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迷宮で目覚めたら、何故か進化の剣だった  作者: 空地 大乃


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第六十一話 蟹崩し!

 蟹の魔物は相変わらず鋏をチョキチョキさせている。いい加減耳障りだな。

 

 この魔物の厄介なのはあの硬い甲羅で守られていて剣での攻撃が殆ど通らない事。

 そして妙な泡で包まれると魔法すら通じなくなることだ。


 攻撃手段自体は鋏を飛ばしてくるぐらいと単純だから、その硬い防御をなんとかすれば勝機も見えることだろう。


『よし、ミラ作戦通り、GOだ!』


 うん! と首肯してミラが動いた。蟹も反応するが、そこでミラが腕を翳し、スパークボルトを発動。


 しかも今度はそれを二連射だ。もっと撃たせても良かったけど、検証の意味合いが強いからな。


 だからとりあえず二発撃ってもらったけど――予想通り! 最初の一発目で泡が更に減り、これで全ての泡が消え去った。


 なんとなく攻撃を受けるたびに泡が減っていってる気がしたからな。でもこれでも間違いない。


 俺の思った通り、あの泡は3回までしか攻撃に耐えられない。そりゃそうだ、いくらなんでも永久に無敵なんてありえないし、それであれば最初から泡を纏いっぱなしにしとけばいいのだしな。


 そして当然だが、泡が消え去った事で2発目のスパークボルトが命中。これはダメージに繋がったようで鋏がビリビリしている。


『よし、後はこの調子でスパークボルトを打ち続ければ――』

「え?」


 俺はこれで魔法さえ撃ち続ければ勝利は間違いないと考えたが、ミラが目を丸くさせ、そして蟹の姿を見失った。


 な!? こいつこんなに速く動けたのか! 回り込むような動きでカサカサと高速移動し、瞬時にミラの背後を取ってしまった。


『ミラ! 後ろだ!』

「しまっ!」


 しかし時既に遅く、蟹は鋏を前に突き出し――開いた鋏から泡を放出した。


 て、へ? 泡?


「え? なにこれ? うわ! なんかブヨンブヨンして出れないよ!」


 で、出れない? ミラは俺も使用したりしてなんとか泡が破けないか試してるけど、駄目だ。半透明の泡は攻撃してもブヨブヨして刃が通らない。


 そしてその隙をついてあの蟹が! 定位置に戻ってまた泡のガードを纏っていた……。


 どうやら宝を守るために一時的にあそこを離れてこの泡に閉じ込める道を選んだらしい。


 そして泡のガードでまたもや完全防御と――で、そうこうしてる間にミラを包んでる泡は勝手に弾けて消えた。


 どうやらある程度時間が経ったら消えるタイプなようだ。


「うぅ、折角破れたと思ったのにまた最初からだよ」

『そう落ち込むほどでもないさ。確かに今のは不意打ちを喰らったが、一度受ければもう判るだろう。さっきと同じようにスパークボルトで――』

「あ、でもちょっと待って!」

 

 ミラが叫んだ。何かに気がついたようで俺も蟹の方を見てみると――あのミラを閉じ込めた大きな泡をばらまき始めた。


 なんだ? 何をしてるんだ? そもそもあれ接近戦用ってわけでもなかったのか……。


 ただ、泡は恐ろしく動きが遅い。ふわふわと漂いながら少しずつミラに近づいてきている感じだ。


 こんなものに一体何の意味が……待てよ?


「ね、ねぇエッジ。思ったんだけど、これじゃあスパークボルトを撃っても……」


 どうやらミラも気がついたようだな。そう、あの泡は蟹の正面に大量に浮かんでいる。泡の一つ一つがミラを包めるぐらいに大きいからそのまま壁みたいになってやがる。


「と、とにかく1発!」


 ミラはとりあえずスパークボルトを1発撃ってみる。だけど、嫌な予感はしたけど、壁の泡がスパークボルトを受けて弾け飛んだ。


 つまり、あの泡が見事に壁になって蟹まで届かない。しかも割れてすぐに泡を補完する。


 これは、参ったな。ミラがまたスパークボルトを連射するという手もあるけど、結構泡が敷き詰められてる上に、蟹本体も3回まで攻撃に耐えられる。


 これだとミラの魔力が持つかどうかの方が問題になるぞ。


『ミラ、残りMPはどれぐらいだ?』

「うん、後103だね」

 

 103か……スパークボルトは1発でMPが7消費する。つまり撃てるのは14発程度だ。


 微妙だな。恐らくあの壁を消して更に蟹の泡のガードまで崩すとなると8発は必要になる。

 だが、蟹はいざとなれば移動が出来る。あまりそっちに集中しすぎても回り込まれて泡に包まれては元も子もない。


 こうなると、ここまできて勿体無い気もするが、一度撤退して作戦を練り直した方がいいのでは? とも思えるが――ただ、ミラはひとりぶつぶつと何かを呟いていた。


「……うん! これなら!」

『何だ? 何か思いついたのか?』

「へへ~ん、そう! これならきっといけるよ! 名付けて蟹崩しだよ!」


 ……満面の笑顔で言われたけど、いまいち締まらないな。

 ただ、ミラはどうやらかなり自信があるようだ。ならば試してみるのも手だろ。


 折角ここまできたのだしな。


『判った、ミラに任せるよ』

「うん、じゃあいっくよーーーー!」


 で、ミラが何をしたかと言えば、突然蟹に向かってダッシュを始めた。


 て、おいおい、一体どうするつもりなんだ?


 俺が不思議に思っていると、ミラの身が大きな泡に近づく。

 お、おい! それに触れると泡に閉じ込められるんだぞ!

 

 一瞬焦った俺だが、しかしミラはそっから、ジャンプ! そう、なんとジャンプした。


 そして泡と蟹との僅かな隙間に着地したのである。


 いや、おいおい! まさか接近戦を挑む気なのか? それは無理だぞ! スパークボルト撃つにしてもこれじゃあ相手との距離が近すぎてカウンターを喰らうだけだ!


「いくよ! シャワーー!」


 て、へ? しゃ、シャワー?

 

 そう、ミラは何を思ったのか突然蟹に向けて手を翳しシャワーを浴びせ始めた。


 な、なんだこれ、さっぱり意味がわからないぞ……。

 

 これには気のせいか蟹も暫しポカーンっとしてる気がしたが、しかし直ぐに鋏で攻撃! だが、シャワーは正直隙とかほぼない。シャワー浴びせてるだけだしな。


 だから、ミラもひょいひょい攻撃を避けながら……シャワーを使い続けてる。


 いや、なんだよこれ? 何の意味があるんだ?


 俺の脳裏には疑問符がいっぱいだが、そろそろかな! とミラが勝手に納得して、今度は蟹の甲羅を踏み台にして跳躍した。


 な、なんだ? ミラの行動がさっぱり読めないぞ。跳躍もほぼ真上だし、蟹は身構えて落ちてくるのを待ってる状態だ。


 これじゃあカウンターの的じゃないか?


「さあ! こっからが本番だよ! スパークボルトーーーー!」


 だけど、今度はミラは空中を漂いながら、スパークボルトを発射した。


 上から攻撃すれば問題ないと思ったのか? だけどそれだって泡に阻まれたら――いや! ちょっと待て! 違う、ミラの放った魔法は蟹を狙っていない。そこから若干外れて地面に着弾する。


 その瞬間――バチバチッ! と地面から蟹に向けて激しく放電した。


 凄まじい電撃が蟹の全身から迸る。泡のガードがあるにも拘らずしっかりダメージは通ってるようだ。


「まだまだいくよー!」


 そして、更にミラは数発スパークボルトを放ち、その度に地面が発光し、放電し、電撃が蟹の全身を駆け巡り迸る。


 最後には蟹からぷすぷすと白い煙が上がり――そしてパタンっと倒れた。


――進化PTを50得ました。


――経験値を180得ました。


「よっし! 感電作戦大成功!」


 着地して指をパチンッと鳴らしミラが嬉しそうに言った。


 う~ん、しかし感電とはね……。

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