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初めての人間転生

 彼が目を覚ますと、とある部屋のベットの上にいた。そして、自分は赤ん坊だとも理解した。

 (この感じはいつまでたっても慣れないな)

 何度も繰り返した事だったが、さっきまで今とは違う生物で生きていた自分がいきなり違う生物の赤ん坊になる感覚は『約100万回』転生した彼でも慣れることはなかった。

 それとも今回は人間になったからかな?と彼は思った。


 彼が考えていると部屋の向こうから、若い女性たちの声が聞こえた。

 「それにしても、どうするんでしょうか?」

 「そうね、王女様が知ったらどう思うか?」

 「でも、王女様なら温かく迎えてくれるんじゃ、、、」

 「あの王女様ならね。でも、ロイドの奴は本当に大変なことをして」

 「仕方がないですよ。私たちもレイナさんのことは応援してましたから。」

 「でも、貴族たちは黙ってないでしょうね。」

 「そうですよねー。」


 (ふむふむ。だいたいわかった。俺は国王が浮気してできた子供で事情があり公表すべきか迷っていると)

 (ということはここは城の中で、あの女たちはこの城のメイドか)

 そして、彼は好都合だと思った。

 (今、俺がここから消えても、公表できないからおおやけに探すこともできないだろうから、、)

 彼は集中した。自分の小さな体に魔力がながれるのを感じながら心の中で唱えた。

 (成長調整)

 そう彼が、『スキル』を使用した瞬間、彼の姿は一瞬で成長し16歳くらいの少年の姿になった。

 (いまいち、調子がでないなー。まあ、このくらいで十分かな)

 もうちょっと成長させたかったが、初めての人間の姿で使う『スキル』はうまくコントロールできなかった。


 この世界には『魔法』と『スキル』という特別な力がある。

 『スキル』とはもともと全ての生物の祖先にあたる神獣アルタイル・ベータがもつ『進化』という力を受け継いだ魔物によって枝分かれし、進化していった力である。

 今、彼の使用した『成長調整』というスキルは植物系大型の魔物シュルートが使用するスキルだった。

 シュルートは季節によって体を成長させたり、若返ったりする。しかし、葉っぱがすべて枯れるか、落ちてしまうと、体がいっきに枯れて死んでしまう。

 

 「うーあーあーんんんんー。」

 「声は、、、出るな。」

 何度も転生した彼は人の言葉をすべて覚えていた。彼は魔物の時から話せてたらなーと思った

 他にも少し体を動かしてみたが、無理やりスキルで体を成長させたにしては異常なく健康そのものだった。


 彼はふと気づいた。

 「そういえば寒いな」

 赤ん坊の時に着ていた服は、スキルを使用した時に破けてしまい全裸の状態だった。

 「別に裸でもいいんだけど、、、、はぁー面倒くさい」

 彼はため息をつき、なぜ人間は常に服を着たがるのだろうか?と考えながら、服を探しに部屋を出ようとしたがメイド達の声が聞こえて、部屋の外にはメイド達がいるを思い出した。

 彼はさっきと同じように魔力を集中させた

 (透明化、透過)

 彼がさっきとは違ったスキルを二つ使用すると、彼の体は透明になった。そして、彼は部屋を出ようとしドアに近づきそのまますり抜けた。


 『透明化』とは虫系コンチュウ類の魔物ムガールが使うスキルだ。ムガールは虫系の魔物で唯一、陸と海で活動できる。そのため、天敵が多くこのスキルを使って身を隠している。

 『透過』とは無機物系蒸気型の魔物スノゲラが使うスキルだ。スノゲラは体が蒸気でできており、一説には無機物系の魔物スライムが蒸発した姿と言われている。


 彼がドアをすり抜け、城の廊下に出ると長髪の女性、ポニーテールの女性、短髪の女性、三人が立っていた。

 「見張ってるのかな?」

 彼がボソッと呟くと、長髪の女性がびくっと反応して、周りを見渡した。

 (あっやばい)

 彼はすぐに口を塞いだ。

 (人間ってこんな簡単に声が出るんだ気をつけないと。)

 いきなり周りを見渡した女性に他の女性が声をかけた。

 「どうしたの?」

 「何かありました?」

 「男の人の声が聞こえたような。」

 二人も周りを見渡した。

 「気のせいじゃないの」

 「部屋の中、確認しましょか?」

 そう言って短髪の女性がドアノブに手をかけた。

 (あーららー)

 彼がこの先に起こる展開を簡単に予想してると、ドアを開けて部屋に入った女性の大きな声が聞こえた。

 「ふ、二人とも!赤ちゃんがいません!!」

 そう女性が言うと、他の二人も血相を変えて部屋の中に入った。

 「うそっ!どこに行ったの!?」

 「しっかり窓は閉めていたはずです!」

 三人はあわてて部屋中を探し回った。


 彼はこのまま他に誰かに知らされては困ると思い、透明化と透過を解き三人の前に姿を現した。

 それに気づいた短髪の女性が悲鳴を上げた。

 「キャーーーー///」

 彼はまあそうなるなと思ったが、この女性の悲鳴が普通とは違う悲鳴に聞こえ違和感を覚えた。

 (なんで顔赤くしてるんだろう?)

 彼が考えていると、ポニーテールの女性が口を開いた。

 「あなた何者ですか!?」

 彼は三人を見ながら言った。

 「言っても信じてもらえなそうだし、面倒だから眠って。」

 (催眠、観測眼)

 「うっ」

 「あっ」

 「あなた、、は、、、」

 最後に長髪の女性は何かに気付いたが、彼のスキルにより三人の女性はその場に倒れ眠ってしまった。

 

 『催眠』とは虫系チョウ類の魔物ムーノが使うスキルだ。ムーノは美しくきれいに光り、夜に活動し自分の周りの生物を眠らせて、餌になる魔力を吸いその魔力で体を光らせている。

 『観測眼』とは鳥系大型の魔物トドルクイナが使うスキルだ。トドルクイナは神獣プリストトルが初めに生み出した魔物の中の一匹で、彼が一番初めに転生した魔物でもある。トドルクイナには三つのスキルがあり、その一つが相手の今までの記憶を観測できる観測眼だ。


 長髪の女性の名はライラ・クローバー。彼女は彼の母親レイナ・ハートの幼馴染で、昔はこのサンドル王国の最強の冒険者だった。しかし、とある魔物と出会い冒険者をやめて城のメイドになっている。

 ポニーテールの女性の名はリンカ・スペード。彼女は国王ロイド・エースの姉であり、この城のメイド長をしてる。彼女は政略結婚させられそうになったが、とある魔物により阻止された。

 短髪の女性の名はルイカ・ダイヤ。彼女は教会で育ち、教会を支援するお金を稼ぐため城のメイドになった。彼女は孤児であった。そんな彼女を助けてくれたシスターが昔、病気になった時があった。その時、薬草を手に入れるため森に入り迷ってしまい危ない目にあったが、とある魔物により助けられた。

 

 「・・・・・・え?」

 彼はライラがまだ冒険者の時、ルイカがまだ幼い時、リンカは間接的に会った時があり、呆然とした。そして、ライラは彼があの時の魔物で、ロイドとレイナの子だと気づいてる気がした。

 (世の中狭いなー)

 と彼は思おうとしたが、自分の転生した数を考えれば・・・・あり得ると思った。

 (魔物は寿命短いからなー)

 彼はそう開き直り、再び透明化と透過を使用して服を探しに部屋の外に出た。


 彼は服を探しながら、さきほどの女性三人を観測して見た記憶を整理していた。

 彼の母親レイナ・ハートはこの城のメイドで国王ロイド・エースとは学校のクラスメイトだった。二人は両想いだったが、政略結婚によりロイドは今の王女と結婚した。しかし、ロイドはレイナのことを諦めきれず不倫にしてしまい彼が生まれた。そして、レイナは彼を産み死んでしまった。三人は悪いことと分かっていながら、彼女を影で応援していた。


 つまり、国王が性欲に負けただけなのでは?と彼は思ったが、彼は今まで感じたことのない、うれしいような、悲しいような、気恥ずかしいような感覚を覚え不思議に思ったが、

 「へっくしゅん!!早く服探さないと」

 今は寒さが勝っていた。

 そして、さっき気づいたことだが裸を気にしていたルイカは彼の容姿がどストライクで、ひとめぼれし、そんな相手が裸だったことで顔を赤くしてたと気づいたが、

 「そんなことより服を」

 寒さが勝っていた。

 そして、彼は風邪を引く前に服を探すべく壁をすり抜けていった。


 しかし、三人の記憶には彼しか知らないことがあった。

 この世界ができた時、二体の生物がいたとされる。『進化』の神獣アルタイル・ベータと『魔法』を生み出し、人類を『創造』した神人デネブ・アルファ。

 だが本当は違った。

 もう一体いたのだった。

 その生物は二体と比べ弱くすぐに死んでしまったが、その生物はまだ生きていた。

 生きていたというより、転生を繰り返し記憶と能力を『継承』していた。

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