表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第二章 学園編
25/87

課外授業 その1

「女神、ですか」


時は夕暮れ、リクトから情報を引き出し何事もなかったかのように少し遅れて授業に出たシルイトはいつもの宿でコンフィアンザと話し合いをしていた。


「あの口ぶりから察するに堕ち人には全員にそういう存在がついていそうだな」

「何者なのでしょうか」

「まだ想像の域を出ないけどなんとなくわかる。実は今まで少し疑問に思っていたことがあるんだ」

「といいますと?」

「堕ち人っていうのは異世界から偶然こっちの世界に来た人間だっていうのは周知の事実だ。でも、それならなぜ人間だけがこちらの世界に来るんだ?」

「それは・・」


何かを言いかけたコンフィアンザを手で制してシルイトは先の言葉を紡ぐ。


「うん、ほかの動物には知能がないとでも言おうと思ったんだろう」


正解だったのかコンフィアンザはうなずいた。


「はい。例え牛や馬などが堕ちて来たとしても自らがそう言えるくらいの知能がない限りわからないと思います」

「そこ、そこがそもそもの疑問点なんだよ。異世界の生物が全てこの世界の生物と同じ形だとどうしてわかる?もしかしたらタコのような生物が高い知能を持っているかもしれない。それなのに異世界から来たとされる生物はみんな人間の形をしている」

「確かに。そういわれるとおかしいですね」

「そうだろう。俺は何者かによる作為めいたものが働いているのではないかと少し前から考えていた。そしてどうやらそれは当たりらしいな。人間なのかそれに近い別物なのかはわからないが誰かが異世界からこの世界に人間を呼び偶然なのか意図的なのかはわからないが摩訶不思議な力を与え何かを起こそうとしている」

「敵ですか?」

「今のところ断定はできないがかなり敵に近い存在であるはずだ。巧妙にリクトを誘導し俺と戦わせるように仕組んだ。少なくとも警戒はしておいた方が良いだろう」


シルイトの脳裏にはリクトが話していたニタニタ笑いの二年生女子のことが頭をよぎったがこの場では話さないことにした。


「それは女神という存在にということですか?」

「それもあるんだが、堕ち人全体に対しては一応警戒しておいた方が良い。堕ち人全員が女神の使徒と化す場合もある」

「女神に操られているかもしれないということですね」

「その通り。それと・・・」


こうして二人の夜は更けていく。





シルイト達が入学してから1か月が経過した。

今日は担任の先生からは翌週、1つの行事があることを伝達された。

その行事とは新入生薬草採集授業。

新入生が何人かで王都の南一帯に広がる慈愛の森に入り一般的な回復薬であるセミキュア作成のための薬草、セミキュアハーブを15個探して採集するというものだ。

対外的には課外授業であるが実質新入生のレクリエーションといったところだろう。

基本的に同じクラスの人と2、3人でパーティーを組む。

ただし、それぞれのクラスに1人いるトップだけはクラス間の協調性を高めるために他クラスのトップとパーティーを組むことになる。

説明の締めくくりとして担任の先生はシルイト以外の生徒に向けて来週までにペアを作っておくようにと告げ、シルイトにはこの後クラスのトップ同士で集まりがあると告げて教室から出ていった。


解散後、いつもと同じ調子で荷物をカバンにしまったシルイトはさっそく教室を出て指定された集合場所へ向かった。

シルイトがつくとそこには既にリクトともう1人の男子生徒が集まっていた。

シルイトが来ても特に会話や挨拶もなく無言のまま3人で待っているとしばらくしてコンフィアンザがやって来た。


「っ!ますた!」


シルイトを見つけたコンフィアンザはパァっと花が咲くような笑みを浮かべ、とてとてとシルイトの隣まで歩いてそこで立ち止まった。

シルイト越しにちらっとリクトがコンフィアンザの方を見るがすぐに目をそらす。

もう1人の男子はわれ関せずと目をつむって腕組みをしている。


最後にやって来たのはファナティス・カーディオットだった。


「リクト様!遅れてしまい申し訳ありませんの・・」


少し落ち込みながらもリクトを見ると少し表情が明るくなった。

やはりこの前の退学を迫った件はリクトに好意を抱いていたファナティスがコンフィアンザに嫉妬したからなのだろう。

リクトはというとファナティスからの好意に気付いているのかいないのか、まんざらでもないような表情で気にすることはないと話していた。

リクトを見て表情が明るくなったファナティスだったがその後シルイトの顔を見て驚いた表情になる。


「ワ、ワイバーさんはどうしてこんなところに?ウィスターさんに同伴してきたということですの?」


シルイトもファナティスが来たことに多少驚いてはいたがファンティスの問いに神妙な顔をして首を振った。


「いや、違う。実は俺、Eクラスのトップなんだ」


Eクラスと言ったところで腕組みをしている男子がふんと笑ったがファナティスは気にせずに会話を進めた。


「あら、そうでしたの。意外でしたわ。私はBクラスのトップを務めておりますの。よろしくお願いしますわ」

「ああ、改めてよろしく」


一瞬リクトの表情が強張ったが誰も気が付かなかった。

それから少しして先生が1人やってきてペア決めが始まった。



結果的に決まったパーティーは以下の通り。


ファナティス・カーディオット&リクト・ユーガミネ&マレント・リサーバート


フィア・ウィスター&シルウィス・ワイバー


マレント・リサーバートというのはDクラスのトップである。

集合場所でずっと腕組みをしていた男だ。

コンフィアンザと二人の方が何も隠す必要もなく採集できると考えたシルイトは歓迎したがファナティスは若干不機嫌そうな顔をした。




Dクラストップのマレント君は設定上いいキャラをしているので今後も登場させたかったです。(閑話として入れるかも)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ