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銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第二章 学園編
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入学式のその後

入学式の翌日。

新入生は校内案内や部活動などの紹介をやり、午前中に解散になる。

在校生はそのあいだに始業式を行う。


シルイトとコンフィアンザは登校もそれぞれ任意のタイミングで行くことにした。

のだが、コンフィアンザがシルイトの登校とタイミングを合わせたため結果的にいっしょに登校することになった。


路地裏を抜け大通りを歩くと遠くに学園の門が見えてくる。


「ん、あれは・・」


門の傍らにリクトが立っているのを発見したシルイト。

リクトはシルイトの存在には気づいていないらしく左右をきょろきょろと見回しながら門の左側で腕組みの状態で仁王立ちをしている。


昨日さんざんしつこく話しかけられていたコンフィアンザはというと、同じく昨日言った無視をするという発言を守るべくなにも気づいていない様子である。

あるいは本当に昨日会ったことを忘れてしまっているのかもしれない。


どちらにせよリクトが少なからず好意を抱いている相手であろうコンフィアンザと自分が一緒に登校しているのを見られるのはまずい。

そんなことを考えたシルイトはとりあえず少し早めに歩いてコンフィアンザと距離をとることにした。

コンフィアンザと距離を開けて歩くことで他人感を出して厄介事から逃れようという魂胆である。

しかし、コンフィアンザも早歩きで追いついてくる。

結果的に二人して横並びで早歩きという謎の構図になってしまった。

次にシルイトはガクッと速度を落として道のわきへ行きカバンを確認しだした。


「ああ、コンフィアンザは先に行ってていいよ。また宿で集合な」


暗に先に行けとのことである。

しかしコンフィアンザは依然として動かない。


「いえ。ますたの用事が終わるまで待っていることにします」


考えてみれば当然のことである。

コンフィアンザと一緒にシルイトが家を出た時点でこうなることはすでに決まっていた。


もうあきらめてコンフィアンザと一緒に学園へ行くことにするシルイト。

いつの間にかコンフィアンザはシルイトの手を握り離れまいとしてしまった。

一方でシルイトはリクトを警戒しているせいか気が付いていない。

なんだかいつもよりフィアンとの距離が近い気がする、などとぼんやり思いながらシルイトが学園の門に近づくとリクトもシルイト達に気が付いたようである。


「おい!昨日の奴か!ウィスターさんから離れろ!」


わりとガチな感じで不機嫌な顔をしている。

そして対するシルイトは何かをあきらめたような面倒くさそうな顔。

コンフィアンザは相変わらずリクトの方に一切顔を向けることなくシルイトの手を握りながらシルイトの方を少し上気した顔で微笑みながら見上げている。

何の修羅場だろうか。

シルイトはこの状況を乗り切るため口を開いた。


「え?ウィスターさんって?」


どうやらシルイトはコンフィアンザがいない体で話を進めることでうやむやにしようという魂胆である。

この段階でシルイトは手を握られていることに気が付いたが今更遅いと振りほどいたりはしない。

そしてコンフィアンザはシルイトにむしろ近づきながらもリクトの事は完全に無視している。


「お、おまえがくっついてるその可愛い女の子のことだ!」

「う~ん、俺にはなにもないように見えるんだが。リクトの勘違いじゃないか?」

「な!?そこにいるじゃないか!」

「ひょっとして錬金術の調合を間違えて幻覚剤を作っちゃったとか」

「そんなわけない、ほらそこにいるじゃないか」


そう言うと、リクトは自分が正しいと証明するためにコンフィアンザに近づいていく。

コンフィアンザのところまであと五歩くらいになり手を伸ばすリクト。

するとコンフィアンザが強烈な殺意を放出。

シルイトに一切気付かれることなくリクトにのみ殺意が襲う。

思わず足が止まってしまったリクトにシルイトも少し首をかしげるがこれ幸いにともう行くと言い残して先に進んだ。

後には悔しさに顔を歪ませシルイトの後姿をにらみつけるリクトが残されていた。



建物に入り三階まで上がるとA組の教室は廊下の左端、E組は右端にあるためそこで分かれることになる。


「もう、あんまり敵をつくるなよ。いろいろと面倒だし」

「善処します」


言いつけを遂行する気が感じられない返事を聞いたシルイトは特に言及することなくそのままE組の教室へ向かった。



シルイトがドアを開けると両脇にはパルテとイレハが立っていて挨拶をしてくる。

同じようにおはようと返したシルイトは教室内が昨日とは打って変わって静まり返っていることに気付いた。


「えーと、これは・・」


ただ静まり返っているわけではなく全員が一様にシルイトの方を警戒のまなざしで見ている。

具体的にはいきなり前置きもなく首筋に鎮静剤を打ち込む男を見るような目で見ている。


とりあえずこの視線を無視して自己紹介をしようと考えたシルイトはパルテとイレハ以外の食らうメイトに向き直った。


「あー、と、俺はワイバーだ。このE組のトップを務めることになった。昨日のアレは一応謝罪しておく。だが、今後も昨日みたいに暴れたりうるさく騒いだりした奴は問答無用で物理的に黙らせていくからおとなしくしていろ。以上だ」


謝罪の意思が全く感じられないどころか若干脅し気味で自己紹介をしたシルイトだったが終わってから周りを見回してみると皆ぶるぶると震えている。

例外としてパルテとイレハだけはキラキラとした尊敬のまなざしでシルイトを見つめていたが。


ともかく、そんなわけで例年とは一味変わった風に仕上がったE組は静かにホームルームを迎えた。

その様子に担任の先生が驚いていたのは言うまでもない。



今日の予定はまず担任の先生主導の学校見学である。

例年のE組ならば暴れまわってそれどころではないのだが、今年はみんなが粛々と担任について行っておりD組よりも断然静かであった。


学校は大きく分けて生徒棟、教師棟、実習棟、部活棟というふうに用途別に分かれている。

生徒棟には全学年分の教室が存在し基本はそこで授業を受けることになる。

教師棟には先生のプライベートスペースや科目別の準備室などがある。

実習棟は物理実験室や薬品実験室、兵器実験施設など特別授業用の実験設備がそろっており、体育館もこれに含まれる。

部活棟は学園に存在している各部活動の部室がそろっている。


以上が大体の学園の設備だ。

説明を聞きながらシルイトは広いものの複雑な作りではないので迷うことはなさそうだと安心した。



その後は部活紹介である。

これに関しては特にシルイトが興味をもったものがなかったので割愛させてもらおう。

おおざっぱにいうと、文化系の研究系部活などから運動系の実戦系部活などまでさまざまなものが存在する。

シルイトはいずれも入る気はないため、シルイトが部活動をするとしたら新しく作ることになるだろう。


そうして学校の紹介を終えて解散となったシルイト達。

今日もシルイトはパルテとイレハにいっしょに帰ろうと誘われたのだが断った。

代わりにシルイトのところにやって来たのはコンフィアンザである。


「ますた、お待たせしましたか?」

「いや、全然待っていないよ。それじゃあ行こうか」


デートの待ち合わせのような会話をしてシルイト達は一階へと足を運ぶ。

といっても宿に戻るわけではない。

昨日とは違い今日は在校生も学校に来ているのでブラッキーを探そうという目論見である。

一階まで下りたシルイト達はとりあえずきょろきょろと最上級生の顔を見回しながら廊下の端から端まで歩いてみた。

ちなみに、学年はネクタイの色で判別可能である。

しかし、ブラッキーの特徴と言ってもいいニタニタ笑いの女を発見することもできなかった。

一応ティンクチャーの名前を聞いてみたが知らないらしくそこでブラッキー捜索はお開きになった。

おそらくブラッキーの方も偽名を使って入学しているのだろう。

この日は珍しく下校もシルイトとコンフィアンザが2人一緒となった。


その後ろ姿を一人の女子生徒がニタニタしながら見ていたことに二人は気付かなかった。



「結局見つかりませんでしたね」

「そもそも第三学年かどうかも定かじゃないからな。聞いた情報は今年の段階でブラッキーが在学しているってことだけだから、もしかしたら一年生かもしれないし」

「たしかに。すでに入学が決まっていたという説もありますね」

「その通り。まあ、そこまで気をはる必要もないと思うけど」



こうして一日、また一日と過ぎていき特に何もないまま平和な日々が過ぎた。




事件が起こったのは入学してから一週間後である。


とりあえず学園ということで部活を登場させましたが、シルイト達がどこかの部活動に入る描写は書かない予定です。書くとしたら余裕があるときに閑話のような形式にしたいと思います。

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