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第三話 俺を使ってくれ

 迷うところではないな。この状況を考えるに、先ず俺もこのままでは剣が朽ちていくだけというピンチな状況。


 そして彼だって武器もなく、このままではゴブリンに嬲り殺しにされるのが目に見えているだろう。


 だったらもう一か八かといった選択しかないわけで。

 だから――俺は改めてスキルリストを開き。



──────────

スキルリスト(パッシブ)

【ガイド】

LV1:取得済み

次のレベルには50PT必要。

【言語理解】

取得には20PT必要。

【念話】

取得には30PT必要。

──────────

スキルリスト(アクティブ)

アンロックなし

──────────


 うし! 出てきたな。取り敢えずアクティブには何もないし、やはり選択すべきは2つ。

 このPTというのが進化PTだとしたら俺の持ってるので150PTあった筈だ。


 つまり言語理解と念話は取得してもポイントはまだ残る。

 だったら迷ってる暇はない。


 ……だけど、そういえばどうやってこれは手に入れる事が出来るんだ?

 う~んこうなったら勘で!


『スキルリストから言語理解と念話を取得したい!』


――パッシブスキル【言語理解】の取得には進化PTが20必要です。宜しいですか?


【現在の進化PT:150】


 イエスだイエス! 


――パッシブスキル【言語理解】を取得しました。ステータス欄に追加いたします。


――パッシブスキル【念話】の取得には進化PTが30必要です。宜しいですか?


【現在の進化PT:130】


 これもイエスだ! てかしっかり進化PT減ってるな。やっぱ思ったとおりだ。


――パッシブスキル【念話】を取得しました。ステータス欄に追加いたします。


 よっし! これで2つスキルゲット! これで多分――


「……くそっ。こんなゴブリンなんかに殺られそうになるなんて、せめてまともな武器があれば……」


 て、うん? この声って……もしかしてこの少年か? 

 おおやった! 凄いな普通に俺が理解出来る形で聞こえてくるぞ!

 それにしても、LV1でも普通に問題ないレベルっぽいが……まぁ細かい事はいいか。


 まあそれはそれとして、この少年、今完全に俺に背中を向けている状態とはいえ、武器が欲しいと思ってるなら少しは気づいて貰いたかった気もするけどな……まぁ今の俺はただの錆びた剣だけどね!


 まあいいや。とにかく相手も藁にもすがる思いなのは確かだろうし……でもそういえば念話ってどうやるんだろ?

 う~んあれかな、相手に向けて言葉を送るようなそんな気持ちで……


『あ、あ~確認、確認、ただいま念話の確認中』


「!? え? 何今の! まさか新手の敵!」


 あ、なんか首をキョロキョロしだした。

 これしっかり聞こえてた感じだな。

 よし! 確認成功! 

 ……なんか少し恥ずかしいけど。でもゴブリンもじりじり近寄ってきてるし、とにかく早く教えてあげないと。


『あ~えっと、驚くかもしれないけど俺は別に君の敵というわけじゃない』

 

「はぁ? なにこれ? 一体誰!」


 うん、さっぱり気がついてくれない。まぁ背中側だし、ゴブリンが正面にいれば後ろには目を向けないか。


 でも、彼が大声で誰何し始めたせいか、ゴブリンが警戒心を露わにしているな。

 怪我の功名かもしれない。この隙に――


『俺はここだ。君のすぐ後ろの台座に刺さってる剣だ』


「!?」


 おっと、バッ! と俺の方を振り返って絶句って表情を見せてるな。

 まさかお伽話じゃあるまいし、普通は剣が喋ってるなんて思わないもんな。


「ほ、本当に剣が? でもなんで言葉が?」


『あまり時間ないだろうし簡単に言うけど、スキルというのを手に入れたんだ。念で声を届けているのもその為でね』


「ス、スキル? 剣なのに?」


 あ、スキルには突っ込みないんだ。てことはやっぱり普通にスキルというものが認知されてるんだな。


『それはあれだな、俺は剣は剣でもただの剣じゃないからな。だってほら、こんな台座に突き刺さってるぐらいだし』


「……確かにそう言われてみれば」


 あ、この子すげぇ素直だ。話が早くて助かるかも。


『うん、理解して貰えたようだな。そこでだ、物は相談なのだが、俺をこの台座から抜いてはもらえないか? 何せこのままだと俺自身自由が効かない。もし抜いてくれるなら壊れない程度に武器として使ってくれて構わないぞ』


 壊れない程度にってのがミソだけどな。せっかく抜いてもらってもすぐに壊れたら意味が無いし。


「……剣を抜く、か。でもそれで僕が騙されていないって保証は? もしかしたら何かを封印した剣って可能性もあるし――」


 そこに気がつくとはやはり天才か。

 いや、言っている場合ではなかった。

 しかし、やっぱそう簡単に信じてくれというのも無茶な話か。

 いきなり台座に刺さった剣に、俺を抜いてくれ! とか言われたらあやしすぎるしな。俺なら多分抜かない。

 

 でも――


「グギィ!」

「グギョグギョ!」

「グギャィ! ギャイ!」


 なんかゴブリンが再度喚きだし、彼に指をさして何か言っている。

 早くやっちまおうぜ! とかそんなとこだろう。


『気持ちは判るが流石にそんな悠長な事を言っている場合ではないのではないか? このままではゴブリンに嬲りものにされるのがオチだぞ? 噂ではゴブリンはとても悍ましく、例えば人間相手にすぐには殺さず辱めるだけ辱めるのだとか――』


 まぁこれもなんとなく知識にあるのを言ってるだけなんだけどな。彼は男だけど、ゴブリンは男も女も関係ないとか知識としてあるし。


「――よ……な事」


 うん? 今何か俯き加減にぼそりと彼が呟いたような? で、かと思えば走って俺の視界から消えた。

 え? 逃げた? いや、違うな。

 音から察するに台座の後ろに回りこんだみたいだ。


「お前を抜けばいいんだな」

『え? あ、あぁそうだ』


 俺がそう応えると、少年の手が俺の柄を握りしめる柔らかい感触が伝わってきた。

 そしてギュッと力がこもり――


「あ!?」


 少年の驚きの声。うん、わりとあっさり俺は抜けた。

 

「ぬ、抜けた。これでいいのか? しかし、随分とボロボロだな……」


 俺を掲げて形状を確認するように眺めながら、彼が言う。

 よせやい、そんなに見られたらなんか照れるじゃねぇか。


「グギッ? キヒッ、キヒヒッ!」

「ギェヘェ! ギへっ! ギへへっ!」

「ギッヒャギッヒャ!」


 で、かと思えばゴブリンの耳障りな笑い声が俺に届く。

 俺を抜いた少年をみて嘲笑ってる様子。そんなボロボロの剣で何が出来るんだ? とでも言い合っているんだろう。

 

 まあ否定は出来ないけど、とそう思っていた矢先。


「はぁああぁああぁああぁあ!」


 耳を劈くような気勢。そして、俺の視界が回転、て、うぇっぷ! き、気持ち悪い! そうか、剣である俺の視線は当然、今の持ち主である彼が振り回せばそれに合わせて動くわけで――やべぇ超気持ち悪い。

 口がなくてまだ良かったけど――て、ゴン! ゴン! てなんか鈍器で殴るような音。


 これもう剣で斬る音じゃないな……いや、確かに武器として使えとは言ったけど、ちょっと激しすぎね?


 と、とりあえず気になるからステータスでも確認っと。



──────────

ステータス

種別:進化の剣

剣銘:錆びた剣

熟練度:1/1

耐久値:1/10

重量 :3kg

進化ポイント:100

直接属性

切:3打:5突:2魔:0

補助属性

火:0水:0土:0風:0

光:0闇:0雷:0氷:0

パッシブスキル

【ガイドLV1】【言語理解LV1】【念話LV1】

アクティブスキル

なし

称号

なし

──────────


『ストーーーーーーーーーーップ!』


「え? え? えぇ! 何! 何なの!?」


 念話で思いっきり声を少年の脳裏にぶつけてやると、彼が慌てたように口にし、ゴブリン共から距離をおいてくれた。


 ふぅ、あっぶねぇー! こんなんずっと続けさせてたら俺やばかったよ。本当にポキっといっちゃうところだったよ!


「一体どうしたんだ? なんで僕を止める?」


『このままだと俺が壊れてしまうからだよ。そんな激しくされたらもう持たない』


「……微妙に卑猥な言い方な気もするんだけど」


 別に他意はないぞ。それに俺はノーマルだ。


『とにかく、今の行動で俺の耐久値が1に減ってしまった。0になったら多分俺死ぬ』


「剣なのに死ぬんだ……てか、それだと武器として殆ど意味が無いんじゃ――」

 

 いや、本当それに関しては返す言葉もありません。

 よく考えたら抜けたはいいけどどうすればいいのかって話だ。


「ギシャーーーー! ギェフッ!」


 と、そんな事を話してる間にまたナイフを持ったゴブリンが飛び掛ってきた。

 だけどそれは少年がヒラリと避け、俺の柄頭で叩きつける。


 なるほど、柄頭なら剣身より丈夫だし、耐久値が減ることもないだろう。


『やるな! ならばこのまま柄だけで倒してしまうのはどうだろう?』


「どうだろうって……流石にこれだけで倒せるほど甘くはないよ。数も多いし」


 ですよね~。


 だが、それでも彼はなんとか頑張って柄頭を活用し、ガツッ! ガツッ! とゴブリンに叩きつけるが、やはりラチがあかず――


「はぁ……はぁ……」


 遂には壁際に追いつめられてしまった。ヤバイなこれ……


「……さっき君……ところで名前はなんていうの?」


 え? 何か質問でもあるのかわからないが、ふと名前を訊かれて焦る。

 進化の剣でいいか? いや、でも流石にそれで呼ばれるのはしっくりこないか……う~ん名前――


『……エッジ』


「え?」


『お、俺の名だ変かな?』


「……ううん。エッジか、いい名だと思うよ。あ、僕はミラ宜しくね」


 ミラか……判りやすいな。それにしてもつい頭に浮かんだ名前を語ってしまった。

 なんでエッジなのか自分でもわからないけど。

 まぁでも悪くない。


「それじゃあエッジ。これは一か八かなんだけど、耐久値が減ってると言っていたよね?」


『ああ。今は1で0になるとヤバイと思う』


 実際どうなるかまではわからないけど、楽観視出来るような事ではないと思うしな。


「そう……じゃあ」


 ミラはそう言うと、俺を右手で持った状態で水筒を取り出し、口で開けるようにして――うぉ! 冷た! 何だこれ……水?


『これは?』

「ここに来た時に見つけた泉の水だよ。これを飲むと疲れが取れる気がしたからもしかしたらってね」


 それで耐久値が回復したらって事か……でもそう上手くなんて――


――神秘の泉の水による効果で進化条件が達成されました。貴方は次の進化が可能です、進化致しますか?


 ……へ?


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