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銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第一章 ギルド編
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ギルド

今後、一度も登場させる予定の無いキャラ、設定を削除しました。

ストーリー上は特に影響がないと思われます。

錬金学園の入学試験は三月の下旬である。

今は二月の中旬だから大体一か月くらい時間がある。

これから入学試験までは二人とも王都内の宿に泊まり王立図書館で勉強することになる。


そして勉強し続けて時は三月の中旬の朝、コンフィアンザがシルイトに一つ助言をした。


「入学金ってどうするんですか?」


その一言にシルイトは固まった。


「・・それ金かかるんだ?」

「もちろんです!受験勉強がてら錬金学園の事も勉強しましたけど授業料は王国が出してくれるのでいいですが教科書とか錬金術の練習用の台とかは自分で買うんですよ」

「なるほど。ちょっときつい可能性はあるな」


ウィスターム家が名門魔術貴族だったおかげで信じられない額の遺産がシルイトの手に残されている。

しかし、そのお金は全て急な出費でお金を調達できないときだけ使うとシルイトは決めた。

現に今までの生活費も全て二人が危険指定の討伐によって得た報酬からまかなっている。


ちなみに生活費を稼ぐときの活躍で二人は少し有名だったりする。


入学試験自体は無料なのだが入学金は一般的な学力しかなければ平民では払うのに少し苦労するくらいの額が必要である。

そのため払うのが困難な平民は自分の才能を買ってくれる貴族を見つけて資金援助してもらうのが常である。

あるいはこれからシルイト達がやろうとしているように自力で金を稼ぐかだ。


「それでどうやって資金を調達するつもりですか」

「まあ、やっぱりギルドで稼ぐしかないよな」


ちなみにこの前二人が襲撃して倒した人たちは全員殺してしまったためギルドには連れていけなかった。

魔物はともかく犯罪者といえども人なので殺すと法律違反である。

もっとも当時の状況からして正当防衛の範疇には収まるがそれでも居心地が悪くなるのは避けられなくなる。

今頃は王国の治安を守っている王国騎士団が犯人捜しをしているのだろう。

もちろんシルイトもコンフィアンザも捕まる気はない。



こうして二人は試験まであと一、二週間しかないのにもかかわらず魔物討伐による金銭稼ぎを開始した。


思い立ったが吉日ということでさっそくギルドに向かう。


ギルドへ向かう際は素性がばれないよう二人は必ずコンフィアンザが編んだ銀白色のローブを着ることにしている。

ローブを編む際の材料はシルイトが錬金魔術で作った銀白色の金属繊維である。


ギルドは王都内にある。

本来なら家から王都まで歩いて二時間くらいかかるのだが、王立図書館で勉強するために王都内の宿に泊まっていたため三十分程度で済む距離だ。


王立ギルドではトレーダーは全ての危険指定の情報を入手できる。

そのため初心者が最強クラスの危険指定に挑むことも可能である。

だが怪我は自己責任なので注意が必要だ。


一方で危険指定はDからSSSまでの七つにランク分けされている。

トレーダーは自分の身の丈に合った強さの危険指定の情報をギルドから聞いて討伐に向かう。

だいたいの目安としては、一人で討伐できるのはSSランクまでが限界で普通のトレーダーはSランクの危険指定は五人以上で組むのが理想と言われている。


二人は常日頃から錬金魔術の為の出費が多いためAランクや場合によってはSランクの危険指定を討伐することもある。


「ますた、今回はどのランクの危険指定を討伐する予定ですか」

「Sランクを計二体位討伐すれば金は足りると思うんだが」

「了解です」


受験勉強は大丈夫かと一瞬思われるのだが、二人はもともと錬金魔術師とそのアシスタントである。

錬金魔術というのは錬金術と魔術のいいとこどりのようなものだ。

世間ではどちらか片方を習得したものはもう片方を卑下する傾向があるが、二人は錬金術も魔術も一般的なレベル以上のものをもっている。

基礎知識がある分、多少金稼ぎに時間を使っても何の問題もない。


前方にギルドが見えて来た。

ギルドは王国内であれば全て同じデザインの建物らしい。少し無骨なギルドの建物は朝日に照らされてまぶしく輝いている。

両開きのドアを開けると朝だというのにもかかわらずすでにかなりの人数が壁に貼られた危険指定書を読んでいた。


BランクとAランクの一部の危険指定は全て壁に貼られた危険指定書に書かれている。

だから大抵のトレーダーはギルドの受付を危険指定の売買にしかつかっていない。


一方で二人がこれから討伐しようとしているのはSランクの危険指定である。

Sランク以上は受付で直接情報を聞く必要がある。

受付の窓口は入口を入って正面奥の左右の壁に合計六個ある。

その中の一番手前の一つへ二人は足を進めた。


歩いていると周りからひそひそと声が聞こえてくる。

たまに急用で金が必要な時に危険指定を討伐しまくったせいで二人は通り名のようなものがついており、知ってる人は知っているくらいは有名になっている。


そのまま二人が受付まで歩くと、ギルドカードの提示を求められた。

もしギルドカードにウィスタームという本名の家名が記されていれば受付嬢はシルイト達を二度見はするだろう。ウィスターム家で最後に生き残っている一人は素性も明かされていない謎に満ちた存在だからだ。

しかし、実際はそんなことはない。

二人とも偽名を使って取引しているためである。

シルイトがシルウィス・ワイバー、コンフィアンザはフィア・ウィスターということになっている。

ただし周りにはどちらがどちらかはわからないだろう。


もっともこの窓口での取引は秘密厳守を謳っており、受付嬢になる際に魔術によって、たとえ同じ受付担当の人同士でも情報交換できないようになっている。

そのため本名でも比較的安全なのだがシルイト達は万全を期しているというわけだ。

それにシルイト達は銀白色の操者としてある程度名前が通っており、偽名でも知られるとめんどくさいことになるため受付の秘密厳守はちょうどいい。


「確認しました。しまって大丈夫です。それではどのランクの危険指定の情報をご所望でしょうか」

「Sランクを二つで頼む」

「少々お待ちください」


そう言うと受付嬢は横にある引き出しから何枚か紙を取り出した。


「どのようなタイプの危険指定がいいですか」

「飛行は苦手だからそれ以外ので」

「ではこちらのラジネスやアロガンシアはどうでしょうか」


そう言って受付嬢が見せて来た二枚の紙には危険指定の情報がのって・・いなかった。


「ちょっと、これ情報が少なすぎるんじゃないですか」

「銀白色の操者さんならできると思いまして」


少し挑戦的な目つきでこちらを見上げてくる。

カチャリと音がした。

横を見るとコンフィアンザが銃を構えて受付をにらみつけていた。

コンフィアンザから普段の比ではない殺気があふれ出る。


「嫌な言い方をしないでください」


コンフィアンザが鈴が鳴るような声で淡々と告げた。

コンフィアンザの殺気からかギルド内がしんと静まり返る。


「す、すいません」


この状況に耐えきれなくなったのか受付嬢は素直に謝った。


「いいよ、別に。あんたはおかしなこと言ってないから。どちらかというと今のはフィアの方が悪いね。俺のために怒ってくれるのはうれしいけどすぐ銃を取り出す癖は直した方が良いと思うよ」

「反省します」

「ああ、いいよ。あともうそのラジネスとアロガンシアでいいから危険指定書渡して」

「どうぞ」


シルイトは半ばうんざりしながらほぼ何も書かれていない二枚の紙を受け取ると未だに怒りが冷め切らないコンフィアンザを連れてギルドを出ていった。

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