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第二十一話 ダッシュリザードの攻略法は?

『とにかくここは慎重に冷静に、だけど守りに入りすぎても駄目だからな』

「う~ん、結構な難題だね」


 当然だ。相手は動き回ってる上にその足も速い。一度ダメージを受けただけでHPだって12も減るんだ。三回喰らおうものなら残りHP1だぞ。しかも軽減してその数値だ。まともにダメージを受けたらどうなるか判ったもんじゃない。


 俺がそうこう考えている間、ミラは俺が言ったことを守って、少し距離を置き、3匹のダッシュリザードを視界に常に収めるようにして疾駆した。

 

 そんなミラに向けて――魔物は再び勢い良く体当たりを仕掛けてくる。

 ただ、流石に今回はしっかり見えているからか、ミラもひらりと躱すことが出来た。


 ただ、守りすぎていても話にならない。だからミラもなんとか攻撃を合わせようと避けながら横っ腹に剣戟を叩き込むが――ダッシュリザードの皮膚は防具の材料になるというぐらいからか、相当に硬い。


 正直とても効いているようには感じなかった。


「こいつ、硬いね……」

『あぁ、少なくとも胴体の皮膚を切っても殆どダメージに繋がってないぞ』


 むぅぅ、とミラが口を尖らしてみせた。ちょっと可愛いななんて思ってしまった俺に自己嫌悪。


『は!? おい、ミラ尻尾だ気をつけろ!』

「大丈夫! ハッ!」


 気勢を上げて飛び上がり回転して振ってきた尻尾に向けて上から剣を振り下ろす。

 ……この子マジで身体能力高いな。


 ただ、この戦法は悪くない気はした。ミラの剣を振った方向は尻尾を振ったダッシュリザードの回転方向と上手く噛み合い、そのおかげですんなり尻尾に刃が通り切り飛ばすことに成功したからだ。


 これがダメージに繋がっていれば、と思ったが甘かったようだ。ダッシュリザードの尻尾は切れると同時にニョキニョキと再び生えてきた。


 そういえばトカゲって尻尾が再生するんだったな。それでわざと切って逃げるのに利用するんだったか。


 勿論本来ならこんなに早く再生しないだろうけど、そこはやはり魔物だから普通のトカゲとは違うのだろう。


「再生するなんて参ったね――」

 

 着地しながらミラが悔しそうに述べる。だが、横から迫る影が一つ。


『ミラ!』

「くっ!」


 飛び退いたが完全に避けきることはできなかった。思わず、大丈夫か!? と声を上げてしまう。


「問題ないさ。掠ったぐらいだし減ったのも7ぐらいだよ……」

『馬鹿いえ! 7でも残りHPはこれで30だろう!』


 そんな悠長なこと言っている場合じゃないだろ!


「そうだね――なんとなく攻略法は掴めたよ」

『何? 本当か?』

「うん、だから称号をさ、倍返しの反撃者に切り替えて貰えるかな?」


 倍返しの反撃者――なるほどカウンターを狙う戦法に切り替えようということか。カウンターが成功した時限定ではあるが、上手く行けばダメージは倍になる。


 だけど――これだけ早い動きを見せるダッシュリザードを捉えきれるのか? いや、ここはミラを信じるしか無いか。


『判った。倍返しの反撃者に切り替えたぞ。ただ、当然勇敢な剣士を外した分、基本ステータスが下がってる。攻撃を受けたらその分ダメージが増えるわけだから――』

「うん、気をつけるよ。心配してくれてありがとう」


 蕾から花に変化するようないい笑顔を見せるミラにどうにも照れくさくなる。

 ただ、相手は3匹だ。正直1匹に気を取られすぎるとその間に他の2匹にやられかねない。

 

 それが心配でもある俺だが――そう思っていた矢先、ミラが空洞の端に向けて疾駆し、そして洞窟の壁を背にして身構え始めた。


 おいおい、これじゃあ逃げ道がないぞ、と最初は焦った俺だが――ミラの考えが読めた。

 ここはこの空洞の中で角に当たる位置でもある。そこを背にすれば必然的にどれだけ数がいようとも攻撃を仕掛けられるのは常に1匹。


 何せダッシュリザードの攻撃は今まで見ている限り、尻尾を使った回転しての一撃か、もしくは猛ダッシュからの突撃だからな。


 そう硬い、早い、でかい(威力が)というダッシュリザードだが、動きが単調という点をつけば十分勝てると、そうミラは考えたわけだ。


 そして思い出したがダッシュリザードを1匹ずつ倒せというのも、相手の特性を見極めろも、あのドワーフが言っていたことだったな。ミラはそれもよく念頭に置いていたってことだろうか。


 どちらにせよ――その戦法は見事ダッシュリザードにはまった。


「ギュガッ!?」


 突撃してきたダッシュリザードを軽く跳ねひらりと躱し、そしてタイミングを見計らって俺を振る。この手はさっき尻尾を切ったやり方だが、それをミラは相手の首にめがけて行った。


 ダッシュリザードの皮膚は硬い。特に回収が必要な胴体の皮は顕著だ。だが、そんなこいつでも首の部分は比較的柔らかい。


 恐らくミラはそれを、ダッシュリザードの柔らかい首の動きから察したのだろう。直線的な動きが多いダッシュリザードはその分周囲の状況を確認を首の動きだけで行う。


 故に可動域が異様に広かった。そこからミラはヒントを得たのだろう。彼の洞察力はかなりのものだな。


 ただ――それでも一撃ではダッシュリザードは倒れない。かなりのダメージは負っていると思うんだが、やはりこれまでの魔物と比べるとかなりタフといえるか。


 でも、だからこそミラの戦法が有利に働く。角にいたおかげで残り二匹の追撃がないからだ。


 そしてミラは着地と同時にすぐに別の角に移動し、同じ手でダッシュリザードの首を狙う。突撃状態の相手に対する攻撃は全てカウンター扱いのようでダメージはこれまでと明らかに違う。


 一撃では倒せないまでも2度刃をその首に潜らせれば、ダッシュリザードの首と胴体はあっさりと離れ離れになった。


――進化PTを6得ました。


――経験値を55得ました。


 更にもう1匹も倒し、そこから角にまた移動し、2度目の斬撃で最後のダッシュリザードの首も飛ばす。これで3匹終了だ!

 

――進化PTを6得ました。


――経験値を50得ました。


――進化PTを6得ました。


――経験値を60得ました。


――称号昇華の条件が満たされました。


――【倍返しの反撃者】から【返しの名人】へ昇華致します。


 なんだ? どうやら称号が変化したみたいだな。ちょっと確認してみるけど。



──────────

ステータス

種別:進化の剣

剣銘 :ロングソード

熟練度:3/10(77%)

耐久値:13/25

重量:1.5kg

進化PT:123

直接属性

切:23打:15突:18魔:0

補助属性

火:0水:0土:0風:0

光:0闇:0雷:0氷:0

パッシブスキル

【ガイドLV2】【言語理解LV1】【念話LV1】【シンクロナイズLV1】【鉄の精神LV1】【剣術LV1】【マナ換算LV1】

アクティブスキル

なし

称号

【勇敢な剣士】【異世界パートナー】【返しの名人(付加中)】【ゴブリンキラー】

──────────



 こんな感じで確かに称号に変化があった。ふむ、こんなこともあるんだな。一応概要を確認したけどカウンターの威力がどうも増してるっぽいな。

 

 そしてこれを皮を剥いでるミラに教えたら、

「もしかしたらダッシュリザードを倒すのが楽になるかもね」

と喜んでいた。確かにカウンターの威力が増すならかなり違うか――


「でも、ドゴンさんのくれたこのナイフ、切れ味いいし扱いやすいし、素材を集めるのには最適だよ。本当いい人だよねあのドワーフさん」


 ミラが太陽のような笑顔でドワーフを評する。確かに怖い顔のわりにポーションを分けてくれたり俺の耐久値を最初だけとは言え無料で戻してくれたりと人が良かったな。


「さて、これで皮も剥いだし魔晶も手に入れたしね――そっちにも行ってみようか?」


 ミラが行き先を指で示しながら聞いてくる。この空洞は入ってきた方とは反対側に更に先へ続く横穴が続いていた。


 俺としてはこのまま奥にいっていいものかと悩みどころなわけだが、ダッシュリザードに関してはミラもある程度どう迎え撃つべきか判ってきたようだし、新しく増えた称号の効果でカウンターの威力が上がったなら次はもっと楽かもしれないしな――


『そうだな。ただ慎重に様子見ぐらいの気持ちで、厳しそうだったらすぐに引き換えした方がいいだろう』


 俺が答えるとコクっとミラも頷いた。そしてその後、ミラは奥の通路を進んでいくが、その途中でも何匹かのダッシュリザードと遭遇。ただそこそこ広い横穴だった上、1匹ずつを相手できたので直前の戦いよりは楽に倒せた。


 称号が返しの名人に変わったことで一撃で倒せるようになっていたのも大きかったかもしれない。


 おかげでかなり狩りも進んで、ダッシュリザード更に4匹ほど倒したところで――


――熟練度が4に向上しました。

――アクティブスキル【鞘攻撃】がアンロックされました。

――スキルリストに追加いたします。


と、俺の熟練度が上がり、更に初めてのアクティブスキルがスキルリストに追加された。


 そしてダッシュリザードを倒しながら奥に進んでいくと――再び大きな空洞に出たわけだが。


「……何かまた変わったのがいるね」

『あぁ、そうだな……』


 それは空洞の中心よりやや奥気味の位置に存在していた。見た目にはダッシュリザードの頭が双頭になった魔物といった姿。


「どうしよういけるかな?」

『う~ん、ここに来るまでに結構消費してるしな。それにミラだってHPの残りとか考えると、あまり無茶はできないだろ』


 正直双頭のトカゲは勿論だが、見ていると他にもダッシュリザードや、それに天井にはイビルバットの姿も見える。

 

 所見の相手と他の魔物を纏めてとなると正直厳しいだろ。


「あ~あれはツインリザードヘッドだポン。土の魔法攻撃を使ってくるから中々厄介だポン。どうしてもやるっていうなら止めないけどね」


 すると、俺達の背後から聞き慣れた声が聞こえてきたわけだが――


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