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銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第四章 赤い月編
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閑話 黒幕ー女神の視点ー

時系列は若干前後します。


「なぜわらわがこんな目に・・」


わらわは今、絶賛ピンチ状態じゃ。

目の前にある二つの「もにたあ」には真っ赤なローブを着てる奴と銀色のローブを着てる奴が映っている。

この二人のせいでわらわが大事に育ててきたこの世界が変わりそうになっておる。


・・うわ、赤ローブの奴がまた「おーとまた」を作った。

銀ローブを倒せるって言うから作れるようにしたのに、結局倒せずに無駄に数だけ増えてる。

こんなもの、詐欺じゃ!!わらわは騙されただけじゃ!!


・・ん?銀ローブの奴、こっち見てなかったか?

なんなんじゃ、あいつは!?

こんな大事にならないようにと、早い段階で使者を送ったというのに・・。

あいつらはなぜ襲撃しろという命令だと捉えたんじゃろうか?平和に話し合いをしたかったというのに・・。

わらわと親交があった者は全員殺されてしまったし、今の銀ローブの奴とはまともに話し合えそうにない。ここまで来てしまったら排除するしかないんじゃろうか・・。

まさか、使者を送ったときの人選を間違えた?

いや、違う。わらわの判断ミスのはずがない!わらわが不幸なだけなんじゃ!!

そもそも、地上の人間が考えるような天使的な存在がいればこんな目にもあってないというのに・・。


「現実逃避は良くない。まずは赤ローブをなんとかせんと・・」


もっと強くなれば倒せるって言うから「いせかいしょおかん」のときと同じ「しんせえじゅつ」とやらを与えてやったのに、ろくに戦闘すらせずに逃げ出しおって!!これではわらわの仕事が増えるだけではないか。

銀ローブの方も危険なのじゃが、赤ローブは実害を出し始めておる。早急に対応しなければならないのは赤ローブの方じゃろう。


「え~と、一度与えた力を消すには・・」


与えた力を消すなんてやったことないからやり方もわからん。そもそも、消すくらいなら最初から与えるなってことだし。


あ、小さい村が丸々乗っ取られおった。拠点にするようじゃな。

・・わらわは観てることしかできんのお。

しょうがないのお。ここまで悪化してしまったものを今更どうにかしろと言われてもできんわ。

そうじゃ!!本を読めばわかるかもしれん。ちょうど、読み途中の「らいとのべる」があるから、読み進めていこう。そう、これはあくまでも勉強じゃ。




ぺら・・

ほおほお、幻想をぶち壊す、か。いい言葉じゃ。今度、「いせかいしょおかん」するときに言ってみよう。

ぺら・・

シスターズ?よくわからんが分身を作るのはいいアイデアかもしれん。分かれていれば、誰かが死んでも消滅はしないじゃろう。

・・・・死ぬ?・・はっ!今はあのローブ男たちの対策を考えていたんじゃった。忙しすぎて忘れておった。


でも、正直言うと考えたところで力を消す方法がわかりそうな気はまったくしない。

最終手段は手元にある紙のステッキ・・じゃなくて神のステッキを一振りすれば、全部吹き飛んで一見落着となるじゃろう。銀ローブの方も同時に消せるしで一石二鳥ではないか!

世界自体は壊れてしまうがもう一度作り直せばいいだけの話じゃ。こんどはおなじ失敗をしないように気をつければ何の問題もない。

よし、ステッキを振ろう!!・・じゃが、その前に一度身を清めよう。何といっても神のステッキじゃからな。清い体でないと。



・・ふう。気持ちよかった。やっぱり風呂上がりの「こおひいぎゅうにゅう」は最高じゃな!!

なんで異世界にはあってこっちの世界にはないのかが不思議でしょうがない。

さて、体も温まったし今日は寝るか。


ーー


「ふゎぁぁぁ」


今日もぐっすり寝れたし、いい日になりそうじゃ!!

え~と、何してたっけ?


・・あっ!!ローブ男たちの対策を考えていたんじゃった。疲れすぎて忘れておった。


「なんだか良い解決策を思いついていた気がするんじゃが・・・」


また最初から考えんといかんのか。

どれもこれもあの銀ローブの奴の所為じゃ!!

せっかく錬金術と魔術を分離させたというのに、こうも簡単にもとに戻しおって!!

今日はうさはらしに銀ローブのサンドバックでも作ろうかの。

ディテールにこだわった、最高級の一品を作り上げてやるわ!


ーー


「よし、出来た」


半日くらいかかったが、実際にやられる動作をしたり土下座したりする動くサンドバッグをこんな短い時間で作れるのはわらわくらいじゃろうな。


「じゃが、完成度が高すぎて殴る気が失せるな・・」


下手に殴って壊れてはもったいない。適当に部屋の隅で土下座でもさせていよう。

わらわがひょいと指を振れば、たちまちどんなものでも移動させられる。

あの辺りがいいかの。傷つけないように慎重に設置して、土下座をさせる。


「ふむ、むなしくなってくるのは気のせいじゃろうか?」


半日も作業したからだいぶ疲れた。


「今日はもう寝よう」


必死に謝り続ける銀ローブのサンドバッグを見ているのも一興なのじゃが、とりあえず寝ることにしよう。

ああ、だんだん眠くなってき・・

「「ドゴオォォン!!!」」


「な、なんじゃあ!!?」


ものすごい轟音で目が覚めたのじゃが・・

「「ドゴオォォン!!!」」


ま、またじゃ。この音はどうやら下から鳴っているようじゃな。

少し眠いが確認しないとうるさすぎて寝づらいわ。

最近異世界から取り寄せた「もにたあ」はこんな時に役立つのお。


「えーと、どう使うんじゃったか」

「「ドゴオォォン!!!」」

「うわぁっ!」


轟音に驚いて思わず「もにたあ」の一部をタッチしてしまった。

じゃが、それが功を奏したようで、うまい具合に部屋の下の様子を見ることができるようになった。


「なんじゃ、これは」


あの銀ローブの奴とその仲間がこっちに近づいてきおる。前にウィスタームの家の者が来ていたのと同じ方法のようじゃ。唯一違うのは、わらわの許可なく無理矢理神域に入ろうとしていることくらいだろうか。


「ど、どうすれば・・」

「「ドゴオォォン!!!」」


もうだめじゃ、このままだと床の一部に穴が開く。

すでにヒビが入り始めているから、わらわが上でジャンプでもすれば簡単に穴が開くじゃろう。少しやってみたい気もするが、下手すると下から銀ローブの奴が床を突き破って攻撃してくるかもしれんし、我慢しよう。


「「ドゴオォォン!!!」」


とうとう穴が開いてしまった。ひび割れていた床材が四方八方へと飛び散っていった。

こんな細かいところまでいやな奴じゃな。後で誰が掃除すると考えておるんじゃろうか?


あの銀ローブの奴は床が壊れるのと同時にわらわの部屋に入って来た。

そいつは部屋をキョロキョロと見回し、わらわがここにいるのを見つけるといきなり話しかけてきおった。


「女神よ、もし自分が犯した過ちに気付いているなら、俺に従え。もし気づいていないなら・・」

「いないなら??」


従わなくていいのか!?

なら、嘘でも気づいてないと言って方が得というものじゃろう。

この際、奴がわらわに対して敬語を使っていなくてもいい。奴から発せられるオーラから何かやばいものを感じるのじゃ。下手に逆らったら殺されそうじゃ。

じゃが、気付いていないと言えば従わなくてもいいのなら別に奴の答えを待つでもないか。もう言おう。


「わらわは気付いて・・」

「気づいていないなら強制的に従わせる」

「気付いておる!!わらわは過ちに気付いておるぞ!!ほら、見た目からもわかるであろ?」


強制的にってところでものすごい殺気がとんできたぞ!?もし従わなかったら殺されていたかもしれん。もっと早く分身を造っておればよかったかもしれんのお。

じゃが、赤ローブを無力化するという目的はわらわも此奴も同じじゃ。赤ローブを倒すところまでは従うのも悪くないかもしれん。赤ローブを倒した暁にはわらわが直々に銀ローブを倒してやろうかの。


それよりも、ここ数日の間、部屋がずっと真っ赤なのをなんとかできんかのお?

一応この章が最終章のつもりですが、エピローグ章を追加するかもしれないです。

ちなみに、女神の一日は人間の一日とは若干違います。効果音を付けるのって難しい。


次回からは元の視点で少し時間を巻き戻して再開していきます。


次回は来週の土曜日の零時に投稿します。

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