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第九話 ゴブリンリーダー

 泉のあった空洞を抜けて、再びミラとあの渓谷の道を急ぐ。

 まぁ俺は背負われているだけだが、後ろは見れるしな。

 背後から何かが来たらすぐ教えてあげるぐらいはしたいところだが、後ろというよりは相変わらず前後に現れて挟み撃ちを仕掛けてくる。


 でもまぁミラも慣れたもので、ロングソード()を抜くと、次々と斬り伏せていった。

 俺とミラのコンビに掛かればもうゴブリンなんて楽勝だなっと。


 おかげでせっかく綺麗になった俺の身も、段々と緑の占める割合が広くなっていく。

 いくら捌けがいいと言ってもこれだけ死体を量産してればそりゃそうか。


――進化PTを2得ました。


――経験値を22得ました。


――進化PTを2得ました。


――経験値を24得ました。


――進化PTを2得ました。


――経験値を19得ました。


――進化PTを2得ました。


――経験値を24得ました。


――進化PTを2得ました。


――経験値を19得ました。


――進化PTを2得ました。


――経験値を22得ました。


 声も張り切りすぎだろ……本当教えてくれるのは良いんだけどね。


「グギェ!」

「ギェギェ!」

「ギェヒ! ギェヒ!」


 おっと今度は槍ゴブリン2体と剣ゴブリン1体が三角の形に並んで突っ込んできて、先ず左右のゴブリンがそれぞれが槍で突き、ミラはそれをバックステップで躱すが、それを狙うようにして後方のゴブリンが跳躍、跳びかかり勢いを乗せて剣を振り下ろす。


 しかし、ミラは落ち着いてそれをバックラーで受け相手の刃を滑らすようにしてゴブリンを地面に叩き落とした。

 ガラ空きの背中にトドメの一突き。

 グギャ! と潰れた蛙のような鳴き声を上げて事切れる。


 槍持ちゴブリンが距離を詰め、突き、突き、突き、しかしそれを避ける、いなす、受けるで危なげなく対処し、横移動とともに振り下ろした刃で木製の柄を斬り穂先を落とす。


 そこから更に一歩踏み込んで斬り上げ、もう一本の槍の穂先も落とす。


「ギェ!」

「ヒギッ!」


 目を見開き驚愕するゴブリン達。 

 その間に距離を詰め、ミラの横薙ぎの刃が首を斬り裂き、返しの刃が残った1体の頭を叩き割る。


――進化PTを2得ました。


――経験値を24得ました。


――進化PTを2得ました。


――経験値を19得ました。


――進化PTを2得ました。


――経験値を22得ました。


――熟練度が2に向上しました。


 更に経験値と進化PT入手っと。

 今進化PTは48で取り敢えずの目標である50PTまでは後2だ。


――パッシブスキル【剣術】がアンロックされました。

――スキルリストに追加いたします。

 

 て! ここで熟練度アップか! 

 そしてまた新しいスキルもアンロックされたな

……剣術か――役立ちそうではあるけどな……スキルリストを見てみると必要なPTは50とガイドと一緒だった。

 

 う~んどっちにしろ少し足りないな。

 後1体ぐらいは倒せるとありがたいんだろうけど、ここでゴブリンの襲撃も一旦収まる。

 勝てないと思って諦めたか?

 道もそろそろ俺のいた小屋につく頃だとは思うけど。

 

 と、そんな事を思っていたら前方に降り立つ1体のゴブリン。

 他に仲間は連れていないのか?


 それにしてもこいつ、少し様子が違うな……色も他のゴブリンより更に濃い緑色だし、肉付きも良い気がする。

 何より手持ちの武器は小剣だが、他のゴブリンが持ってるものより明らかに上等な品だ。


『ミラ。このゴブリンどこか様子が違う、気をつけたほうがいいかもしれない』


「うん。だろうね、多分こいつゴブリンリーダーだ。当然他のゴブリンより強いと思う」


 リーダー……そんなのもいるのか。

 でも、確かに他のゴブリンと比べると風格が違う気もするな。空気というかそういうのが……。


 しかもこいつは他のゴブリンみたいにむやみに喚いたりしない。

 窪んだ瞳を光らせ、小剣を両手で構え、ジリジリと近づいてくる。

 

『大丈夫かミラ?』


「う~ん、もしかしたらリーダーだとレベルは僕より上かも。それにゴブリンはともかくリーダーとは直接やったことはないんだよね……」


 そういいながら右手で俺を握りしめ、半身の構えで相手の一挙手一投足に注意を向ける。

 手強いのかもしれないのか……こういう時俺にも何かできると良いんだが、念話以外で出来るといえば同じように注意して見るぐらいだ。


 そして――機先を制したのはゴブリンリーダーだ。

 跳ねるように飛び込んだかと思えば両手から片手へと持ち手を改め、片手突きでミラの腹部を狙ってきた。


 ゴブリンはリーダーとはいえ、人と比べればやはり小柄であり、リーチも短い。

 おまけに手持ちが小剣とあれば普通に考えれば届く間合いでもない。

 

 しかし想像以上の身体能力を発揮し、滑るような跳躍で瞬時にして自分の間合いに引き込んだわけだ。


 これが並の相手ならその一撃で勝負は決まっていたのかもしれない。

 だが、ミラは決して並ではない。油断する事なく、身を捻って突きを避ける。

 しかも捻った直後に軽やかなステップで弧を描くように滑り込み、払い切りでゴブリンリーダーの首を狙った。


 だが、ゴブリンリーダーは咄嗟に刃を立てミラの横撃を受け止めつつ、自ら地面を蹴り宙を舞う。

 そしてくるりと一回転して着地した。


 て、なんだこいつ! 本当に違いすぎだろ! 能力がゴブリンと違いすぎるぞ!


「参ったな。結構手強いかも……」


 ミラがボソリと呟く。

 だよな。ミラが負けてるとも思わないけど、楽な相手ではないだろう。


 まぁでもこれは他のゴブリンがいなくてよかった。

 でもなんでだろうな? もしかしてリーダーとして正々堂々な戦いを挑むとかそういう、て。


『ミラ右だ!』


 え? と発しつつ、意味を理解し反応、一発はロングソード()を活かしつつ受け止めたが、数発上からの投石を受けてしまった。


「くぅう――」


 当たったうちの殆どは胸当てに当たった為、それほどのダメージはなさそうだが、一発額に受けてしまい、そこから出血し赤い筋が流れ落ちる。


 おいおいマジかよ、と思っていたら間髪入れずゴブリンリーダーが肉薄し両手持ちで刃を斜めに斬り上げる。


 ミラは左腕で被せるようにしてバックラーを使用し一撃を受け止めたが、体勢はあまりよくないうえに、動いたことで垂れた血が右目に入る。


「――ッ!」


 目に血が入ったことでミラにも動揺が見られた。それを認めたからか、一瞬だがゴブリンの口元が醜く歪んだ気がした。

 チッ、正々堂々な筈あるわけないか。所詮こいつらは魔物だ。


 ゴブリンリーダーはすばしっこい動きでミラの右側面に移動する。

 狙いは判っている。出血のせいで右の視界が悪くなってるからそこから攻めようって腹なのだろう。


 上からはゴブリンの歓声みたいのも聞こえてきやがる。リーダーに向けてのものか。おまけに投石はまだ続いている。


 厄介な状況。だが、こいつは甘い。確かにミラの視界は奪われたが、俺は別だ。


『右わき腹を狙った斬り払いだ! 投石も右後方!』


「!?」


 ミラが咄嗟に横へ大きく飛び退いた。ゴブリンの剣が空を切り、石も地面に当って跳ね返る。

 

「あ、ありがとうエッジ」


『いいさ。それより壁を背にして戦ったほうがいい』


「え? 壁を背に?」


『そうだ、ゴブリンの潜む穴は壁にそって穿たれている。足場もない以上壁に引っ付けばそっちがわの投石は気にしなくてすむ、逆側だけなら避けることは可能だろう。所詮は投石だ、そうすれば投げてくるのは精々反対側の穴ぐらいからになるだろうしな』


 そ、そうか、とミラ。

 そして降り注ぐ投石を躱しながら壁に背をつけると案の定、一気に投石の数は減った。

 

 ミラが壁を背にした事も要因だが、ゴブリンリーダーが間合いを詰めてきてるからだ。間違ってリーダーに当たる可能性がある以上、下手な投石は出来ないだろう。


 ただ、当然壁を背にしている以上、接近戦で不利なのはミラの方だ。

 額から出血までして右目の視界も悪い。


 だが、その分は俺の方で対処する。ミラの右目は塞がったが俺の剣としての視界は全く問題ないからな。


『塞がってる方の視界は俺がカバーする。奴は絶対に右側から狙ってくる。逆に言えば来る攻撃は読める。そこを――』

「カウンターでね……判ったよ」


 ミラが顎を引く。

 そして案の定、ゴブリンリーダーはミラの右側に回りこむように移動し、そして今度は床を蹴ってミラに飛びかかってくる。


 ここで今度こそ勝負を決めようと思ったのだろう。だが、甘い!


『右斜め前方から飛び掛ってきたぞ!』


「了解!」

 

 叫ぶと同時にミラが膝と腰を折り、身を低くさせてゴブリンの強襲をさけつつ、相手の胴体を見上げるような状態から渾身の力で地面を蹴り俺を振り上げた。体重の乗った刃が、見事緑色の身体へ吸い込まれていく。肉を抉る感触が俺にも伝わってくるようだった。

 途中で刃が止まるようなこともなく刃がゴブリンリーダーの身を見事に斬り裂いた。


「グギャ!」


 ここで初めてリーダーが呻き声を上げ、血反吐を撒き散らしながら地面へと落下していく。

 完璧なカウンターだ。胴体からも夥しいほどの血が流れ、いくらなんでも立ち上がれないだろう……そう思ったのだが、ゴブリンリーダーは地面に着地し、そして腕を引きギラついた瞳でミラを睨めつけ――


『まだ終わってない! 突きが来るぞ!』


 刹那――溜めた力を開放するかのごとく鋭い突きが、ミラに迫った。

 

 間一髪――しかし俺の忠告をいち早く聞き届けた事で、ミラはバックラーを構え渾身のゴブリンの一撃を受け止めた。

 

 これもぎりぎりだっただろうし、危なくもあった。

 もしもう少しゴブリンの持つ剣が鋭ければバックラーを貫いて腕に貫通していたかもしれない。


 だが、そうはならなかった。ゴブリンの持つ小剣は他のゴブリンよりは上等だが、それでも突きには特化しているような代物ではなかった。


 だから鋒がバックラーに刺さりこそしたが、貫通までには至らず、更に剣が食い込んで抜けない状態に。


 勿論それを見逃すミラではなく、直後振るった剣がゴブリンリーダーの首を捉え、そしてようやく絶命してくれた。


――進化PTを5得ました。


――経験値を58得ました。


――レベルが上がりました。


――一連の行動により称号【倍返しの反撃者】がアンロックされました。ステータス欄に追加いたします。


――一定以上の成果を上げた事により称号【ゴブリンキラー】がアンロックされました。ステータス欄に追加いたします。


 で、倒したと思ったら随分とまぁ色々と――

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