お祝いの準備 中編
レイは空をからウンルスの群れを発見した。
「あーいたいた。」
レイはゆっくりウンルスを降ろした。
傷ついたウンルスたちを見た群れは降りてきてレイを警戒し威嚇した。
(催眠)
レイは群れを眠らせた。ウンルスたちは次々に倒れて言った。
「この隙に。」
レイは一番体のデカいメスのウンルスから牛乳を搾乳した。それを葉っぱの袋と同じようにして作ったつるの入れ物に入れた。
そして、レイは群れに混ざっていたウンルスではない魔物を見つけた。
「ちょっと失礼。」
(爪風)
レイはその魔物から黒のサラサラの毛と白のモコモコの毛を採取した。
『爪風』はウィードウィールが使う『装風』に続く、二つ目のスキルだ。『爪風』は風の小さな刃を打ち出しすことができる。大きくはないが切れ味は抜群のためレイはなにかを切るときによく使う。
レイが毛を採取した魔物は獣系ヒツジ類の魔物ヒートテクルだ。ヒートテクルはオスは黒のサラサラの毛を持ち、メスは白のモコモコの毛を持っている。そして、オスは毛がサラサラなほどメスにモテる。ウンルスたちは寒さに弱いためヒートテクルを守る代わりに彼らの毛で温まるというふうに助け合って生きている。スキルは毛を生やすため『増毛』が使える。ちなみに髪の毛を生やしたくてヒートテクの血を飲んで、けむくじゃらになった男の童話があったありする。
そして、レイはオスのヒートテクルの毛に手を突っ込んだ。そうすると毛の中から小さな虫の魔物が出てきた。
毛から出てきた魔物は虫系コガネムシ類の魔物コピミーだった。コピミーは体液に汚れを落とし、つやつやにする成分が含まれており、オスのヒートテクルは自身の髪の毛に付けて髪をつやつやにしている。コピミーはお腹に体液の塊をつけていて、それを石鹸代わりに使うことができる。ちなみに特別なスキルは持っていない。
レイはケーキの素材の他にスケルトンの灰、ヒートテクルの黒と白の毛、コピミーの体液石鹸を手に入れた。そして、次の目的のために装風で空を飛んだ。
レイは大きな大樹の前にいた。
レイはその大樹を「ト、ト、トン、トン、ト、ト」のリズムで叩いた。そしたら、大樹の中心にズズズっと音を立てて小さな穴が開いた。そして、
「だーれーでーすーかーーー。」
と穴の中から少女のようなかわいらしい声が聞こえた。
「俺だけどー。」
レイは声に対して言い返したが、
「俺ってだーれー。」
と言い返された。そして、
「もしかして、お敵様かな?」
「お敵様だとしたら、あたいたち殺される?」
「おスープにされるかも!」
「あたちはおいしいけど、おいしくないよー!!」
とレイを疑っている複数の声が聞こえた。
「困った、、、」
実は声の主はウィードウィールなのだが、レイが最後にウィードウィールたちに会ったのはずっと昔の事なのでウィードウィールたちがレイをわかるはずがなかった。
ちなみに精霊系の魔物は、魔物の中で唯一、人と話すことができる。
レイがどうするか悩んでいるとウィードウィールたちの声が聞こえた。
「リーダー、よぼうかー?」
「リーダー、こわいー」
「おリーダー、おリーダーーーー。」
ウィードウィールたちの声は遠ざかって行った。
「どうしよ」
レイが困っているとレイの真下の地面から何かモコッと出てきた。
「お前は何者だ!」
「おっ!」
地面から幼い少年の声がしてレイは驚いた。
声の主は幼い少年の容姿をして長いアホ毛が特徴的な小人だった。
「あれ?グランドグラム?」
「そうだ!私はサンドラ地区のグランドグラムとウィードウィールの第13871目リーダー。グラだ!!」
グラは胸を張ってドヤ顔で言ったが、幼い少年の顔と声のため迫力に欠けていた。
精霊系ヒト型の魔物グランドグラムはウィードウィールとともに神獣アルタイルベータに初めに生み出された魔物で土のスキルを三つ持っている。グランドグラムは天真爛漫なウィードウィールとは真逆の真面目な性格をして必ずリーダーを決める習性がある。
「んー。なんて言ったらいいのか。」
「どこの馬の骨ともわからん奴を、我らの家を入れるわけにはいかん!!」
「そーだー。」
「お帰れー。」
「おいしくないよー。」
さらにウィードウィールたちが小さな穴からがついたかわいらしい少女の顔をのぞかせて声を出してた。
レイは少し悩んだ後、なにかを思いついたように口を開いた。
「んじゃ、ちょっと見てて」
(装風)
そういうとレイは手だけ風をまとわせた。
「おまえ!それは装風なのか!」
「そーふーってなに?」
「あたちたちのスキルだよ!」
「んじゃ、お敵様はウィードウィールなの?」
「お前らは黙ってろ!」
「「「はーい」」」
グラたちの会話を聞きながら、レイはしゃがんで風をまとわせた手で地面に触れた。
(土土起)
レイはゆっくり地面から手を放していった。すると、
「わぁーすごーい。」
「ぐるぐるだー。」
「おめめが回るーーーーー。」
地面には螺旋状のドリルのような物体ができていた。
それを見たウィードウィールたちは小さな羽をパタパタさせ興奮して穴から出てきた。そして、その物体を滑り台の様にして、滑って遊んだ。
『土土起』はグランドグラムの使うスキルの一つで地面を盛り上がらせて小さな山を作ることができる。レイはこれを装風と組み合わせて、土土起だけでは決して作れない山を作成した。
グラはレイの技を見て驚きを隠せずにいた。
「これは土土起か!なぜ!?」
「どどきってなに?」
「リーダーたちのスキルだよ!」
「んじゃ、お敵様はグランドグラムなの?」
「お前らは黙ってろ!」
「「「はーい」」」
グラたちは先ほどもしたような会話をした。グラは何か思い当たるのか深く考えていた。
レイはそういえばと何かを思い出した。
「あと、一応『ユユ・D』って知ってる、、、、」
レイが『ユユ・D』と口にした瞬間、グララの顔色が急に変わった。
「『ユユ・D』だちょ!!」
グラは声をひっくり返し、呆然とした後、先ほどまでの威厳がなくなり、大量の汗を流し始めた。
「お前たちぃ!この人を案内してくりぇ!私は長に話してくりゅ。」
グラは声をひっくり返たまま、いそいそと地面に潜った。
「それじゃー、一名様ごあんなーい」
そして、木の穴がレイがぎりぎり入れるくらいに開いた。
「こっちだよー。」
「お敵さーん。お早くー。」
「敵じゃないよー。お客様ーだよー。」
「わかった。おお客様だねーー。」
「ありがと。」
木の穴の中には地下に続く階段があり、レイたちは階段を下りて行った。