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第六十六話 がっかりミラ

『いや、ミラ、仕方ないだろ? 倒しちゃったんだからさあ』


 がっくりと項垂れるミラを俺は慰める。なぜこんな事になっているかというと、レッドオクトパスを倒した後、触手を切ってみても再生しなかったからだ。


 だけど、流石にそれは当然だろう。死んでまで再生されたら、これ一生このままだぞ?


「うぅ、タコ足食べ放題だと思ったのに……」

『ミラ、そうは言ってもこの足、この太くて長いのが8本もあるんだぞ?』

「……エッジってたまに言い方が卑猥だよね――」


 へ? て、おい!


『べ、別にそういう意味じゃねーし! とにかく、いくらなんでもこれ全部食べきれないだろ? かといって持ち運べないだろうし』

「え! 持ち運べないの!?」

 

 ミラが驚愕する。いや、これ何キロあると思ってんだよ……。


『いくらなんでも無茶だぞ。一本分ぐらいならぶつ切りにして魔法具のバッグに入るかもだけど、流石に全部は絶対ムリだ』

 

 ミラは地面に膝と手を付けて、ガックリという言葉がぴったり来るような姿勢で嘆いた。


 そんなに蛸が食いたいのか。


「こうなったら仕方ないね! 入らない分はここで全部食べよう!」

『やめろ! こんな水が溜まってるとこで、そもそも毒とかあったらどうすんだ! せめてマージュとかアロマに聞いてからにしとけ!』


 え~、と不満そうな顔を見せたけど勘弁してくれ。初見の魔物をすぐに食べようと考えるのは正直危険すぎるんだからな!


「もう、仕方ないな。諦めるよ……」


 肩を落としてそんな事を言うミラだが、しっかり一本分はぶつ切りにしてバッグに入れてるのな。


『ミラ、足以外にも解体してみよう。何かあるかもしれないし、魔晶も手に入れておきたい』

「うん、そうだね」


 そういいつつ、他の部位を解体する。

 解体しながら涎を垂らすな! 足以外とてもじゃないがもっていけないぞ!


「出てきたのはこれだけだね」

 

 そして、レッドオクトパスは結局胴体部分に色々な物が集中していた。

 魔晶は当然として、火の結晶(高)と魔力の結晶というのが手に入ったんだけどな。


『火の結晶も高品質なのは珍しいと思うけど、この魔力の結晶とはなんだろな?』

「う~ん、何だろね? 鑑定眼鏡だと名前しかわからないし――」


 そうなんだよな~鑑定眼鏡といっても魔物なら名前とLV、アイテムなんかは名前しか判らないんだなこれが。


 でも、魔力ということは、何か魔法に関係してそうなのは確かだな。


『そうだ、魔力と言えばミラは残りMPはどれぐらいなんだ?』

「うん、38だね~」


 38か……正直かなり心もとないな。この先このまま進むのは困難かも――


「あ!?」


 そんな事を思ってたら、ミラが手を滑らせて魔力の結晶が地面に落ちた。

 やはり疲れてるのかな? と思ったりしたけど、すると地面に落ちた結晶が粉々に砕けた。


 もろ! え? なにこれ脆すぎるだろ!


 そんな事を思った矢先――割れた結晶の中から無数の青い球が浮かび上がり、かと思えばミラの中へと取り込まれていった。


 へ? なんだこれ? どうなってんだ!


『お、おいミラ! 身体の調子は大丈夫か?』

「う、うんそれが、それがね……」


 なんだ? もしかして調子が悪いのか! お、おい! ヤバい、何せあの蛸が出したものだし、もしかして身体に悪い――


「僕のMPが80も回復したよ! 凄い!」

『……へ? か、回復?』


 何か神妙な顔を見せたから心配したけどどうも杞憂だったな。ふむ、どうやらあの魔力の結晶というのは割るとMPが回復するアイテムだったようだ。


 それにしても一度で80とはな。でもおかげで引き返す必要はなさそうだ。


 だからとりあえず回収も終わったし先に向かう。すると少し広い空間に出て、そこで水は完全に引いた。


「ふぅ、ちょっと一息ついたね~」

『ああ、そうだな。少し休むか?』


 ミラが顎に指を添えてう~んと考える。


 すると――


「キュピー! キュキュピー!?」


 何か、俺達から向かって右奥の方から、そんな妙な声が聞こえてきた。


 何か嫌な予感しかしないぞ~。


「エッジ! 今、何か聞こえたよね!」


 そしてやっぱりミラが反応した。確かに何か聞こえたけどな……。


「言ってみようよ!」

『本気か? 確かに聞こえたが、どう考えても人とかの声じゃないだろ?』

「でも、やっぱり気になるよ!」


 はぁ、こうなるともう聞かないだろうな。


『判った、任せるよ』

「うん、ありがとうエッジ! じゃあいくね!」


 そして俺を構えてミラは何か妙な鳴き声のした方へ向かう。


 すると、進んだ先には扉こそないが、ちょっとした箱作りの建物になっており、開けっ放しの口にミラが躊躇なく入っていくと――


「キュピ! キュピキュピー!」

「ゴブッ!」

「ゴブッゴブッ、ゴブー!」

「ゴッ、ゴブゥ!」


 ……なんとも奇妙な光景が広がっていた。

 何かと言うと、何かとても小さな、あれ、多分スライムだよな? 

 そう、小さなスライムがゴブリン三体に追い掛け回されていたのだ。


 てか、何だこれ? どういう状況なんだ?


「す、スライム! あれってきっとスライムだよね!」

『わからないけど、そうじゃないのか? 気になるなら鑑定眼鏡使ってみたら――』

「そうか!」


 ミラは直ぐに鑑定眼鏡を掛けてスライムっぽいのを調べ始めた。


「エッジ判ったよ! ベビースライムだよ!」

『そうか』

「よし! 助けよう!」

『何故そうなった!』


 とりあえず突っ込んだ、何がよしなのかさっぱり判らん。


 でもその時には既にミラは動いていた。とりあえず先頭の剣を持ったゴブリンに斬りかかる。


 それにしても、このゴブリン、前に見たときより装備品が良くないか? 剣も鉄だし、鎖帷子に革の円盾まで持ってるんだが――


 で、ミラの攻撃をゴブリンは円盾で防いで、そのまま後ろに飛び退いた。


 すると、追っかけていた残り二体も警戒心を露わにし、逆三角形のような陣形を取り出す。


『ミラ、おかしい。このゴブリン、前のゴブリンと装備も、動きも違うぞ』

「うん、そうだね。名前もゴブリンファイター、ゴブリンシーフ、ゴブリンマージになってるよ。装備品も前衛のファイターは鋳鉄の剣に革の円盾、そして鎖帷子だ」


 そうか、鑑定眼鏡だと名称までは判るんだな。それにしても、剣を持っていたり確かにこれまでとはかなり違うみたいだな。


 特にマージは、名前からして魔法を使いそうだし、ゴブリンだからといってなめていられないかもしれない……。

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