違いなき八つ当り。

もう、決定的だと思った。俺は子供の悪戯いたずらに振り回され三日間もなやんでいたのだ。

ふ、ざ、け、る、なっ!

この時、俺は小学校での不思議ふしぎな事をわす苛立いらだちのすべてを足にこめノートをつぶそうとして。

また、理不尽りふじんな不思議が起こり泣きそうになりながらうずくまった。両足をたたんで両手で作った輪の中に入れる。所謂いわゆる体育座りを発展させて尻を支点に両足を持ち上げ前後に体をらしながらバランスをとる。

ルー(「もう、」)ル~(「かんべん」)ルル~(「してくれ」)

俺のHPはMPと共に0よ。

理不尽な不思議な事。それはノートがひかりながら文字を映し出した事である。




尻が痛くなり体育座りを止めた頃、ようやくノートの発光が終わった。俺はため息をつき、見ようかどうしようか悩みながら結局、ノートを見てみた。

ノートに書かれていたのは。

ノートが開かれました。インフォメーション機能が拡張されます。

ノートの所有者が決まりました。領地を拡張します。

領地が拡張されました。領民の種類が増えました。

領民の数が一定数以上になりました。領民が拡張されます。

領地が拡張されました。領民の種類が増えました。

以下いかしばらく同じメッセージが続き

領地に未設定の存在があります。削除しますか? YES or NO

と最後に書かれていた。まるでゲームのような選択にゲーム機のコントローラを持った気分になったが、俺が持っているのは紙のノートである。YESもNOもどう選べばいいのか……。試しにYESに指を当てると、

はい が選択されました。未設定の存在は人間ですがよろしいですか? YES or NO

と下の行にまた出てくる。またYESに指を当てると、

削除すると元には戻せません。本当によろしいですか? YES or NO

と確認画面のようにまた出てくる。ここでNOを選んでみた。

削除をやめました。再度さいど削除をする場合は削除と記入して削除対象を選んでください。

また、下の行に文字が浮き出てくる。

……これは紙のノートじゃなくてはいけなかったのか。スマホやパソコンじゃ駄目だったのか、もし担当者がいたら膝を付き合わせて話し合いたい。

馬鹿げた事も突き抜ければ真面目な事になる。俺には何も理解できない。理解できないが、そういう物だと納得はできる。丁度ちょうとわ、仕事に使っているパソコンが何故なぜ、そう動くのか分からずともパソコンを使えるように。

理不尽で不思議な事に負けただけ(「あきらめた」)とも言う。

OK、そういう物ならそれでいい。俺はかかわり合いにならないだけだ。

心に決め、ノートをごみ箱に捨てようとした時、また光った。まるで俺の心をよんだように。そして、光るという事はまたログが記入された訳だ。俺は天井を見て、カクンと頭を戻し深くため息をはいた。

見ない、選択肢はあるが……仕事を辞めた俺には時間が余るほどある。このノートにいいようにやられているくやしさみたいなものはあるが結局けっきょく好奇心こうきしん暇潰(ひまつぶ)しという心の動きには対抗できず、ノートを開いてしまう。

未設定の存在は体調の悪化の為、倒れました。四時間程で死亡しますがどうしますか?


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