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銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第一章 ギルド編
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アロガンシア討伐

~オリジナル視点~


アロガンシアはそもそも分類上で言えば魔樹というものに分類される。

突然変異によって食肉性、幻惑性、半不死性の性質を得た少し凶悪な樹木に過ぎない。

故に、その見た目も全体的に色が黒いだけの木である。

一見すると食肉に必要な栄養口が見当たらない。


しかし油断するとすぐに幻惑物質によって命を奪われるだろう。

現にシルイト達もコンフィアンザの物理結界を貼ったうえでローブに隠ぺいの効果を付与している。


「どうして根っこと同じように溶かさないんですか?」

「一応討伐の証拠を残さないといけないんだよ。そのためにコイツが幻惑作用のある物質を分泌してる部分をギルドの方に持ち帰れば十分かなと思ってね」

「なるほど」


一応過去に討伐の記録もあるが、いずれも遠方の幻惑が効かないところからの完全焼却処分でいまだに幻惑物質の分泌の謎は明かされていない。

ここでシルイトが持ち帰ればアロガンシアの討伐もより楽になるだろう。


「ということで、まずは・・・」


シルイトはそこまで言うとアロガンシアに向けて猛烈な殺気を放った。


「ますた、なにを?・・・っ!」

「うんそういうことだよ」


アロガンシアは樹木のようだった自らの容姿をまるでダンゴムシのようにまるめて防御の姿勢を作っていた。

シルイトは幻惑物質の分泌腺こそがアロガンシアが一番守るべきものだろうとあたりを付けたのだ。

そのうえで殺気を放つことでどの部位を守るかでどこに分泌腺があるかを見極めようとしたのだ。


シルイトの作戦は成功。

アロガンシアは樹木の一番上の部分をくるくると巻いて一番内側の位置にした。

これはアロガンシアのてっぺんが幻惑物質の分泌腺であることを意味する。


「どうりで今まで遠距離からしか攻撃できなかったわけだ。高いところから散布されたんじゃあ低いところと比べて幻惑物質の効果範囲は大きく変わるからな」


位置の確認も終わったため殺気を出すのを止めてしばらく様子を見る。

シルイトたち自身も殺気を出したところから数十メートル横に移動した。

殺気を出した時点でシルイト達の場所も割れてしまっているためシルバーローブの隠ぺい効果のほかにシルイトが隠ぺい魔法を行使した。


アロガンシアが防御姿勢を解くのを待つこと数分、ゆっくりとだがアロガンシアの枝が本来の形に戻り始めていく。

十分後、防御姿勢をとった時間の十倍以上をかけてアロガンシアはいつもの形に戻った。


「さあ、それでは採取するとしますか」


直後、シルイトが操るイシルディンが硬質化の特殊効果を付与されアロガンシアのてっぺんを刈り取らんと猛烈な速さで飛んでいく。

しかし、木の枝が叩き落とすようにしてイシルディンの進行を阻んだ。


「あいつ、どっかに目でもついてんのか?」

「私も援護します!」

「いや、フィアンは止めておいた方が良い」

「なぜです?」

「俺たちの場所を悟られたくないんだよ。イシルディンなら地面につながっていればどこからでも攻撃できるから」

「了解です」


シルイトは次にイシルディンに熱量変化の特殊効果を付与し、根と同様に枝を溶かそうと試みた。

しかしなぜか全く効果がない。


「もしかすると、アロガンシアには学習性があるのかもしれません。根を溶かされたときに学習した耐熱効果を自身に付与したのかも」

「だとするとちょっと厄介だな」


次に、帯電化の特殊効果を付与した。

電気的にマヒさせようという魂胆だ。


シルイトのもくろみ通り、イシルディンがアロガンシアによってはじかれるとアロガンシアの動きが一瞬止まった。

そこを狙い再び硬質化させたイシルディンに刈り取らせるが、今度は分泌腺から大量の幻惑物質が勢いよく吹き出しイシルディンが近づけない状態になってしまった。


「仕方ない。まずは中腹から切り落とすか」


イシルディンでアロガンシアの真ん中の位置を勢いよく切り倒した。

ずしんと大きな音を立ててアロガンシアが森の木々へ倒れる。

大小様々な鳥が森から逃げ出していく。


アロガンシアも倒れた衝撃で幻惑物質の放出を止めていた。


「いまだ!!」


その隙を逃さずイシルディンを繰ってシルイトは分泌腺をとった。


その後はとても早かった。

あっという間に倒れたアロガンシアを全て今までよりも熱いイシルディンで溶かしてまだ残っているもう半分も同じようにして溶かした。


行き同様、イシルディンの椅子で王都周辺にまで戻って来た。

ウィスターム邸にはしばらく戻らなくてもいいよう最低限の片付けは済ませてある。

イシルディンを集合球体に戻した後ギルドに入った。


「アロガンシアの討伐を完了した。報酬をもらいたい」


あえて最初に分泌腺を渡したりはしない。

シルイトとて慈善事業でやっているわけではないため渡さなくてもいいなら自分で持っていたいのだ。


「はい。報告は受けております。これが今回の報酬です」

「ああ、はい」


シルイトにとっては少し意外だっただろう。

もともと分泌腺を渡すつもりで臨み、運が良ければ渡さなくて済めばいいと思っていたからだ。

おそらく誰かが銀白色のローブを来た二人組がアロガンシアと戦う場面を目撃していたのだろう。

頻度は少ないがまれにある現象なので二人は気にすることなく報酬の金額を受け取った。


ウィスターム邸へ向かう前に泊まっていた宿へ戻り、再び部屋をとる。

シルイトは自分とコンフィアンザの間では特に間違いも起きないだろうと思っているので一部屋のみの宿泊である。

ちなみに渡すことがなかった分泌腺はウィスターム邸に保管する予定である。


かくして二人は無事に入学金の調達を完了した。。



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