第七十五話 見覚えのある場所
更新再開です!
扉を抜けてすぐ右側に別の扉があった。ミラがそこを確認しに行くと、閂が掛かっており、丸太で扉が開かないようになっていた。
丸太は簡単に外せたので、そのまま中を確認したら見覚えのある景色。
そうだ、ここは確かあの時ゴブリンダッシュと戦った場所だ……。
ミラもコレには気がついたようで、
「あ、さっきの場所だね~」
と呑気に笑っていた。
俺はあんま笑えないけどな。これはつまりここから先でまた奴とまみえる可能性があるってことだ。
あのゴブリンダッシュも結構なダメージを受けていたとは思うが、それでもそれなりに時間の経った今ではある程度回復している可能性もある。
だけど――
『ミラ、丁度いいあそこに戻ってみよう』
「え? あそこって?」
『だから、回復の泉だよ』
そういえば! という表情をミラが見せる。
そう、キュピに教えてもらった回復の泉がここからなら近い。
ここから先進むなら回復しておいたほうがいい。ただ、それも時間が経てばまた使えるんじゃないか? という憶測でしかないけど。
まぁ、HPはキュピに回復してもらってるから、MPの回復が目的になるけど。
万全にはしておきたいからね。
とりあえず、閂はもうつかわれないよう、部屋の中の方に持ってきてついでに隠しておいた。
一応念のためだ。
そして回復の泉に向かうが――これは期待通りだった。つまり泉がまた使えるようになっていた。どうやら飲んでから数時間程でまた光だすようだ。
そして、ミラのMPも全開し、準備万端でさっきの場所まで戻り、攻略を再開させる。
しかし、未開の地では、ゴブリンの活動がより活発になっていて、しかもここにきてまた別種のゴブリンも出てくるようになった。
その一種は、ゴブリンリザード、これはあのダッシュリザードの上に槍持ちのゴブリンが騎乗しているタイプだ。
防具は鎖帷子一つ。出来るだけ体重は落としてるのだろう。ゴブリンを乗せてるダッシュリザードは以前より動きが速くなってる。
ミラもレベルが上っているから、避けられない事はないけど、油断は出来ない相手だった。
だが、リザードに乗ってる分、攻撃は単調になってる。ゴブリンは槍でダッシュリザードに指示を出し、動きに緩急をつけていたが、小回りがあまり利かない点と、直進的な動きが多いという点は変わっておらず、通り過ぎたダッシュリザードにスパークボルトを連射、動きを止めたところで燕返しを決めて倒すことに成功。
皮と魔晶を回収。そこから職業持ちのゴブリンも倒していく。途中で熟練度が一つ上がった。
――アクティブスキル【ロックコート】がアンロックされました。
――スキルリストに追加いたします。
そしてまた一つスキルが追加されたな。
どうやら今度はスキルといっても魔法みたいなものなようだ。
とりあえず確認はあとにするとして、真っ直ぐ行くと宝箱の並んだ空洞にたどり着いた。
そこにいたのは、ゴブリンジャイアント一体。文字通り、デカいゴブリンだ。
試しに、アクアバブルも使用してみたが、ホブゴブリンよりデカいこれは流石に包めない。
岩でつくった巨大な棍棒を手に持ち、腰布を撒いたゴブリン。そういえば、こいつはさっき行き止まりのところで上から岩を投げてきたゴブリンだな。
近くで見たらこんなにデカいのか……。
棍棒を一振り、それだけで洞窟が激しく揺れる。地面が砕ける。余波でミラが吹き飛ばされそうになる。
攻撃力が半端じゃない。しかも一歩移動する度に、それだけで地面が揺れてミラの脚が取られる。
折角の俊敏さが、これでは活かしきれない。動きだけは鈍重だが、身体の大きさがそれを完全にカバーしていた。腕と棍棒のリーチを合わせると、この空洞の中にいる限りどこもこの巨大なゴブリンの攻撃範囲である。
ここは、一旦退くべきか? と俺はミラに伝えようとするが、その時、ゴブリンジャイアントは壁の岩を引っこ抜くようにして岩石とし、入り口に投石した。
その結果どうなったか――出口が防がれた。
『こいつ、馬鹿っぽいのに……』
「に、逃げ道防がれちゃったね」
「キュピー!キュピ!」
キュピも焦ってるな。それはそうだろう。
『とにかく、折角覚えたコンボがある! それを試して見るんだ!』
う、うん、と頷き、連撃、燕返しと続けていく。
だが、それだけでも足りない――
「宝箱をあけようエッジ」
すると、ミラからこんな提案。確かにここには宝が三つある。
ただ、トラップの可能性もあるし、かといってそれを調べている余裕なんてない。
それをミラに話すが、それでも、開けてみれば何か役立つアイテムが手に入るかもしれないと言って覚悟を崩そうとはしなかった。
『わかった、俺も気をつけては見るよ』
「うん、じゃあ――」
そしてミラが隙を見て宝箱を開けたけど、こういうときの勘はよく働くのか、中身はまともなものだった。
入っていたのは、水の魔石、火の魔石、雷の魔石が一つずつ。
それと、薬、鑑定眼鏡で見ると強化薬だった。
これは、当たりだったかもしれない。特に水の魔石は、これで三つ腕輪に嵌められる事になる。
早速、ミラが魔石を入れ替え、魔法を発動。すると、両手から激しい波が起き、ゴブリンジャイアントに直撃。
これだけの巨体が、たたらを踏むぐらいには圧があり、効果は中々高いと言えるだろう。
だけど、これで倒せると言えるほどではない。でも、ここからが重要だ。並の影響でゴブリンの巨体がかなり濡れてくれている。
ミラが直様、魔石を雷二つに交換し、続けて魔法を発動。LV2の雷魔法、ミラの手から一本の雷が発生、ゴブリンジャイアントの身を打った。
これは、流石に効いたのか、ゴブリンジャイアントがしびれているのがよく判る。
それをミラが何度も繰り返す。しかし、雷系は消費MPが激しい。
三発も打てば、もうMPが半分にまで減ってしまっている。
『ミラ! 覚悟の一撃をとるぞ!』
俺はミラにそれだけ告げて。
――アクティブスキル【覚悟の一撃】の取得には進化PTが50必要です。宜しいですか?
【現在の進化PT:79】
それでいい! 急いでくれ!
――アクティブスキル【覚悟の一撃】を取得しました。ステータス欄に追加いたします
よっし! ミラ相手は今弱っている! ここで決めろ! 強化薬とコンボだ!
「う、うん! 判ったよ!」
そしてミラは、手に入れたばかりの強化薬を飲み干し、雷の影響でふらつくゴブリンジャイアントへまず連撃を決め、燕返しにつなげ、そして――
「はぁあああぁああぁああああああああぁああ!」
『ウオオォオオオォオォオオオォオオォオオオ!』
ミラの声と、俺の念が重なる。そして――覚悟の一撃が、ゴブリンジャイアントの心の臓を貫いた!
――進化PT150を得ました。
――経験値を650得ました。
よっし! 無事倒した!
それにしても、経験値も進化PTも高いな……。




