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初めてのお祝い

 すっかり日が沈んで夜になったころ、小鳥が目を覚ますと彼女の目の前には円形の大きな白い物体があった。

 「ん、、、」

 小鳥が目をこすりながら起き上がったら、小さな光が目の前に現れた。その時

 「おめてどー」

 いきなり『どよーん』とした効果音が付きそうな何とも言えない表情で光の中からレイが現れた。

 「キャーーーーーーーー!!」

 小鳥はいきなりのレイの出現に悲鳴をあげた。

 「・・・ってレイさん。どうしたんですか?」

 だが、すぐにレイだとわかり何とか落ち着いた。

 「いや、笑顔でお祝いしようとしたんだけど。俺、笑顔が苦手で」

 レイは自分の顔をむにむにとこねながら言った。

 レイはなぜか表情を作るのが苦手だった。表情があまりない魔物だったせいか、それとも親の遺伝子のせいか、前者だろうなとレイは思った。

 「お祝い?」

 そんなレイの言葉に小鳥は首をかしげた。

 「うん。たぶんだけど、今日で丁度小鳥は18歳になるんだよ。そして、これがお祝いのケーキ」

 そう言ってレイは目の前の大きなケーキを指差した。ケーキの中心には火のついたろうそくが立っていて、月明かりだけに部屋で小さな光を発していた

 「え、なんで私の誕生日が!?それにこの世界にはケーキなんてなかったのに!」

 突然のサプライズに小鳥はついていけず、あわあわと手を動かし焦っていた。

 「あれ、迷惑だった?」

 レイは小鳥の反応を不安そうに見ながら言った。

 そんなレイの言葉を聞いて、小鳥は体全体をぶんぶんと大きく動かしながら口を開き言った。

 「うれしいですよ!すごくすごくうれしいです。ですが、わからないことが多くて」

 小鳥はレイを必死にフォローした。レイはきょとんとした後はっとした。

 「そういえば、話してなかったけ?申し訳ない」

 レイは小鳥のペコっと丁寧に頭を下げた。

 「でも、まずケーキ食べて自信作だよ!!木のフォークも自信作!!」

 「ふふ。はい!いただきます。」

 レイの表情があまり変わらないのに楽しそうな姿に、小鳥は嬉しそうに笑った。


 「モグッ。そんなことがあるんですか!?モグモグ。」

 小鳥はケーキを食べながらレイの話を聞いていた。

 「そう。だから、いままで転生した魔物のスキルが使える。」

 「信じられませんね。転生なんて、、、モグッ。このおいしいケーキもスキルで作ったんですか?」

 レイは違うよと首を振った。

 「観測眼ってスキルがあってね。それで、小鳥の記憶を視たんだよ。」

 「観測眼って絶滅した魔物トドルクイナのスキルですよね?転生は本当なんですね。あれ?」

 小鳥はケーキを食べる手を止めて、なにかを考え始めた。

 「どうしたの?」

 「私の記憶って、、その、、全部ですか?」

 「うん。そのケーキは小鳥が一番好きなケーキをマネしたし、あと過去にいろいろあったことも知ってる。」

 「そう、、ですか。」

 小鳥は辛そうに顔を歪ませた。

 「だ・か・ら」

 「レぃファン」

 レイは小鳥のほっぺをむにっと伸ばした。

 「俺は小鳥がどんなに頑張ってきたか、どんなにすごい子か誰よりも知ってる。」

 レイはじっと小鳥を見て言った。

 「ふぇ、あの///」

 小鳥の顔は恥ずかしさで真っ赤になった。しかし、真っ赤になったのは恥ずかしさだけではなかったが、今の小鳥は恥ずかしさでいっぱいだった。

 「絶対、俺が小鳥を守る。元の世界にも帰す。」

 そして、レイは小鳥のほっぺをゆっくりと話した。

 「だから、笑って」

 レイは上手くない笑顔を精いっぱい小鳥に作った。

 そんなレイをみて小鳥はクスッと笑った。そして、

 「レイさん。ありがどう、、ございまず。」

 小鳥の瞳からは涙が流れた。小鳥は笑いながら泣いていた。

 「こ、小鳥!!なんで泣いてるの!?え、ちょ、なんかしたの俺」

 そんな小鳥を見てレイは久しぶり、いや初めてかもしれないほど焦った。

 「違うんです、、そうではないんです。ただ、うれしいんです。」

 小鳥は前にケーキがあるのを忘れて、レイに抱き着いた。

 小鳥はただただうれしかった。自分の今までが無駄ではないと認められたような気がして、ただただうれしくて涙か止まらなかった。

 「えっと、あの、その、うわーーどうすればーーーいいんだーーー。」

 この時、初めてレイは人の困るという感情を理解した。

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