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銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第一章 ギルド編
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ギルドと学園

繰り返し襲撃してきた敵の本部を壊滅させた日の午後、一仕事終えた二人はすでに家でくつろぎモードに入っていた。


「今日はずいぶんと血なまぐさい感じになったな」

「ますた、体調は大丈夫ですか?」

「まあ、俺はそういうの慣れてるからな」

     

ウィスターム家は近年まれにみる名門の魔術師の一族だった。

だったと過去形なのは現当主である少年、シルイト以外の家族が皆殺しされたからである。

事件の捜査を行った王国騎士団いわく、強盗の仕業らしいが真偽は定かではない。


原因はともかくそんな血塗られた事件が周りで起こっていたシルイトは血に対する抵抗感が人より鈍くなっていった。

また、殺気を扱う技術を身に着けることができるようになった。

コンフィアンザにも伝授した殺気の技術は相手を威嚇したりひるませたりする効果がある。


「すいません、ますた」


そんな彼の特殊な成り立ちを知っているコンフィアンザは彼を悲しませてしまったと謝罪する。


「いいって。それよりも今日決めたことがあるんだ」

「黒幕を倒すことですか?」

「確かにそれも少しは含まれてるけどちょっと違うよ。例のブラッキーっていう人、実は実在してるんだよ」


その言葉を聞いたコンフィアンザは驚きを隠せなかった。

裏社会での依頼は偽名を使うのが当たり前であり方々で別々の偽名を使うことも多いため滅多に個人を特定することができないからだ。


「王立錬金術学園って知ってるかい?」

「知識としては知っています」


王立錬金術学園、通称錬金学園と呼ばれるその学校は王国内の錬金術師育成のために王国政府が自ら設立したもので王立魔術学園とならぶ国の二大学校である。

十五歳から入学を許され三年かけて他国家にも通用する錬金術師を育成する。


「そこにブラッキーが在学しているっていう情報は入手しているんだ」

「何故知っているかは教えてもらえますか」

「ブラッキーはある犯罪組織の二大ボスの一人なんだよ。それでたまたまそんな情報を入手したんだ。さきのダルス・エーゼンのときと似たよう方法で得た情報だよ」

「なるほど、しかしそれにしてもなぜ急に入学なんですか。情報を探るにしても入学しなくてもできそうですし、在学中という情報自体が罠の可能性もありますよ」

「まあ、情報をとるだけでもないよ。錬金魔術には錬金術と魔術の両方の技術が必要なのはわかってると思う。そのうちの魔術は家の書物を漁ればいいんだけど、錬金術の方は情報が不足してるんだよ。だから多少の罠なら問題ないし、どうせなら二人で入学しようかと思ってね」


ちなみにシルイトは自分が造った錬金魔術を徐々に世間に広めていこうと考えている。

そしてその最初の一歩を錬金学園から始めようと考えているのだ。


「もしかして入学の邪魔を排除するために襲撃したんですか」

「ああ、そうだよ。今日のことでひとまずこの家も安泰だろうしね。もちろん防衛用の措置は新しく作るけど。それで、どうだい?錬金学園」


確かにシルイトは今年で十五歳になるから入学可能だろう。

しかしコンフィアンザは彼が十三歳の頃に作られたため容姿は十五歳近くでも実年齢は二~三歳程度だ。


「ますたは入学できるでしょうけど、私は身分証明書もないですし、年齢も足りないのですが」

「身分証なら王立ギルドでもらった奴があるだろうけど、実質必要ないと思うよ。学園は才能のある人材を求めている。もしそういう人材が身分証をもっていないような平民だったとしても入学させるだろうからね。それに入学さえすれば学生証が身分証として使えるよ」


エスカメシオン王国ではある程度の身分制がしかれている。

トップである王族を除くと実力、財力ともに魔術貴族が最上位、そこから錬金貴族、一般貴族、平民、の順となっている。

実際の書類上は魔術貴族と錬金貴族と一般貴族に違いはなく総じて貴族として戸籍に登録されるが国民の大半はそれぞれを区別して呼んでいる。

シルイトの血筋であるウィスターム家は超がつくほどの名門魔術貴族だったが盗賊によってシルイト以外の直系の血筋が全て途絶えたので現在では貴族から除外されてしまっている。


王立ギルドとは、犯罪者や魔物などを倒した際に持ち込むと報酬を払ってくれる機関である。

ちなみに犯罪者や魔物などはまとめて危険指定と呼ばれている。

ただ、そのサービスを受けるにはトレーダーとして登録しなくてはならず、錬金魔術の実験のためにお金が必要だったシルイトとコンフィアンザは登録してギルドカードをもらっていたのだった。

ギルドカードには偽名で登録してある。

これはギルドにはよくあることで稀に自分の名前を知らないものも登録しに来るためそういう人に対してはその場で名前を考えるらしい。


シルイトが偽名で登録するのには彼の姓がウィスタームであることに理由がある。

シルイトの両親や保護者など、ウィスターム家の主要な人間は俺が9歳の頃に全員死んでいる。

いずれも火事や事故で死んだのではない。

他殺だ。

しかし、王国騎士団曰くただの盗人が犯行現場を発見したウィスタームの人間を殺したらしい。

当時、王国で一、二を争うほどの名門魔術貴族だったウィスターム家の人間がただの盗人に殺されて貴族からも除外されるという事件が起こってからはウィスタームは馬鹿にされる対象だった。

もっともウィスターム家は今やシルイトしかいないため表面的には忘れ去られているがいまだにシルイトがウィスターム家だとわかると馬鹿にしてくる人間もいる。

そんな無駄な言い争いを避けるために偽名を使っているのである。

コンフィアンザの方はというと単純に世間にほとんど認知されていない人工生命体であると判明されると面倒なことになるからである。


ちなみにトレーダーが討伐する危険生物の中でも圧倒的に数が多いのが魔物である。

よってギルドでの金銭取引の多くは魔物の売買である。


「ギルドカードや学生証って身分証として使えるんですか」

「王国内だけならな」


この世界では複数の国が存在しておりその中でもエスカメシオン王国が最大である。

しかし、他国への牽制のために様々な国が独自でギルドを作って腕利きの人材を集めている。

だから王国内のギルドの情報は他国には共有されていないためにギルド証は王国内のみでしか使えないのだ。

逆にいうと王国内ではギルドカードは身分証として使えることになる。


「知りませんでした。でも、そういうことなら大丈夫そうですね。ますたの命に従い入学します」


コンフィアンザがうなずくとシルイトは満足そうにうなずきながらこう言い放った。


「もう入学試験を受けるって登録はしてあるから合格するためにこれから受験勉強ね」



ギルドと学園は王道ですよね。受験生はがんばれ!

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