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第二十七話 魔法攻撃

 しかし、ダッシュリザードの突撃はしっかりダメージを軽減してくれたのに、あの石礫は予想以上の威力があるように思える。


 なんでだろと思ったが、ひとつ大事なことを見落としていたことに気がついた。そう、あれは魔法による攻撃だ。

 

 そしてステータスには補助属性として火、水、土、風のようなものが揃っている。

 つまりこの数値が魔法に対する抵抗力に関係するということであり、それに対してミラの持っている盾は火に対する防御力は多少あるものの、土は0だ。


 相手の魔法は明らかに土属性なので、その関係で盾では防ぎきれずこのような結果になってしまったのだろう。


 そう考えた場合、基本魔法による攻撃はかなり危険だ。何せ直接的な攻撃に対する防御力は上がったものの、魔法に対する防御力は火以外皆無なのだから、たとえ防具に当たったとしてもダメージをしっかり受けてしまう可能性が高い。


『ミラ、とにかく魔法は――』

「あっ!」


 なので注意を呼びかけようとしたのだが、遅かった! 一応盾で防ごうとはしたようだが、端近くに礫が命中し装着している腕ごと天を衝くように弾かれてしまい、多少軌道はずれたもののミラの脇腹近くに命中してしまう。


「ぐぅ――」


 苦悶の声と同時にその顔が歪む。倒れこそしなかったし、一撃で死に至るほどのダメージを受けたわけではなさそうだが、それでも軽症ではなさそうだ。


『ミラ、痛みはあるか? 場合によっては退くことも――』

「いや、まだ大丈夫。確かに今のでダメージは受けたけど、それでも16ぐらいだから」

『……え? 16? あれ、でも属性防御が……』

「うん、確かに属性は火以外0だけど、魔導力はそこそこあるからね」


 あ――そうだった。魔導力か! 確かにこの数値は攻撃にも防御にも関係してるんだったな。そうか、それでそこまで深刻なダメージには繋がらなかったのか。


 いや、とはいえHPでいえば後7、8発喰らったらほぼ終わりだろうしな。


『でもその割にさっき盾で受けた時は防ぎきれなかったな。今回は位置の問題もあるだろうけど』

「そうだね。今だって一応盾を反らせて受け流そうと思ったけど捌ききれなかった。多分盾での防御は盾の性能そのものが重要だからだと思う」


 なるほど、確かにこの盾も直接攻撃に対しては以前より防御能力が高くなったが、魔法攻撃に対しては火以外の属性は0だ。


 だから受け止めても相手の魔法を受けきることができなかったってわけだな。つまり魔法に対してはあまり盾に頼るわけにもいかないってわけか。


 とは言え――


『ミラ、ここは作戦変更で先にあのツインリザードヘッドを狩ってしまった方が良くないか?』

「確かに遠くから撃ってくる魔法は煩わしいけどね。ただ、その前にちょっと試したいことがあるんだ」


 試したいこと? ふむ、まあミラがそういうなら。


『判った、ミラの判断に任せるよ』

「ありがとう」


 そんなやり取りを終えた後……やはりミラは相手の魔法による石礫を避けながら動き続けるだけ。

 う~ん、これだとあんまり変化がないような。それに走り回るのは結構疲労度も溜まるだろうしな……。


 そう思っていたのだが――そこでふとミラが大きく腰を落とした。

 お、おい何をしてるんだ? と俺が考えると同時にダッシュリザードがミラに向けて猛ダッシュで突撃を仕掛けてくる。


『当たるぞミラ!』

「大丈夫――」


 だが、俺の心配を他所にミラはそのまま真上に大きくジャンプ。ダッシュリザードの突撃は見事空を切り――かと思えばダッシュリザードの横っ腹に何かが命中、蜥蜴の身体がその勢いで傾倒しジタバタともがき続ける自体に。


 するとミラは着地と同時に苦しそうに蠢くダッシュリザードの首を跳ね飛ばした。


――進化PTを6得ました。


――経験値を40得ました。


――熟練度が8に向上しました。


 見事1匹にトドメを刺し、そしてもう1匹のダッシュリザードも同じ手で避け別方向からの攻撃を当てさせる(・・・・・)


 そう、つまりミラは上手くダッシュリザードを誘い、ツインリザードヘッドの魔法の射線上に重なるように突撃させ同士討ちさせたのだ。

 

 腰を大きく屈めたのはジャンプで避ける為だけではなく、そうすることでツインリザードヘッドの放った石礫がミラより低い位置にあるダッシュリザードに当たるようにと考慮してのことなのだろう。


 いくら誘っても石礫がダッシュリザードの真上を通っては意味が無いからな。

 

 そして同士討ちをさせダッシュリザードが動きを止めたタイミングで悠々とトドメを刺したわけだ。


 これはツインリザードヘッドがミラのカウンターのタイミングを図って魔法を放つことを逆に利用した形だな。ミラの作戦勝ちといったところか。


――進化PTを6得ました。


――経験値を45得ました。


 そして最後のダッシュリザードも見事トドメを刺し、後はイビルバットを除けばツインリザードヘッドだけとなった。

 そして俺の熟練度も8にアップ。あと2上がれば熟練度はMAXだな。


 さて、そんなわけで残りはツインリザードヘッドだな。だが、2匹とはいえ頭がふたつなせいか放ってくる石礫を避けながら近づくのは中々大変そうだ。


『こうなったら、このまま無駄打ちさせてMP切れを誘発するか? そうすれば魔法は使えないだろう?』

「う~ん、でも僕の体力が持つかが問題だね。それに――」

 

 そこで言葉を切ったミラの視線の先。俺も見てみると、魔法の合間を縫ってツインリザードヘッドが地面の土をむしゃむしゃと食べていた。


 なんだ、あの魔物土を食うのか――で、その途端、身体から青白い光るが溢れてきた。


「あれ、MP回復ポーションを飲んだ時の様子に似ているんだよね。だから、もしかしたら――」


 土を食べることでMPを回復する事が可能ってことか? つまりそういうスキルを持っているってことなのだろう。全く面倒な事だ。


『だが、それならどうする? 無理やり突っ込んでいくか?』

 

 ダメージ覚悟でって意味だ。一応ポーションもあるし、1発のダメージが16程度ならミラなら十分耐えられると思うが。


「いや――これも試してみたいことなんだけど、上手く行けば結構楽に近づけるかも」


 どうやらミラには何かまだ考えがあるようだ。そしてミラは石礫を避けながら――ふと俺を鞘に収めた後、その辺りに転がってる岩を拾い手に持った。


 なんだ? 一体それでどうするつもりなんだ? 俺がミラの行動に少々混乱していると、ヤァ! という声を上げ、なんとミラがツインリザードヘッドに向けて投石した。


『……いやいやいや! 流石にそれは無茶だろ! いくらなんでも投石で倒すなんて!』


 思わず念で騒ぎ立ててしまった。にしてもだ、流石に手としてはありえないと思うぞ。実際ミラの投石は確かに狙い通りツインリザードヘッドの頭部に命中したが、全く堪えてる様子がない。


「これでいいのさ。数撃ちゃなんとやらってね」


 ……いやいやそうはいっても、正直1ダメージにだって――と、思っていたのだが4発目の投石が敵の頭に命中したところで変化があった。


 なんと岩が当たったツインリザードヘッドの頭から魔法の手が止まり、何か目眩を起こしているようなフラフラした姿に。


 するともう片方の首も戸惑った様子で動きが乱れた。


「よっし!」


 すると、拳をギュッと握りしめた後、ミラが俺を再び俺を抜き、ツインリザードヘッドへと駆けていく。


 これは一体――いや、そうか!


『【スタン効果】かミラ』

「そう、打撃でスタンするなら、投石でも有効かなと思ってね」


 そういうことか。それは俺には気がつけなかったな。俺はあくまで剣のスキルだから、俺の攻撃以外は発動しないと思ってしまった。しかしミラは柔軟な思考で他の攻撃でも発動すると考え実践したわけだ。


 しかしこれはかなりミラにとって有利になったな。残り1匹の魔法なら躱すのはそう難しくもない。勿論スタンが延々と続くわけではないだろうけど、それでもミラの脚なら気がつく前に接近できる。


 そして案の定ミラは瞬時に気絶した頭側まで近づき、俺を両手で振り上げた。その頃にはツインリザードヘッドの片割れが気絶状態から復帰しかけていたが時既に遅し、振り下ろされたミラの刃によって見事その首と胴体が離れ離れになった。


 しかしツインリザードヘッドはどうやら頭をひとつ刎ねたぐらいでは死ぬことはないらしい。もう片方がミラに顔を向け、かと思えば正面に石礫が出来上がるが――ミラはむしろその隙を狙って側面まで移動し、ザクザクと蜥蜴の頭や首を切りつけた。

 

 どうやら気絶状態から立ち直ったばかりの頭なら、防御に気がまわらないのであっさりと首を刎ねることも出来たようだが、流石に意識がしっかりしてるとなるとそう簡単にはいかないようだな。あとは両手持ちかどうかも多少は関係したかもしれない。残りの首は移動しながらの攻撃となったので片手で切りつけていたからな。


 とは言え、それでも何度か攻撃を続けることでツインリザードヘッドの1匹も絶命した。


――進化PTを8得ました。


――経験値を78得ました。


 ただ、この1匹をまず殺すことに意識を集中させていたため、もう片方から来る石礫は避けることができなかった。いや敢えてミラはしなかった。


 つまりダメージに耐えたのである。とはいえ中途半端に終わらせるぐらいなら何があっても先ず1匹を狩る! というやりかたは決して間違ってはいないだろう。


 結果的に2匹を相手し続けるよりは、ダメージを最小限に抑えることに繋がるはずだろうからだ。


 実際残り1匹となり戦いはかなり楽になっている。放たれる礫も4つと2つでは段違いだ。


 ミラはそれらをスイスイと避けながら距離を縮めていく。その間片方の頭が土を食べ始めたのでなおさらチャンスは広がった。

 

 それを認めミラも一気に距離を詰める。だがその時、片割れの口がパッカリとあいた。

 魔法か? いや違う、さっきから見ていても魔法を使う時にわざわざ口なんてあけていなかった。


 つまり――


『気をつけろミラ! 何か吐いてくるぞ!』


 ボックルのいっていたことを思い出した。これがあいつの言っていたとおりなら――そして俺が念でミラに注意を促した直後、蜥蜴の口から泥が吐き出される。


 向いている方向からそれがミラの顔を狙っていたのは明白だった。そして泥を放出した直後ツインリザードヘッドは身体を回しその尻尾で攻撃を仕掛けてくる。


 が――無駄だ! ミラは盾で泥を完全に防いでいる。


「ハッ!」


 尻尾攻撃をその場で軽く跳ねて避けつつ、ミラは尻尾の後を追うように回転してきた双頭に向けて両手で俺を振り切る。


 これが完全にカウンターとなり、2匹の首が見事刈り取られた。


――進化PTを8得ました。


――経験値を78得ました。


 ふぅ、これでツインリザードヘッドも倒しきったな。ミラに確認したが、そこまでHPも減ってはいないようだ。


 そして残りのイビルバットも上手く誘って全て片付けた。ナイフを使って魔晶を回収しておく。


 勿論ツインリザードヘッドやダッシュリザードの素材と魔晶も回収するが――


「あれ? これなんだろう?」


 ミラが疑問の声を上げる。どうやらツインリザードヘッドから魔晶とはまた違う何かを見つけたようだ。


 それは一見すると魔晶にも似ているが、色が茶金色であり、確かに初めてみるような代物だ。


「う~ん、ツインリザードヘッドにだけあるみたいだね」


 ミラの言うとおり、ダッシュリザードの身体には、どこを探してもない代物である。


『それほど大きなものでもないし、とりあえず回収しておいたらどうだ?』

「うん、そうだね」

 

 持っておいて損はないだろうしな。


 さて、これで必要な物も回収出来たし後はこのあたりの探索となるんだが――

うっかりして話に組み込み忘れてしまっておりましたが、ミラの最大LVは進化の剣の熟練度が上がるごとに1ずつ上昇しております。ステータスでも反映されていない箇所があるため後ほど修正していきます。

お手数をおかけして申し訳ありません。

※2016年10月19日に修正済み。



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