第六十三話 眼鏡の正体
『……こ、これは、か、鑑定眼鏡です、ね……』
マージュの店に立ち寄り、彼女が教えてくれたのがこれだ。
鑑定という響きは俺にとってもなんとも気になるところだな。
『鑑定ってことは、例えば俺についての詳細や、他にも不明点が色々判るってことか?』
『い、いえ、この、か、鑑定眼鏡は、そこまで上質な、ものでは、ないですので、判るのは名前とか魔物なんかだとLVぐらいは、は、判別出来るかもしれませんが、そ、それも確実じゃありません』
マージュの話だとあまりにLVに差があったり、また相手が鑑定を妨害するアビリティなんかを持っていると鑑定は出来ないらしい。
まあ、出来るにしてもそこまで細かいことは判らないみたいだけどな。
「あ! 本当だよエッジ! この眼鏡をつけたらマージュの名前が出てきたよ! あと魔法具師というのも判ったよ~」
なるほど、つまり名前と職業ぐらいは判るってことか。
『は、恥ずかしいですぅう~~』
ほっぺに手を当てて、顔を真っ赤にさせてそんな事言ってるけど、いや、そんな事はもう判っていた事だからな。
何を恥ずかしがることがある。
「ふむふむ、更にいえば、上から96・58・90ですと! スタイル良すぎ!」
『え!? そ、そんな事まで……』
……ま、マジか? いや、それはちょっと気になるというか、何というか――
「な~んて、うっそでーーーーす!」
『き、きゃああぁああ! も、もう! み、ミラってば、もう!』
「あはははっ、ごめんごめん」
……うん、見た目エロティックなダークエルフが頬を真っ赤に染めて、ミラの体をポカポカと殴って――て、俺何見せられてるんだ?
「あ、それでね、ごめんマージュ! MPがかなり減って、また少し休んでいっても?」
『も、勿論です、そ、それなら魔力の回復を早める、こ、紅茶を用意しますね』
「え? いいよ、そんなただでさえ申し訳ないのに」
『わ、私も丁度、の、飲みたかったから――』
そんなわけで結局ありがたく紅茶は頂くことになった。それにしても魔力の回復を早める紅茶ってどちらかというとアロマの店が出しそうなものだけどな。
なんて思ってたらどうやら、これはポットに秘密があるようで、これの働きで魔力の回復力を上げる効果が付与されるらしい。
つまり魔法具なんだな。
『そういえばすっかり後回しになってしまってたけど、確か水中でも自由に息ができる魔法具があるんだったかな?』
『あ、はい、水息器ですね』
そう言ってマージュが本体を持ってきてくれた。どうやら口に加えるタイプの魔法具で、筒型の物だ。
これを横にして真ん中あたりを咥えていると、息が出来るらしい。
「これはいくらするのかな?」
『は、はい。500マナになりますね』
500か、ちょっと足りないかな。とりあえずミラと相談して、余ってた水の欠片は売ったけどそれでも150マナぐらいだからな。
合わせて299マナか。そうなると後は、あの蟹の甲羅に価値があるかどうかといったところかな。
「マージュありがとう。おかげで凄くMPも回復したよ~」
『い、いえ。また宜しければ、いつでも気軽に、き、来てください!』
ふむ、それにしても以前ちょっとだけおかしかった時があったけど、もうすっかり元気になったみたいだな。
まあ、こんな迷宮にいれば何か気が滅入ることもあるのかもしれないな。
さて、その足で俺達はドゴンの店に向かったわけだが。
「おう! ちょうど飯ができてるぞ! さあ食ってけ!」
……このドワーフのおっさん、ミラが来るときは飯ありきになってるな。そしてミラももう遠慮しない。
いや、遠慮したらあきらかにがっかりするから判るけどな。しかもまた布団敷かれた。
まあ、そろそろ疲れも溜まっていたことだろうし、なんか自然とHPが回復する塗り薬までわけてくれて、いやもういつものことか。
とにかくミラはゆっくりと休んだ。
その間に俺は自分のステータスを確認してみるが。
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ステータス
種別:進化の剣
剣銘 :バスタードソード
熟練度:3/10(1%)
耐久値:89/99↑5
重量:3.0kg
進化PT:70
直接属性
切:70↑5打:65↑5突:64↑5魔:17↑2
補助属性
火:0水:0土:30↑2風:0
光:0闇:0雷:0氷:0
パッシブスキル
【ガイドLV2】【言語理解LV1】【念話LV2】【シンクロナイズLV1】【鉄の精神LV2】【剣術LV3】【マナ換算LV2】【両手持ちLV2】【スタン効果LV2】
アクティブスキル
【鞘攻撃LV1】【燕返しLV1】【連撃LV1】
称号
【勇敢な剣士】【異世界パートナー】【返しの名人】【ゴブリンバスター(付加中)】【芸達者】【土の加護】
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スキルリスト(パッシブ)
【ガイド】
LV2:取得済み
次のレベルには800PT必要。
概要:目覚めし者をサポートする為のスキル。
【言語理解】
LV1:取得済み
次のレベルには50PT必要。
概要:言語が理解できる。
【念話】
LV2:取得済み
次のレベルには150PT必要。
概要:念で相手に言葉を発信できる。
【シンクロナイズ】
LV1:取得済み
次のレベルには1000PT必要。
概要:装備者とシンクロする事で能力を引き上げる。対象の変更は不可。装備者のHPが0になるか剣の耐久値が0になるとどちらも死ぬ。
【鉄の精神】
LV2:取得済み
次のレベルには300PT必要。
概要:精神が強くなる。
【剣術】
LV3:取得済み
次のレベルには600PT必要。
概要:剣術に長けるようになる。
【マナ換算】
LV2:取得済み
次のレベルには50PT必要。
概要:魔晶のマナとしての価値を知る。
【両手持ち】
LV2:取得済み
次のレベルには150PT必要。
概要:両手で武器を持てる。
【スタン効果】
LV2:取得済み
次のレベルには250PT必要。
概要:打撃攻撃に効果がつく。
【コンボ】
取得には100PT必要。
スキルが繋がる。
【切断上昇】
取得には80PT必要。
切る力が増す。
【耐久度上昇】
取得には120PT必要
耐久度が増す。
【打撃上昇】
取得には80PT必要。
打撃力が増す。
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スキルリスト(アクティブ)
【鞘攻撃】
LV1:取得済み
次のレベルには50PT必要。
概要:鞘に収めた状態で攻撃出来る。
【燕返し】
LV1:取得済み
次のレベルには140PT必要。
概要:燕返しが使える。
【連撃】
LV1:取得済み
次のレベルには150PT必要。
概要:連続攻撃。
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こんな感じだ。う~む、どうにも進化PTが中途半端だな。色々覚えてないアビリティが増えてるし、スキルにしてももう少しLVを上げてみても良さそうなのがあるんだけどな。
とにかく、ポイントはもう少し溜めたほうがいいか……。
そしてミラが目覚めて、改めてドゴンにあの蟹の甲羅を見てもらったわけだが。
「ほう、こりゃ守り蟹の甲羅か。中々質もいいしこれなら300マナで買い取るぞ」
結構高かったな。そしてあの蟹――
『守り蟹って言うんだなあれ』
「ああ、宝箱を守っている事が多い蟹だな。それで守り蟹だ」
なるほどどうりで。
まあ何はともあれ、素材も売れたしドゴンの店を離れることにするが。
「……ふむ、しかしこれを使えば――おい、もし時間が出来たら、といってもすぐだとあれだが、暫く経ったらまた寄ってみれくれ」
「うん、判った! ドゴンのご飯美味しいしね!」
「おお、嬉しい事言ってくれるじゃねぇか!」
グスってなぜか手首で鼻をすすり始めたぞ。
まあ、とにかく約束を交わし、俺達は再びマージュの店に寄る。
なんかわりとすぐの再会になったけど、そこで、水息器を購入し――再びあの水場まで向かうことにするわけだが。




