第二十四話 両手持ち
「両手で武器を持てるなんて、また変わったスキルだね」
『全くだな。本当に意味がわからない』
なにせミラはこんなスキルを手に入れなくても両手で武器を振れるからな。
全く、てっきり外の人間はスキルがないと両手で武器が振れないのかと勘ぐってしまったよ。
まあそんな世界なら今みたいにミラが両手で剣を振っただけで、凄い! とか 天才か! とか馬鹿みたいに感動されるんだろうけど、そんなことあるはずもないしな。
「でも、ちょっと気になるね、逆に」
『う~ん、でも覚えるのに30PT必要だぞ? まあ取れないこともないけど』
「だったら取ってみない? 折角だし」
正直ミラがそういうなら拒否する理由がないけどな。なにせ実際戦うのはミラだ。
『判った、折角だしな。おい【両手持ち】のスキルくれ』
――パッシブスキル【両手持ち】の取得には進化PTが30必要です。宜しいですか?
【現在の進化PT:48】
『それでいい、取得するぞ』
――スキル【両手持ち】を取得しました。ステータス欄に追加いたします。
『手に入れたぞミラ。何か変わったことあるか?』
「うん、ちょっとやってみる」
そしてミラは俺を両手で構えた。バックラーは腕に嵌めるタイプだからな、両手で持つと防御に使いにくくなるが、いちいち外す必要はない。
「はぁ!」
気合一閃、両手で俺を振った。う~ん、俺にはよくわからないけど――
「あ! ちょっとだけ感じが違うというか、力強く振れた気がするかも」
ん~?
『つまり威力が上がったということかな?』
「そうかも、折角だしダッシュリザードで試してみようよ」
嬉しそうにミラが言う。とりあえずそれを試すために、カウンター狙いは一旦やめて称号も勇敢な剣士のままダッシュリザードを狩りに向かう。
途中ブラックウィドウを片付けながら、例の空洞に出るとダッシュリザードが相変わらずたむろしていた。
そして今回は4匹相手にミラが果敢に挑んでいく。勿論両手持ちでな。
最初は結構苦労したこの魔物も何回が狩りを繰り返すことでパターンも大体把握し、危なげなく対処出来るようになっていた。突撃も直線状に並ばなければ怖くないし、尻尾攻撃もしっかり見ておけば挙動で出すタイミングは図れる。
そしてミラは弱点ともいえる首を狙って両手持ちで剣を振り下ろす。すると一撃では死なないまでも二回目の斬撃でその首が胴体と離れ離れになった。
さらに言えば、返しの達人を付けていない状態でも、カウンターを活かせば一撃で首を飛ばせるまでになっている。
勿論これはミラのレベルアップや俺の熟練度が上がったことも理由だろうが、それでも地味に両手持ちの効果は効いてそうだ。
……にしてもだ、両手持ちで剣を振れば威力が上がるというのが、『両手で武器を持てる』って流石に大雑把過ぎませんかね? ガイドのレベルを上げたらまた変わるんだろうけどさ……。
とにかくだ、ダッシュリザード相手でもちょっと余裕が出来たこともあり、せっかくだからとミラが鞘に収めたままでの攻撃も試してみる。
だが、これに関しては正直効果はいまいちだった。鞘に収めたままだと当然切る効果は期待できない。これではただの鈍器だろう。
尤も相性の問題もあると思うから、ここで駄目だから使えないと判断するのは早計かもしれないが、どちらにしてもこの狩りだと使えないな。
まあそんなわけで、やはり最後はミラが剣を抜き、その首を飛ばす。
――進化PTを6得ました。
――経験値を50得ました。
「ポン、調子はどうかポン?」
そして狩りの途中で再びボックルと再会。そこでHP回復ポーションを効果小を2本、中を1本仕入れて100マナを支払った。
「毎度ありポン、がんばるポン。余裕が出来たらあのゴブリンも倒してほしいポン」
そんな事を言って去っていくボックル。そういえばあいつを助けたところから階段を上った先にゴブリンが占拠してるって話だったな。
ゴブリンロードとやらがいるらしいけど、まあ余裕があったらってところかな――その前にあのツインリザードヘッドとやらを先ずなんとかしてみたいけど。
そしてその後は通路をウロウロして狩りに勤しむ。その途中でドゴンの店に立ち寄り売却と納品、そして修理も繰り返したわけだが、その結果。
「ほう、結構早くそろったものだな」
注文に必要な22枚のダッシュリザードの皮を見ながら、感心したようにドゴンが言った。
休憩を挟んだりしながらだからこっちからすれば時間もそれなりに掛かってる思いだけどドゴンからすればそうでもないみたいだな。
まあ、こんな迷宮の奥地じゃ日にちの感覚も判らないけど。
ただ、ドゴンは店に立ち寄るたびにスープをミラに出してくれたり果実を出したりと無愛想ながらに良くしてくれた。それのおかげで栄養も十分取れたし、ここまで早く事が成されたのもドゴンのおかげだ。
ここでミラはちょいちょい仮眠とらせてもらってるしな。寝ると疲労も回復するし、そのおかげもあって、ミラの調子もいい。
「余分を引き取ったマナと合わせて確かに400マナ頂いたぜ。ついでだその剣も直してやる。鎧を拵えるのに一日費やすことになるが待てるか?」
「あ、はい、それじゃあ待たせてもらいます」
これは逆にありがたいな。しっかり休めば疲労も完全にとれるし。
しかもやはりというか食事を出してくれた。ミラは申し訳なさそうにしていたけど、
「どうせあまりもんだ。食ってもらわないと捨てるだけにしかならねぇ。勿体無いだろうが!」
と言ってむしろ無理矢理でも食えといいたそうな雰囲気だったな。
全く不器用なおっさんだよな。
「ほら、そんなカウンターで寝られても目障りだから、寝るならここで寝やがれ! それと寝る前にこれをつけやがれ!」
「え? これは?」
「塗り薬だよ。ポーションほどじゃねぇが、つけて寝ておけば徐々に傷も治る。時間かけて寝とけば完全に回復するだろうよ! 判ったらとっとと塗って寝とけ!」
……何か床に皮で作られたような柔らかい敷物を引いてくれたり薬を分けてくれたりしてるんだが。うん、普通にいいおっさんだこのドワーフ。
そしてむんずと俺を掴んで作業場へ向かい先ず俺を打ち直してくれた。う~相変わらず最高の気分だぜ!
こうしてすっきりとし男前になったところでミラの下へ戻してくれる。ミラは既に床で横になって寝息を立てていたな。敷物のおかげで寝心地も悪くなさそうだ。
「俺は防具を作る作業に入る。お前はここで相棒と休んでおけ」
そしてミラの隣に俺を置いてくれた。そして作業場へと戻っていく。
それにしても――ミラ、横向きになって寝ているせいか寝顔がよく見える。う~ん寝顔、可愛らしいな。いや、男に可愛らしいってのも失礼な話か?
「――ジン……どうして……」
うん? 今何かミラが言っていたな。寝言、か。ふむ、ジン、誰かの名前だろうか? う~んよく考えたらこの子も結構謎が多いよな。
まぁ、でも悪いやつじゃないのは確かだしな。さてっと改めて俺も考えを整理しないとな。とりあえずここまででミラのレベルは更に1上がって10になっている。そして俺も密かに熟練度が7まで上がった。その結果がこれだ。
──────────
ステータス
種別:進化の剣
剣銘 :ロングソード
熟練度:7/10(64%)
耐久値:45/45↑10
重量:1.5kg
進化PT:248
直接属性
切:32↑4打:23↑4突:26↑4魔:0
補助属性
火:0水:0土:0風:0
光:0闇:0雷:0氷:0
パッシブスキル
【ガイドLV2】【言語理解LV1】【念話LV1】【シンクロナイズLV1】【鉄の精神LV1】【剣術LV2】【マナ換算LV1】【両手持ちLV1】
アクティブスキル
【鞘攻撃LV1】
称号
【勇敢な剣士(付加中)】【異世界パートナー】【返しの名人】【ゴブリンキラー】
──────────
スキルリスト(パッシブ)
【スタン効果】
取得には50PT必要。
概要:打撃攻撃に効果がつく。
──────────
新しくパッシブスキルとしてスタン効果が追加されている。ちょっと説明がわかりにくいが、つまり打撃系の攻撃をすれば相手がスタン、つまり気絶状態に出来る効果がつくってことなのだろうな。
これ、ミラは剣だし意味がない、といいたいところだけど、最近覚えたので鞘攻撃があるからな。これと組み合わせれば戦術の幅が広がるかもしれない。
ま、どちらにしてもミラが起きてから相談することだろうけどね――




