第七十三話 キュピの進化
お待たせいたしましたこちらも更新再開していこうと思います。
さて、折角だからホブゴブリンとジャイアントモスから魔晶を抜き取り、他に何か役立つ物がないか探ってみる。
ホブゴブリンの場合、装備品をドゴンの店に持っていけば買い取ってくれる可能性があるけど、ただこの装備品はどれも重い。
最大で50kgしか入らない今のウェストバッグじゃ持ち歩くのは少々厳しいだろう。
なのでミラと相談して装備品は素直に諦める。後はジャイアントモスだが、こちらに関しては気になる物が見つかった。
体内で生成した鱗粉が蓄えられている袋が器官として存在したんだ。
もしかしたらなにかの役に立つかもしれないし、持って行くことにする。
後は魔晶だが、これは3つともキュピに取り込ませる。
「美味しいキュピ?」
「キュピキュピ♪」
『美味しいとかあるのかこれ?』
「う~ん、でもほら、食べてるように見えるし」
たしかにそう見えなくはないけど……そしてキュピが最後にジャイアントモスの魔晶を取り込んだときだった。
「キュピッ!?」
「え? あれ? どうしたのキュピ?」
突然キュピがビックリしたのを体で表現し、かと思えば激しくプルプル震えだした。
なんだ? 大丈夫か?
『もしかして、ジャイアントモスの魔晶があまり良くなかったのか? あれ、なんか幻覚とか見せるやつだったし』
「う、うそ! どうしようエッジ~~~~!」
『お、落ち着けミラ! こういうときこそ深呼吸だ!』
ミラが素直に深呼吸する。いい子! でもよく考えたら根本的解決には繋がってない。
俺こそ何言ってるんだって感じだ!
だが、暫くプルプル震えていたキュピだが、その体内から青白い粒子が立ち上り、かと思えばキュピの震えが、止まった――
だけど、何か心なしかキュピが少し大きくなった気がするな。
いや、なったな。勿論凄い大きくってわけでもないけど、なんか子供の頭ぐらいにはサイズが変化してる。
『お、おいキュピ大丈夫か?』
「キュピ! キュピー! 大丈夫? 大丈夫?」
するとミラが飛びついて抱きしめてキュピの頭をなでた。
いや、多分その辺が頭なんだろなって感覚だけど。
「キュピ~キュピピ~キュピキュピキュピィ~!」
だけど、思いの外キュピは元気そうだ。そして何か指っぽい形を作ってミラの目に向けている。
『キュピの奴、何かを伝えようとしてないか?』
「え? 何かって?」
キュピを撫で撫でしながらミラが聞き返してくる。
う~ん、ミラの目に何か関係してるのか?
『キュピ、ミラの目に何かあるのか?』
「キュピ! キュピピ~!」
俺がたずねると、今度はスライムから飛び出た指でミラと自分自身を交互に示していく。
かと思えば今度は丸い輪っかを二つ作ってキュピの体の前に持っていった。
うん? まてよ、これって……。
『そうか判った! ミラ、きっと鑑定眼鏡で見てくれってキュピは言ってるんだよ』
「え? 鑑定眼鏡で?」
「キュピ~♪」
キュピがプルプル震えている。嬉しそうだし、それが正解って事なんだろう。
「うん、判った。それじゃあ見てみるね」
そしてミラが鑑定眼鏡を取り出し、キュピをまじまじと見ているが。
「わ! 凄い! キュピが何か変わってるよ!」
『変わってる?』
「うん、そう。え~とね……」
そしてミラが教えてくれた鑑定眼鏡の結果は。
名前:キュピ
種族:スライム
形態:アロマスライム
LV:1
HP:15/15
これだったわけだが、なるほど、形態がベビースライムからアロマスライムに変わっていて、その為なのかLVが1に戻っている。
俺の場合は進化する度に熟練度が1に戻っているけど、キュピの場合はレベルが戻るのか。
でも、HPなんかは上がってるし、例えレベルが下がってもステータス自体は、以前より向上しているのかもな。
まだまだ流石に単体で魔物と戦わせるのは無理だろうけど、今後も進化するならそのうち強力なスライムに変化していく可能性は十分あるか。
それにしてもアロマか……あの薬師を思い出すな。
とりあえずミラにもどうやらキュピは進化するスライムだったらしいことを教えてあげる。
すると、ワッ、と喜んで。
「凄いねキュピ~進化出来るなんて偉い偉い」
「キュピピ~♪」
頭を撫でるとキュピも嬉しそうだ。ちょっと大きくなったけどキュピはキュピだな。
「……あれ? ところでキュピ少し成長した?」
「キュピ?」
『いや、今更かよ! ひと目見て判るぐらいには変化してると思うぞ。進化の影響だろうけど』
「う~ん、そっかぁ~でもキュピはキュピだよねぇ~」
「キュピュッ!」
身体の一部を持ち上げて、その通り! とでも言ってそうな仕草。
う~ん、感情の表現も心なしか豊かになってるか?
とりあえず、キュピの進化も終え、俺達は再び先を急いだ。
広めの通路を進んでいくと、向かって左側に小高い岩場が見えてきた。
それだけだったら特に問題もなかったんだけど――
『チッ、弓持ちゴブリンがいる。面倒だな』
「どうやらゴブリンアーチャーらしいねぇ」
ミラが鑑定眼鏡で見てくれた。
装備している弓矢は青銅製のようだ。
それにしてもあんなところまでわざわざよじ登ったのか?
ミラでも出来ないことはなさそうだけど、アーチャーに狙われた状態では流石にキツい。
かと言って魔法で狙うのもやりにくそうな高さだ。大体そこまでして倒してもあまり得られるものがない。
倒してわざわざよじ登るのも面倒だし、倒すのにもMPをかなり消費しそうだし。
『ミラ、こいつは相手するだけ無駄だ。駆け抜けよう』
「うん、そうだね」
「キュピー!」
そんなわけでミラは岩場の脇をダッシュで抜ける。あんな奴ら完全無視だ。
キュピは矢に当てられないよう抱きかかえてもいる。ちょっとサイズが大きくなったから胸当ての中というのはもうキツそうだしな。
さて、実はこのまま道はふたつにわかれている。このまままっすぐ突き進む方と、向かって右に折れて進むルートだ。
ただ急いでいたからな。とにかくまずは正面を突っ切る。
そこから道は細まっていたので、アーチャの追撃も収まった――




