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第四十一話 戦利品と奇妙なゴブリン

 ゴブリンロードを倒した後は、戦利品の回収を行った。 

 そこでゴブリンロードの魔晶も回収したのだが――ゴブリンロードから手に入れた魔晶の価値が判らなかった。


 どうやら今のマナ換算のレベルだとこの魔晶の価値を査定できないらしい。


 なので、ミラと相談してマナ換算のレベルを2に上げる。するとこの魔晶の価値は200マナであると判った。


 これでいくと、マナ換算のLV1だと100マナまでしか価値が判らなかった可能性が高いか。200マナからというのも中途半端だしな。


 それからは、後は価値の高そうなものを回収してみたいと思ったりしたけど、ゴブリンロードの大剣とか持ち歩くことも出来ないしな。


 だからとりあえずゴブリンの魔晶を回収するだけに留めておく。それでゴブリンロードの分と合わせて450マナとなった。


 一通り魔晶を集めた後は、崖の下の様子を確認したが――すると何故かゴブリン同士が仲間割れをしていて、ゴブリンの死体も辺りに散乱していた。


 一体何があったんだろ? とミラも不思議そうにしていたけど、これについては多分ゴブリンロードを倒したことが影響したんだろという結論に落ち着いた。

 

 ゴブリンロードは指揮官的な役割も担っていたようだしな。そのロードがいなくなったことでゴブリンも統率がとれなくなり、混乱状態に陥り仲間割れを始めたんだろうと、そういう考えにね。


 でもこれで、ボックルも上手く逃げ出すことが可能だろうな。ゴブリンも大分減ったし。


 さて、改めてゴブリンロードが鎮座していたこの空洞を調べることにする。


 一応目的の一つはあの水門を開くことだしな。この空洞内は西側が壁になっていて奥の方で更に西に続いている横穴があり、先細りで南の方へ続いている道とがある。


 なのでとりあえず南に進むミラだけど――南に進んだ先は崖っぷちのようになっていて、下を覗き込むと地底湖のように広がる水面が見えた。高さがあるので飛び込むのは厳しいな。


 ただ、その崖っぷちの横側に台座とくるくる回すハンドルがあった。


「う~ん、もしかしてこれが水門を開く装置かな?」

『可能性は高いかもしれないな。他にそれらしいものが見当たらないし』

「じゃあ、回してみようかな」

『そうだな、でも気をつけて慎重にな』


 俺の言葉にミラが頷き、鉄製と思われるハンドルに手をかける。そしてゆっくりと回し始めた。最初は少し固い様子だったけど、力を込めてみるとゆっくりと動き始め、ある程度勢いがつくとくるくると軽快に回るようになった。


 すると――下の方からゴゴゴゴッ、という音に水の流れる音が混ざり込む。


 なのでミラが下の水面を改めて覗き込むと、確かに水が流れているのが確認できた。


 もしかしたらこの地底湖のような場所は例の水門のあった場所と繋がっていて、水門が開いたことで一気に水が流れてきたのかもな。


 しかもこの水場、段々と水かさが減っていってるな。水の流れは止まることなくむしろ激しくなってきているから、単純に水門が開いただけでなく、どこか排水に繋がる箇所にも影響があったのかもしれない。


 どちらにしてもこれなら門が開いた可能性は高いな。


『ミラ、どうする? 戻って確認するか?』

「う~ん、でも、何かもうひとつの横穴の先も気になるよね~」


 あ~やっぱりそうか。ミラは結構好奇心旺盛だしな。

 と、いうわけで戻る途中に分岐している横穴を辿る。暫く進むと、奥が広がっていて、先の方に泉のようなものも見えた。


 そして――


「ギィ……」

 

 その泉の近くに、一体のゴブリンの姿が見える。それがミラの方を振り返り、そしてミラを睨めつけながら短く唸る。


 これは、まだ残党がいたのか? それにしてもなんだろ、どことなく違和感がある。一見すると他のゴブリンと同じにも見えるけど、何かが引っかかる……それにあのゴブリンを目にした瞬間、何かモヤッとしたものを感じ取った。


 それが何なのかはよくわからないんだが――


「あのゴブリン、なんだろ? 妙な気配を感じるよ。それに、色もちょっと違うような……」


 ミラも俺と似た感覚を覚えたようだな。それに、そう言われてみると、確かにこのゴブリンは緑は緑でもより濃い緑色な気も、それに――


『他のゴブリンに比べると、少しシャープな印象も受けるな』


 そう、細くしなやかな肢体に、そう思える。顔もどことなくしゅっとしている感じだしな。


「ギルルッ――」


 するとゴブリンが、手に持ったナイフを構え、そしてミラへとその眼を光らせた。


『どうやら相手はやる気十分なようだな』

「そのようだね」


 とっくにミラは俺を正面に構えて臨戦態勢。じりじりと妙なゴブリンとの距離を詰めていくが。


「ギュィイィイイィイ!」

「え? 速い!?」

 

 そう、速かった。一瞬にして間合いを詰めミラの懐に入り込み、そしてナイフを連撃。ただこのゴブリンも他のゴブリンと同じでミラよりも小柄。手数は多いがリーチが短く、攻撃力もそこまで高くない。


 速いは速いが、ミラの優れた動体視力に掛かれば対応できないほどではないのだ。バスタードソードの俺を両手で握りしめながらも、今度は上手いこと盾も潜らせて攻撃を受け止め、急所にきそうな攻撃は剣も上手く使っていなし、躱せるものは躱す。


 このまま正面から単純な攻撃を仕掛け続けるなら、いくら速いとは言えカウンターを決めるのはそう難しく、て! こいつ!


「あぶな! この!」


 このゴブリン、単純な攻撃だけかと思えば、突如ミラの肩に乗り、そのナイフを首に突き立てようとしてきた。


 しかし咄嗟に柄頭で肩に乗ったゴブリンの顔面を打ち、そこから思いっきり身体を振る。顔をやられてひるんだゴブリンは回転の勢いに負け、投げ出される。


 しかしくるりと回転して着地、かと思えば今度は何本かのナイフを手早く投げつけてきた。

 ミラの顔と首と腕、それぞれ防具では守りきれていない場所を的確に狙ってきていた。


 だがミラは剣の一振りだけでそれを見事弾き飛ばす。だが、これはやはり囮だ。ナイフを投げた瞬間にはあのゴブリンは駆け出しており、ミラの脇腹を目掛けてナイフで突き出す。


 それを――ミラはしっかりと見ていた。だから、切り替えした刃が絶妙のタイミングでゴブリンに覆いかぶさる。


 これが並のゴブリンなら、この時点で勝負は決していただろう。だが、火花が飛んだ。ゴブリンは刃にナイフの刃を重ね、そのまま後ろに飛んだのだ。


 それで勢いを殺し、更に逃げに転じた。だが、後ろは壁だ。その勢いで当たればそれ相応のダメージを負うはず。


『ミラ! こいつは何か危険だ! ここでしっかりトドメを刺しておくんだ!』

「え? あ、うん――」


 ミラは俺の声に返事し、そして突きの体勢で追い打ちを掛けようとする。俺の予想通りにゴブリンが壁に激突すれば、その瞬間には俺がその胸を貫くことだろう。


 だが――そうはならなかった。なぜならゴブリンは壁に足をつけ、かと思えば一気に壁走りで遁走してしまったからだ。


「しまっ!?」


 そう思った時にはもう遅く、ミラの突きは壁に命中し、俺が壁に突き刺さる。

 その結果、結局ゴブリンを追うことは叶わず。剣を抜いて急いで来た道を引き返すも、すでにあのゴブリンの姿はなかった――

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