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銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第一章 ギルド編
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シルイト視点

そして次の日。

最近はずっと宿で寝ていたので久しぶりの家での睡眠にシルイトはぐっすりと眠っていた。

対するコンフィアンザは朝早くから起きて朝食の準備を始めていた。


コンフィアンザは人工的につくられた存在とはいえそこには確固たる自我が芽生えている。

初めは意識に植えつけられただけのマスターを守るという命令が今ではますたを守りたいという意思に変わっている。

また、自我が芽生えたことによって向上心が増し魔法の技術は今ではシルイトが考えているよりもかなり強力になっている。

普段はレベルで管理されているため全力が出せないが本気で戦っていいという許可が出れば前日のラジネスの生体障壁くらいなら貫くこともできただろう。

そしてその向上心は料理スキルにも及んでいる。



~シルイト視点~

ふんわりと漂ってくる美味しそうな香りが鼻腔をくすぐり俺は目を覚ました。

時計を見ると朝の八時である。

大方フィアンが朝飯でも作っているんだろう。


改めて考えてみると、俺がフィアンを造ってからもう五年経つのか。

両親が殺されてからの約二年間、俺は裏社会に潜り込んで殺した犯人を調べ回った。

それでも見つからなかったからとりあえず保留にした。

俺が錬金魔術を考案したのはその頃だっただろう。


フィアンを造ったのは錬金魔術を編み出して約一年後だった。

フィアンの容姿は芸術的なまでに美しくできている。

それは顔だけでなくスタイルやたたずまい、オーラにいたるまですべてが美しい。

もちろん俺はそうなるように狙って造ったわけだが彫刻のように一から体の造形をしたわけではない。

世に言う美人を調べ回ってその因子を作成時に封入したのだ。

結果的に最強の美女になってしまったわけだが。


フィアンは造られた当初感情が全くなかった。

当然といえば当然だろう。

人工的に造られた命に心が宿るほうが珍しい。

まあ、もともと錬金魔術や防衛の手伝いをしてもらおうと造っただけだったので大した問題にはしていなかった。


それでもフィアンには感情や自我の片鱗が芽生え始めていた。

例えば、フィアンの飯はあるときから急にうまくなった。

それまで能面のようだった顔に若干の感情の起伏が見られるようになり生命の偉大さを感じていたころである。

今まではこっちが教えたレシピだけを忠実に作っていたのだが自分でレシピ本を読んで練習するようになりフルコースも作ることができるようになっていた。

戦闘技術も自分で噛み砕いて理解するようになったため習得が早くなった。

本来の目的だった錬金魔術の助手としての役割もこちらの意図を正確にくむようになっていた。


あくびを噛みながらベッドを抜けて着衣を軽くただすと俺は寝室を出た。

俺の寝室は家の二階、ダイニングは一階にある。

階段を降りて廊下を歩いていくとやはりフィアンがキッチンで朝食を作っていた。


「おはようございます、ますた」

「おはよう。今日の朝ごはんは?」


聞くところによると今日の朝は魚の塩焼きがメインのようだ。


久しぶりの家での食事になつかしさを感じながら朝食を食べ終えて今はアロガンシアの危険指定書に目を通している。


『アロガンシア』

~アルド密林に分布する大型の動植物も食らう珍しい食植物。根っこが地中に埋まっていればそこから何回でも再生することが可能。敵が現れると自身から幻惑作用のある物質を散布して無力化して捕食する。Sランク危険指定。~


「アルド密林、か」

「アロガンシアの生息地域ですか」

「そうだ。王都よりもこの家からの方が近いからちょうどよかった」


アルド密林は王都から東に馬で一日くらいの距離にある。

ただ、ウィスターム邸は王都からアルド密林側にあるため若干の時間短縮になっている。


俺は着慣れたズボンに専用ベルトを通してそこにイシルディンの集合球体をつけた。

ビー玉大の大きさに収まる最大質量まで増量、圧縮したイシルディンの集合体のことを俺は集合球体と呼んでいる。

これ一つあればたいていの状況には対処できるようになる。

近々イシルディンを使った新しい兵器を開発する予定だ。


ズボンをはいて上も着たあと、イシルディン製のシルバーローブを羽織る。

ちなみにシルバーローブという名前は俺が適当につけた。

ただし機能は折り紙付きだ。


こうして準備を終えた俺が玄関前に行くとすでにフィアンが準備を整えて待っていた。

これもいつものことである。


「ますた、準備は終わりましたか?」

「ああ、終わった。それじゃあ、ちゃちゃっと討伐するとするか」

「はい、ますた」


昨日のラジネス討伐と同じくイシルディンで椅子を作る。

この家に来た時に使ったイシルディンの馬は周りの目を気にする必要があるときに使うが、特に監視されていなそうな普段は椅子を宙に浮かせるようにして移動する。


出発してから約一時間後、俺たちはアルド密林に到着した。


「アロガンシアは根っこが周囲の地底すべてに張り巡らされているのが特徴だ。だからどこか一本でも根を見つければそこからイシルディンで破壊していけばいい。注意すべきは幻惑作用のある物質だけだからな」

「了解です、ますた」


フィアンに索敵魔術を応用してアロガンシアの根を捜索してもらうこと約十分。

とうとう俺たちはアロガンシアの根を発見した。


「発見しました」


フィアンは普段とは違い口元に笑みを浮かべ少し顔が上気していた。

もう自我の発芽も最終段階に入っているようだ。


「ありがとう。あとは俺がやる」


俺がさっきフィアンに言った通り、アロガンシアは本体に幻惑作用があるだけで実質ほとんど無害である。

ただ、地中に張り巡らされた根っこを完全に除去するすべがないためにSランクの危険指定になっているのだ。


しかし、俺のイシルディンを使えば熱量変化の特殊効果を付与することで根っこを溶かしながら根全体にイシルディンを向かわせることができる。

これは、固体を間に挟んだ間接接触状態なら操作可能なイシルディンにしかできない。



作業開始から三十分後、すべての根っこを溶かして死滅させ、俺たちはアロガンシア本体の前に来ていた。



次からはいつも通りの視点に戻します。

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